田中 繁

J-GLOBALへ         更新日: 17/09/08 02:53
 
アバター
研究者氏名
田中 繁
 
タナカ シゲル
URL
http://tanaka-lab.net/
所属
電気通信大学
部署
脳科学ライフサポート研究センター
職名
特任教授
学位
理学博士(東京大学)
科研費研究者番号
70281706

プロフィール

 哺乳類の視覚野には、眼優位カラム、方位カラム、運動方向カラムなどのカラム構造(脳表から白質までを貫く円柱状の機能的構造単位)が存在する。「シナプス可塑性」を数学的に定式化することによって、このようなカラムの形成を理論的に説明する自己組織化モデルを構築し、計算機シミュレーションによって実験的に見られる構造の再現に成功した。
 外側膝状体の遅延反応型と非遅延反応型ニューロンの存在が、既に報告されているので、それらを考慮した自己組織化モデルを構築し、視覚野ニューロンにおける方位選択性だけでなく、方向選択性、およびそれらのマップ構造を再現することに成功した。視覚野単純型細胞の示す最適方位と受容野位相の張る空間が、位相幾何学的にクラインの壷K2と等価であること発見し、ホモトピー論によって、方位マップに現れる特異点を分類できることを示した。さらに、運動方向マップに現れる不連続線と方位マップの特異点の幾何学的関係を明らかにした。また、ネコを用いた内因性光学計測によって、この幾何学的関係を実証した。サルの視覚野には眼優位カラムに沿って、チトクローム酸化酵素によって染まる規則的なブロッブ構造が見られるが、この両者の幾何学的関係を自己組織化モデルによって再現した。
さらに、厚さをもつ3次元的な大脳皮質に適用できるように自己組織化モデルを拡張し、方位カラムの構造が灰白質の曲率が大きいところでは乱れることを示し、ピッツバーグ大学の研究グループとのfMRIを用いた共同研究によって、理論結果の妥当性を実証した。
 着脱可能でかつ安定に動物の頭部に固定できる方位視体験を制限するゴーグルを開発し、発達期の動物の視覚野方位マップが視体験によってどのように再編されるのかを調べた。
 ①3週齢から8週齢の幼若ネコに1、2週間単一方位を視体験させると、経験した方位に選択的に反応する領域が視覚野の広い領域を占めること(過剰表現)を発見した。また、②臨界期のプロファイルを描くことに成功し、その臨界期(生後10日から50日)における可塑性にはNMDA受容体が重要な役割を演じていることを薬理学的に解明した。さらに、③幼若期にはわずか数時間だけゴーグル飼育をした場合にも、統計的に優位な過剰表現が見られることから、従来予想されていた以上に、方位選択性はダイナミックに変化することを示した。
 さらに、個々の視覚野ニューロンは方位選択性を示すが、方位カラムの存在しないげっ歯類においても、ゴーグル飼育をすることによって、経験方位の過剰表現を誘導できることを確認した。特に、①幼若マウスに1週間単一方位を視体験させた場合には、経験方位に対する視覚野の反応が増強すること、②成熟マウスについても2-3週間同じ視体験操作を行えば、経験方位に対する反応が優位に増加することを確認した。この内因性信号光学計測法から得られた経験方位に依存する視覚反応の変化を、二光子励起イメージング法を用いて細胞レベルで調べたところ、経験方位に選択的に反応する細胞密度においてのみ単一方位視体験による有意な増加がみられた。

研究分野

 
 

経歴

 
1986年4月
 - 
1994年9月
日本電気(株)基礎研究所 研究員
 
1994年10月
 - 
1997年9月
理化学研究所国際フロンティア研究システム 脳回路モデル研究チームリーダー
 
1997年10月
 - 
2009年9月
理化学研究所脳科学総合研究センター 視覚神経回路モデル研究チームリーダー
 
2001年4月
 - 
2008年3月
九州工業大学大学院生命体工学研究科 脳情報専攻 客員教授(自己組織システム講座)
 
2009年10月
 - 
2012年3月
国立大学法人電気通信大学 情報通信工学科 特任教授
 

学歴

 
1983年4月
 - 
1986年3月
東京大学大学院 理学系研究科 物理学専門課程
 

受賞

 
2007年
内藤記念科学財団 内藤記念科学財団研究助成金
 
1998年
日本神経回路学会 日本神経回路学会研究賞
 
1994年
日本神経回路学会 日本神経回路学会奨励賞
 
1992年
日本電気株式会社 上原道之賞
 

論文

 
Sasaki KS, Kimura R, Ninomiya T, Tabuchi Y, Tanaka H, Fukui M, Asada1 YC, Arai1 T, Inagaki M, Nakazono T, Baba M, Kato D, Nishimoto S, Sanada TM, Tani T, Imamura K, Tanaka S, Ohzawa1 I
Scientific Reports   5 16712-16723   2015年11月   [査読有り]
Tadashi Yamazaki, Soichi Nagao, William Lennon, and Shigeru Tanaka
Proceedings of National Academy of Science, USA   112(11) 3541-3548   2015年3月   [査読有り]
An efficient way to form a new declarative memory is to repeat a short-term training many times with a rest between the training sessions, because the learned memory is consolidated after training. This suggests that the brain still keeps actively...
Toru Takahata, Masanobu Miyashita, Shigeru Tanaka, Jon H, Kaas
Proceedings of National Academy of Sciences   111(11) 4297-4302   2014年3月   [査読有り]
Sensitivity profile for orientation selectivity in the visual cortex of goggle-reared mice
Yoshida T, Ozawa K, Tanaka S
PLoS ONE   doi:10.1372/journal.pone.00406   2012年   [査読有り]
Parallel development of orientation maps and spatial frequency selectivity in cat visual cortex.
Tani T, Ribot J, O’Hashi K, Tanaka S.
European Journal of Neuroscience   35 44-55   2012年   [査読有り]

Misc

 
脳はどこまで解明されたか:視覚野発達を中心に
田中繁
パリティ   24(5) 41-45   2009年
視覚野神経回路の自己組織化
田中繁
日本神経回路学会誌   9 41-48   2002年
こころと脳の要素との関係
伊藤正男, 榊佳之, 田中繁, 深井朋樹, 三品昌美, 藤田道也
生体の科学   53 27-44   2002年
研究成果:Predicting the anisotropy of lateral connections in the visual cortex from the distribution of singular points in the pattern of orientation columns.
田中繁
BSI NEWS   (10) 8   2000年
研究最前線:脳の構造と機能の出現をあざやかに描き出す
田中繁
理研ニュース   (225) 5-7   2000年

書籍等出版物

 
Visual Cortex - Current Status and Perspectives
Shigeru Tanaka (担当:共著, 範囲:New pictures of the structure and plasticity of orientation columns in the visual cortex)
INTECH   2012年   
別冊日経サイエンス 157
田中 繁 (担当:単訳, 範囲:視覚から意識の世界をのぞく)
日経サイエンス社   2007年   
ニューロインフォマティクス-視覚系を中心に-
田中繁、宮下真信 (担当:共著, 範囲:スパイク放電型ニューロンを用いた視覚野神経回路の数理モデル)
オーム社   2006年   
神経科学の基礎と臨床13 後頭葉:その機能とネットワーク
今村 一之,田中 繁 (担当:共著, 範囲:視覚野の機能構築の発達と可塑性)
ブレーン出版   2005年   
THE NEURAL BASIS OF EARLY VISION
Masanobu Miyashita, Shigeru Tanaka (担当:共著, 範囲:Experience-dependent self-organization of visual cortical receptive fields and maps)
Springer-Verlag Tokyo   2003年   

講演・口頭発表等

 
脳=コンピュータ?
田中繁
情報オリンピック表彰式記念講演   2010年3月   日本情報オリンピック委員会
『三つ子の魂百まで』の神経物理学
田中繁
2007年度公開講座「物理が解き明かす脳のひみつ」   2007年10月   日本物理学会
Effects of visual experience on orientation map development: experiment and theory.
Tanaka S.
Physiology of perception and action forum   2007年9月   College de France
Orientation map reorganization induced by persistent exposure to a dynamic or stationary single orientation.
Tanaka S, Tani T, Ribot J.
83rd Annual Meeting of the Physiological Society of Japan   2006年3月   Physiological Society of Japan
視体験は視覚野を再構成するか
田中繁
第34回東工大物理COEセミナー   2005年2月   東京工業大学

担当経験のある科目