あくまでも、テストです。(研究には無関係です。)
Researchmapのエディタの下行右から3番目のボタンが、動画埋め込み用ボタンです。クリックすると、YouTubeでの埋め込み用コードを入力できるようになっています。
「計算とは何か」はここ数年、岐阜県の学校、
埼玉県の学校 で実践を行っています。学校によって使える時間数には幅がありますが、岐阜県では全体で7時間程度を確保していただいています。
計算とは何かの授業の最終的な目標は、「数学の活動の中で日常的に使っている関数(定数を含む)の中で、実際に自分で計算できないものはないか?それを電卓はどのように計算しているか?」と考え、実際に工夫をして計算をしてみる、という発展的授業です。
この授業は通常4名から5名のグループ活動で進められ、グループごとに、これから数週間かけて計算を解明すべきターゲットとなるボタンを電卓の中から選びます。多くのグループが、「√ 、π、sin, cos」を選びます。最初の課題は、それらのボタンが何を意味するのか、数学的定義を書くことです。ここに最初のハードルがやってきます。(本課題を行う際には、グループ同士話し合いも可ですし、
教科書を参照することも許可されています 。ただし、ネットで検索することは禁止しています。)
なぜここが「ハードル」になるか、というと、生徒たちには、定義されたものを自分なりにイメージして、場面場面で「使う」という体験は豊富にありますが、実際になにかの定義を「言う」という体験が普段はほとんどないためです。「
生き抜くための数学入門 」でも紹介しましたが、円周率πの定義が明確に言えるのは、中高大・社会人含めて半数を切ります。円周率が「3.」から始まることを論理的に言える人は、1割を切ります。
今回の実践においても、√に取り組んだすべてのグル―プが、「√のボタンの定義」を「√xとは、二乗するとxになる数」と誤って回答しています。(正しくは、xが非負の場合、√xは二乗するとxになるような非負の数。xが負の場合は、エラー)
ここで、興味深いのは、彼らは、「
を満たすxを求めよ」という問題には「2, -2」と正しく答え、電卓の√ボタンに4を入力すると、2と表示されることは認識していながら、それでも、「√xとは、二乗するとxになる数」と答えてしまう、という点です。
つまり、①
を満たすx、②具体的に√ボタンに非負の数を入力した際の挙動、と自分の答えが論理的に矛盾しているにもかかわらず、それに気付かない、ということを意味します。これには2つの可能性があると私は思っています。
1つ目は、論理的矛盾を内包しているのに、それを気にしていない、という可能性です。だとすると、そのような論理的矛盾を内包したままで、中高校の数学は「それなりに」乗り切ってしまえるようなセッティングになっている、という可能性を示唆しています。
2つ目は、定義の読み方自体がよくわかっていない、定義は「お供え餅」のように単元の1ページ目においてあるものであって、それが何かは、実践の中で帰納的に理解すればよい、と認識している可能性です。つまり、彼らは、頭の中では、√xとは「xが非負の場合、√xは二乗するとxになるような非負の数。xが負の場合は、エラー」と認識しているにもかかわらず、それを書く段になると、イメージとずれた表現をしてしまうという可能性です。
矛盾を抱えたまま放置しているのか、それとも「定義」という活動に慣れていないのか、この段階では不明(生徒個人によっても差がある)ため、間違った班には、次のようなメッセージを投げかけます。
「みなさんは、中間テストで「
を満たすxを求めよ」という問題が出たら、どんな答えを書きますか? 電卓の√のボタンで、√4を計算させると、どんな答えが出ますか? 上記の2つの作業の答えは一致していますか? もし、一致していなければ、「√xの定義として、
を満たすx」というのは正しくなさそうですね。では、どう修正すればよいでしょう。落ち着いて考えてみましょう。」
第一回目の定義の授業で論理的矛盾が爆発するのは毎年のことではありますが、(期末テストで範囲内であったにもかかわらず)すべての班で迷いなく「√xとは、二乗するとxになる数」と書いてよこしたのには、担当者全員ショック。
「ショック」と書くと、お読みになった方は「いまどきの高校生は云々」という話として、受け止めるかもしれませんが、
そうではありません 。論理的矛盾を内包していても乗り切れてしまうような中高の数学カリキュラムだったか・・・ということや、イメージを正確に定義に書く・修正するという能力レベルが、年を追うごとに下がっていることへのショック、という意味です。
生徒は「自然に」スキルを身につけるわけではありませんから、何かのスキルレベルが目に見えて低下した場合、どこかで何かしらのトレーニングが足りない・欠けたと考えるべきだと、私は思っています。
次回の指導要領で、いかに数学的に「表現する活動」を、こうしたトレーニングに活かせるかが重要になってくると、私は認識しています。
さて、明日は2回目の授業です。
2回目からは、実際にいくつかの値を用いて、それの√、cos, sinを計算するアルゴリズムを考えます。πは小数第二位まで計算する工夫を考えます。√は、その定義から原始的な計算アルゴリズムが見つかるのでよいのですが、cos, sinは定義からは計算ができないので、毎年苦労をします。
でも、最終的に小数第二位まで正確に計算するのが一番大変なのは(手計算&高校生が思いつくアルゴリズムの範囲内では)πです。
ここ数年、私が研究テーマとして取り組んでいるのは、「いかに中高校生に、論理的文章を書くためのスキルを身につけさせるか」ということです。3月にエジプトで開かれる教育工学の国際会議で発表する内容は、(1)箇条書き、(2)手続き(アルゴリズム)、(3)「~ので」「~のとき」「ならば」「よって」など、「ならば(→)」を意味する論理的接続詞、の3つを意識的に使用した文章を繰り返し書かせることによって、論理的表現力を高める試みでした。これは、拙書
「数学は言葉」 「計算とは何か」 で、数学教育の在り方として取り組んだテーマでもあります。
この試みは、人間には誕生の際にすでに、普遍論理が(普遍文法と同じように)埋め込まれているため、上記の3つを意識して書いているにもかかわらず論理的に破たんした文章は、なかなか書きづらいはずだ、という前提に立っています。
3歳の子に
「道路に飛び出したら、車にはねられるよ。だから、やめようね」
と母親が諭した直後に、何の迷いもなく、その子が道路にその子が飛び出したら、母親は「うちの子はどこかおかしいんじゃないか」と思うでしょう。それは、3歳の子にすでに論理が埋まっていると母親が前提している証拠に他なりません。
(もちろん、普遍論理の堅牢さは、個人によってかなり差があるとは思いますが。)
ところが、実証実験を行ってみると、頻度としては多くないのですが、私たちをひどく悩ませるタイプの文章、つまり、上記の3つをクリアしているにもかかわらず、論理的に破たんしている文章が出現することがわかりました。もちろん、「そういうタイプのものもあるだろう」とは予想していたのですが、こうした生徒が普段の定期試験を(それなりに、赤点はとらずに)クリアしていることにも驚かされました。
そこで、上記の3つ、特に(3)の論理的接続詞をそれなりの頻度で使っているにもかかわらず、論理的に破たんしている文章を書いてしまう人に共通する特徴と、その行動をとってしまう理由に、現在は関心を持っています。なので、最近は、ブログをサーチして、「論理的に破たんしているもの」を抽出して、魚拓をとることを日課にしています。
(うわー、性格がいよいよ悪くなりそう・・・)
で、その結果なのですが・・・あんまりに惨憺たる状況で、「人間は普遍論理をもって生まれてくる」という信念が、ときどき揺らぎそうになります。
Google Book Searchの話題から継続して、Webサービスにおける「推薦」について考え中。
考える手段として、Amazonのマイストアに行って、自分の購買履歴からAmazonが推薦してくる本に対して、片っ端から、評価をつけてみる。(私の好みをAmazonのコンピュータに理解させるために。)
これをしているうちに、「機械による推薦はまじで難しそうだ」ということに気づく。
まず、私が辛い評価をつけるのは、数学や経済学や哲学など、自分が「興味を持っている」分野なんですね、実は。関心が薄いものには「ふつう」をつけたり、評価を飛ばしたりする。
あるいは、作家でも、興味のある作家に限って、「この本は大好きだけど、これはいまひとつ」などと差をつけて評価する傾向がある。
何故に私が、「世界の数学の歴史」(マンキェヴィチ)は嫌いで、「はじめて読む数学の歴史」(上垣渉)は好きかは、タイトル・内容・他者の購買履歴から分析しても、機械にはわからないだろうなぁ。
本には、本当に大切な本、仕事上とりあえず読まなければならない本、本や作家自体には興味はないけれど資料として買わなければならなかった本など、いろいろなタイプのものがあるわけで、買ったからといって興味があるとは限らないし、興味があるからといってよい評価をするとも限らないし。ずっと持っていても、愛しているとは限らないし。(単に、「この本は何故にこれほどに愚劣なのか」ということを考えるために所有している本もある。)
だとしたら、論文や本はどうやって推薦したらいいんだろう・・・と思うと、友達の「本棚」を覗いてみる、というのが一番手っ取り早い推薦なんじゃないかという気がしてきた。(私の場合なら、かげうらさんとたかのさんの研究室に行って、本棚の前に立ってみる、みたいな?)
そーいえば、こないだかげうらさんが遊びに来たとき、私の机をみて「あ、ミンスキーだ(心の社会)」と言っていたから、もしかしたら、「ともだち」っていうのはお互いにそういうことをしている存在なのかもしれません。きっとうちの娘も、ともだちの本棚をみて、次回買う漫画を決めているんでしょうw
お正月から、新しい本の執筆に入りました。今回は数学入門書では「ない」ので、いつもとは違う種類の資料を集めなければなりません。そんなときにたいへん助かるのが、本を検索するサービス。
NIIには高野明彦研究室による
WebcatPlus という優れた文献検索サービスがあり、常日頃からお世話になっているわけですが、今回は、Google Book Searchを併用して使って見ることにしました。
Google Book Searchは、絶版になった(あるいは高額の)洋書の中味を見る(あるいはブラウズする)には、たいへんありがたいサービスです。周辺の大学図書館では見つからないような本も、これを使えば、全文をPDFでダウンロードして読むことができちゃったり。
ところが、日常的に使おうとすると、どうも痒いところに手が届かない・・・イライラ・・・という気持ちになってきたのです。
WebcatPlusならば、調べ物をしている際に、「こういう文章に関係しそうな本を探す」とか「今見つかった、A,B,Cに関連している本は他にもないだろうか?」というような探し方ができるのですが、Google Book Searchではそれが難しい。
あるいは、CiNiiでは、引用関係がわかっているので、この論文の引用に現れる論文を探す、ということが簡単なわけですが、Google Book Searchは全文情報を持っているくせに、引用されている本のリストは出してくれない。
AmazonやGoogleのウェブ検索ならば、評判の本やpage rankの高いものから順に並べてくれるけれど、Book Searchでは並べている順序の基準がどうも納得しがたい。
Book Listを作って保存してはみたものの、そのデータを使って、膨大な書籍データから「私向きの」本を選んでくれるわけでもないようで・・・うーん、これだったら近所の三省堂にまずは行って、自分でブラウズするか、書店員に相談したほうがいいのかな、と。
そういう意味で、今のところは、「(中味をブラウズするために)書名がわかっている本を探す」のには適していますが、「今調べたいことにちょうどいい本のリストを、読むべき順に出してくれる」というところまでは、まだ距離がありそうです。
うーん・・・Googleは、私のここ6年分の検索履歴も持っている上、あれだけデータマイニングの専門家を雇っているわけですから、もうちょっと気をきかせて探す能力があると思っているんだけれどもなぁ・・・どうしたんだろう。
ま、そういうサービスに依存するようになったら、研究者も終わりだ、という気がしなくもありませんけれども。
(「数学の窓」より転載)
2010年4月に大学院へ入学予定の学生対象
「数学吉田塾シニア@けいはんな」のご案内
GCOEプログラム(京都大学)の一環として、2010年4月から大学院修士課程に入学される学生の方々と、チューターとして参加を希望する大学院生の方
々を対象に、下記の要領で「数学吉田塾シニア@けいはんな」を行います。この「数学吉田塾シニア@けいはんな」は、講演とセミナーを通して修士・博士課程
の大学院生をはじめとする若手数学者との交流をはかり、大学院で有意義な数学の勉学・研究を始めることができるように支援するものです。参加者は、下記の
セミナーのいずれかに参加する必要があります。専門外のセミナーへの参加を歓迎します。旅費・滞在費の支給も予定しています。
京都大学 理学研究科数学教室
連絡先tel: 075-753-3707
「数学吉田塾シニア@けいはんな」係
記
日時:2010年2月19日(金)12時30分~ 2月22日(月)12:00過ぎ解散
場所: 関西学研都市 けいはんなプラザ http://www.keihanna-plaza.co.jp/
プログラム:
2月19日(金)12時半-- 受付
14時--18時 講演 日野正訓氏(情報学研究科)『確率積分とその周辺』
20時--24時 セミナー
2月20日(土) 9時--12時 講演 榎本直也氏(理学研究科)『表現論入門-対称群の
モジュラー表現論への誘い-』
14時--18時 セミナー
20時--24時 セミナー
2月21日(日) 9時-12時 セミナー
14時--18時 セミナー
20時--24時 セミナー発表会
2月22日(月) 9時--12時 セミナー発表会
14時--18時 セミナー発表会
セミナーは6班に分かれ、次のテキストを使います (テキストはコピーして事前にお渡しします).
1. シルヴァーマン、テイト『楕円曲線論入門』第1章から第3章まで
講師:吉永正彦氏(理学研究科)
2. 小林昭七著「ユークリッド幾何から現代幾何へ」日本評論社(第1章から第3章まで)
講師:加藤毅氏(理学研究科)
3. 白石潤一『量子可積分系入門』SCGライブラリ 28(サイエンス社)(全部)
講師:前野俊昭氏(工学研究科)
4. 松木敏彦『リー群入門』(日本評論社)第1章から第8章まで
講師:菊池克彦氏(理学研究科)
5. Thomas Ransford “Potential Theory in the Complex Plane” London Mathematical
Society, Student Texts 28, Cambridge University Press, 1995. 第1章~第5章
講師:澤野嘉宏氏(理学研究科)
6. (1)関孝和『開方翻変之法』(1685年以前)(東北大学蔵)
(2)上野健爾・小川束・小林龍彦・佐藤賢一『関孝和論序説』第4章第3節方程式論
(p.232-275)(+当日配布されるであろう参考資料)
講師:小川束氏(四日市大学)
募集予定人員 :各セミナー4~5名、25名前後を予定しています。
参加資格 ●2010年4月に数学系大学院へ入学予定の学部学生および修士1年生(京大以外の
方の参加も歓迎します)
●チューターとして参加を希望する修士2年および博士課程の方(学生の指導経
験を積んで頂きます)
応募方法
a. 現在の所属
b. 連絡先(書類の郵送先住所、eメール・アドレス、(携帯)電話番号)
c. 大学院で研究したいことをできるだけ詳細にA4一枚にまとめてもの
d. 参加希望のセミナー番号を第一希望、第二希望、第三希望まで記したものを郵送
(〒606-8502 京都市左京区北白川追分町京都大学理学研究科数学教室、数学吉田塾
シニア@けいはんな係)、
もしくはFax(075-753-3704)にて申し込んで下さい(2010年1月15日必着)。
希望者が多数の場合は、提出の書類に基づいて選考します。必ずしも希望のコースに
添えるものではありません.また、セミナーのテキストは後日郵送します。
リンク備忘録
たいへん興味深い数学実験の記録。「フラクタルビスケット、ポアソンスパゲティ」
http://d.hatena.ne.jp/rikunora/20091213/p1
日本の中小企業のWebへの投資額の平均について。「不況の中でも販売金額2割増」
http://japan.zdnet.com/sp/feature/09ohkawara/story/0,3800099690,20404435,00.htm
「企業にとってウェブは欠かせないマーケティングツール、営業ツールとなっているが、昨今の経費削減 のなかで、外部にサイト制作を依頼できないという課題を抱えている。従業員数300人以下の企業では、ウェブサイト に関わる年間予算が100万円以下、月平均で8万円というのが実態。」
Wordle:
http://www.wordle.net/
Researchmapに公開されている論文のタイトルから、「こんなことに研究者は関心をもっています」ということを抽出するWordleを作ってみたらおもしろいのではないか?
最近、「データベース民主主義」とか「数学的民主主義」とか「一般意思2.0」という言葉がネット上で華やかにやりとりされているみたい。
「一般意思2.0」というのは東浩紀さんという気鋭の思想家が現在準備している本のタイトルらしい、ということは雑誌「Sight」の「東ジャーナル」で読んで知り、楽しみにしているのだけど。
というわけで、まだ発刊されていない本の話であるので、定義を知らないで書くことになることを予めご承知置きください。
こちらの方の
解説(?) によれば、それは
データベース 民主主義 」が提起しているのは、これまで「拍手・喝采」を介して行われてきたことが、今では
グーグル その他のテクノロジーを介してもっと精緻な仕方でできますよ、ということ
と書かれています。あるいはご本人が「ITに支援された集合知」のイメージとして
集合知の生成には必ずしも討議が必要ない。ユーザーがみなモニタに向かい黙々と自分のやりたいことだけをやっている、それでもその全体を集めると適切な資源配分が行われる、それが集合知のイメージである。
と書いています。実際に研究者のDBを預かっているResearchmapの管理者としても興味深いことなのですが、技術的にちょっとよくわかんない、と思うところがあって。
たとえば、ブロゴスフィア分析において、「今何が話題になっているか」「話題がどのように変遷したか」「誰が話題の中心にいるか」などはふつうに計算できます。
「ブログオーナーAとBがどのていど似た関心をもっているか」なども計算できます(Researchmapのお隣の研究者機能のように)。
なのですが、とある政治的課題に関してどういう意見をもっているかを要約する、ような計算は、上記の計算とは質が全然違いますよね。シンタクスで完結しなくて、セマンティクスを考えないといけないので。
ふつうに考えると、まともな計算時間では計算できないように思うんですけど。
あ、もちろん、どこか内閣府みたいなサイトに電子投票箱みたいなのを置いて、賛成・反対、と投票する、というのは(問題は山積みであるものの)可能でしょうけれども、きっと東さんは、もっとスタイリッシュなことを想定していると思うんですね。人々は政治について殊更に考えることなどしなくても、彼らがキーボード(じゃなくなるのだろうけど、もうすぐ)に入力しているそれこそが「彼ら以上に彼ら」なのだから、そのインプットから、彼らが何を望んでいるか計算してあげよう、ということなんだろうなと思うのです。(単にSNSで直接民主制というのであれば、アイデアとして古臭いし、つまらない上に、たぶん現実的に回らない。みんな暇ではないので。)
それはとても興味深いアイデアだし、情報学者の多くも「入力されたものが彼ら以上に彼らである」と思ってるわけだけど。それは確かにそうなんだけど、データベースから「何に興味をもっていそうか」は読み解くことはできても、「賛成か反対か」さらには「どういう風に賛成か」を、まともな計算時間では読み解けないと(少なくとも現状では)思うのです。だって、否定の「ない」が文のどこにかかっているかを分析するだけで、結構大変ですものね。(特に、日本語は難しい。)
だとすると、データベース民主主義を実現するには、「こういうタイプのひとは、こういう話に賛成する傾向が強いです」というのをデータマイニングで出してくる、くらいなのではないかなぁ・・・と想像してみました。
あ、でも、それは広告には使えるけど、政治には使えなさそうな気がする・・・んですが、どうなんでしょうか。
参考資料:
「ネットがあれば政治家いらない」東浩紀
追記:ところで。データベースといったとき、まさかsurface web(ブログとかtwitterとか)ではなく、deep webを意味しているんでしょうけど、そんなもの事実上GoogleかMSしか持ってないから、日本の政治は日本では決定できなくなりますが。そういうのは思考実験の場合はあんまり考えなくて・・・いいのか?
春日部高校で行った授業のメモ。
<目的>
数学の学習で大きな割合を占める「計算」について概観し、計算(アルゴリズム・近似)に関する勘を身につけ、未知の計算を編みだす能力を育成する。
<セッティング>
対象は、公立の高校1年生(進学校)。
二次関数、三角比、実数(有理数・無理数)
授業時間は60分から2時間(50分×2)
<題材>
無理関数(
)を題材として、計算とは何か、計算できるとは何か、計算効率とは何かを考えつつ、それらの知見を「論理的に言葉にする」ことを学ぶ。
<方法>
導入
「簡単に計算できるという式を2つかいて実際に計算してみましょう」
「変数が現れない式なのに、どうしても計算できないという式を2つ書き出しましょう」
という2つの設問から授業を開始する。
多くの生徒は、「計算をする」という活動は日頃からいやになるくらい経験しているが、「(自分には)計算できない式が存在する」ということは認識する機会が皆無である。そのため、「式にかければ計算できる」と思い込んでいる場合が少なくない。
まずは、膨大な「計算したい式」があり、その中で、私たち人間が工夫を重ねて計算方法を編み出したものはそのうちのごく一部に過ぎないということを認識させる。
この導入部分で、
や
,
,
のような式を思いつくことができるとよい。無理関数は生徒が出会う最初の「計算方法を学校で教わらない関数」であり、三角関数は最初に出会う「定義からは自明な計算方法が得られない関数」である。(定数としては、
が最初に出会う、定義からは自明な計算方法が得られない数」)
ここにおいて、「計算できるとは何か」を改めて定義する。「計算できるとは、値がひとつに決まり、しかもその値を望む精度で求めることができること。別の言葉でいうと、どんなnに対しても小数第nまで正しく計算できる方法を知っていること」。
検討
これらの中から、
を題材として、具体的にどのように計算すればよいかについて検討していく。まずは
の定義を確認する。(多くの生徒が「二乗すると5になる数」と答えるので、「二乗すると5になる非負の数」という正解が出るように複数の生徒に答えさせる。その際、「あいまいな定義から出発すると数学は瓦解するので、ひとつひとつの定義に心をこめるよう」伝える。)
では、「この定義から、
の整数部分がいくつになるかをまずは決定しよう」と持ちかける。これは簡単に2という正解がでる。理由をいわせる。
正解「2を2乗すると4であり、3を2乗すると9であるから、2<
<3となるはず。よって、
の整数部分は2である」
(このように「~から・・・」「よって、・・・」という論理的接続詞を多用させることにより、論理的な作文能力を身につけさせたい。)
同様の方法で、小数第一位を決定させる。
次に、彼らに「今の方法の悪い点を挙げましょう」といい、ノートに書かせる。すると「(計算が)めんどう」といった単語が並ぶので、「『めんどう』とはどういう意味かを数学的に表現しましょう」と促す。「何をするのに、何回どのような計算をしなければならないか」という視点で書かせる。
正解「(2.1^2, 2.2^2,...と下から順に試行錯誤した場合)小数第n位まで決定するのに、最悪で9n回の二乗計算を繰り返さなければならない」
展開
ここで計算効率を上げる方法としていくつかの提案を行う。たとえば、折れ線グラフを使う方法。(近似ではもっともよくとられる方法なので、ここで身につけておきたい)
無理関数
のグラフを示し、その上で「既知の点」をつないで折れ線グラフを重ね、それによって近似してみる。
点B,点Cをつなぐ直線の方程式から
の値を予測する。(ここで、中学校で学んだ、二点をつなぐ直線の方程式を復習。)すると、近似値は2.2となる。(真の値は2.2360679...)
ここで「この方法によって、
を計算できますか?さきほど書いた「計算できる」の定義にもどって検討しましょう」と尋ねる。この方法では、これ以上の精度で
を計算することができず、よって「計算できた」とは言えないことがわかる。
発展
ここまでで開平でさえ、なかなかうまい計算方法が見つからない、ということを実感してもらい、最後にニュートン法の紹介をする。(ここは紹介部分)
1.
のグラフを見せ、このグラフのx軸との交点のうち正のものが
であることを確認する。グラフを拡大し、
においては、グラフがほとんど「まっすぐ」に見えることを確認。「まっすぐのグラフ、とは何のグラフ?」とたずね、一次関数で近似できないかというニュートンのアイデアに導く。その際、手書きのグラフではなかなか伝わらないので、パワーポイントを使った。
では、どのような一次関数でこのグラフを近似可能か?と聞くと、多くの生徒は、
と
を結んだ直線と答える。が、
はそもそも今計算できないのだから、その線は使えない。そして、
における
の接線を使う、というアイデアをこちらから示す。(高1の段階では、このグラフの接線を考え付くのは困難と判断)
生徒には、「では接線とは何ですか?接線である条件を箇条書きで書きましょう」と促し、「
と
のみで交わるような一次関数」という条件に至らせる。
この条件から、
という関数であり、
を通るので、 である。
は重解をもつ。
以上から、判別式Dを用いて、
から、a=6を得る。
よって、接線の方程式は、
。これを
と重ねて、近似具合を確認する。
がx軸と交わる点は、
である。
なので、真の値2.23696..とはまだ乖離がある。
もう一度、
で接線をひき、同様の方法で近似すると、小数第2位まで近似可能となる。
ニュートンのアイデアをまとめると、
多くの曲線は近づいてみると直線に見える。
(p,q)という点の近傍(ちかく)における曲線上の点とその値は、(p,q)における接線で近似できる。
曲線上の与えられた点(p,q)における接線を求める簡単な方法がわかれば、曲線はいくらでも近似できる。
このことから、接線を求める方法である「微分法」が計算にいかに重要か、ということがわかる。
<ポイント>
この授業は、本当は微分係数と、三角関数の加法定理等を習い終わった高校2年生の2学期に行うと、より効果的だと思います。(微分を使えば、ニュートン法の計算も楽。)どういうわけか研究授業は1年生で頼まれることが多いので、その点で苦慮しています。
高校で学ぶ数学のうち計算法の占める割合は5割を超えるかと思います。たとえば、三角関数の各定理は「既知の三角比から未知の三角比を求める計算法」です
し、二重根号のはずし方なども「根号を整理することによって、根号の計算の手間を減らす工夫」です。が、高校の授業では、それらの工夫を「ありがたい」と
思うシーンが用意されていないため、誰も、これが「工夫」であることを認識していません。
本授業は、「うんざりする計算」がいかに「工夫に満ちたもの」であるかを実感してもらう授業であり、計算とはさせられるものではなく、自ら切り拓くものだということを認識してもらうためのものです。
なので、ニュートン法は単なるおまけというか偉人がした工夫の紹介なのですが、そこに時間をとられると講義に失敗します。
大切なのは、「計算できるとは何か」「計算できないものの例を挙げよ」「円周率とは何か?その定義から計算できるか?」「√5を突然計算しなさいといわれたら、あなたは最初にどうするか?」「無理関数のグラフにはどんな特徴があるか。形状の特徴を3つ挙げよ」「その特徴は計算することに活かせそうか?」「接線とは何か。その性質を3つ挙げよ」というように「見たものの性質を言葉で正確に表す」ということを授業中に繰り返すことです。
生徒の感想を見ても、「わかっていることを言葉で表す」ことが一番難しかったことがわかります。そして、それが必要な能力であることは高校生は(なぜか)認識しているようです。
(参考文献:「生き抜くための数学入門」理論社、「計算とは何か」東京図書)
生徒の感想からランダムに4つ抽出して個人情報がわからないように編集して掲載します。
続きを隠す<< 吉川東中学校にて行った研究授業の授業案メモ。ほぼ同じ授業をお茶の水女子大学附属中学校でも実施。
<目的>
数学で得られた知見を、他の人と共有できるような形で、論理的に記述する能力を身につける。
<セッティング>
対象は、公立中学校2年生32人のクラス。
一次関数・一次方程式既習、平面幾何(証明)・確率は未習。
授業時間は2時間(50分×2)
<題材>
モンティホール問題 のバリエーションを用いた確率の問題を扱う。
授業のタイトル:「クイズ・ミリオネア」へようこそ
クイズの4択問題に正解すれば1000万円を手に入れることができる。ところが、どれが正解か、まったくわからない。仕方がないので、適当に1つを選ぶ。そこで、司会者が「50/50を行使することができますよ」と提案する。50/50とは、回答者が選んだ選択肢と正解以外の選択肢からランダムに2つを選
んで消去してくれる、という仕組み。そこで、回答者は50/50を行使することにする。すると、2つの選択肢(回答者が最初に選んだ選択肢、とそれ以外)
が残る。
では、回答者は回答を変えるべきか否か。
(※注意:モンティホール問題は、中学校の確率の指導範囲を超える。)
<方法>
導入
実際にクイズショー形式で、代表の生徒に前に出てきてもらい、問題を出す。(このとき、生徒では絶対にわからないようなマニアックな問題を出す必要がある。)そして、実際に50/50を行使させ、残った選択肢のうちどちらを選ぶべきか、またその理由をクラス全員にたずねる。すると3つの意見に集約される。(1)回答を変えない。(2)回答を変える。(3)どちらでも同じなので、そのときの気分で決める。 ただし、どの3つの回答を選んだ生徒でもほぼ間違いなく、「どちらを選んでも同じなので」どれを選ぶかは好みの問題だと考えている。
ここで、「どちらを選んでも同じかどうか」ということを数学的に検討するための方法として「確率」という概念を導入する。その上で、4つの選択肢をランダムに選んだとき、それが正解である確率は1/4(百分率では25%)であることをまずは確認する。
ただし、次の2つでは確率が異なることに注意を向けさせる。
コインを投げたとき、表が出るか、裏が出るかの、2つに1つ。表が出る確率は1/2
サイコロを投げたとき、1が出るか、1が出ないかの、2つに1つ。1の目が出る確率は1/6
実験
4人一組で班を作り、トランプを使った実験を行う。ひとりが司会者、ひとりが回答者になり、他の2人は実験の記録係となる。それぞれの班は
(1)回答を変えない
(2)回答を変える
(3)コインを投げ、その裏表によって回答を変えるか否かを決める、
の3つの戦略のうちの1つを予め決める。(ただし、クラスの中で3つの戦略が必ずどれも実験がおこなわれるように配慮する。)
司会者は、ジョーカーを1枚含む4枚のトランプをババ抜きの要領で回答者に示す。回答者はそのうちの1枚を選ぶ。このあと、予め決めた戦略にもとづいて、トランプを選ぶ。ジョーカーをひけば正解、そうでなければ不正解とする。
試行回数を最低でも30回行うようにして、自分たちの戦略で、何回正解できるかを調べる。
※ただし、回答者はなるべく「ランダムに」最初のカードを選ぶように指導する。
各班にはあらかじめワークシートを渡して置き、(1)選んだ戦略(2)試行数(3)正解数(4)正解の割合(式と計算と答え)(5)なぜそのような結果になったのかの理由
を相談して書かせるようにする。
(ここまでで前半の1時間終了)
分析と説明活動
全班の実験結果を休み時間中に集めて、戦略ごとに合計し、正解の割合を計算しなおしておく。
次の時間の最初に、実験結果を発表する。すると、「変えない戦略」では25%、「変える戦略」では75%、「コインを投げて決める戦略」では50%が正解する(という理論値だが、その通りにはいかない、が、おおよそそのようになる)。
なぜそのようになると思うかを各班に発表させる。が、たぶん、ややめちゃくちゃな説明になる(だろう)。そこで、先生が、図を使って説明をする。
どうしてこうなったんだろう.ppt
すると、生徒の多くから「あぁ、そうか」「ふーん」という声が漏れる(はず)なので、「みんな仕組みはわかったようですね。では、それを文章で書いてみましょう」と言って、文章に書かせる。つまり、「正解がわかっている『つもり』の中で、それを論理的に文章で説明」する、という本授業の一番重要な活動に入っていく。
が、(たぶん)まったく書けないので、班の中で話させる。班の間をめぐって、その会話の中から糸口をつかんでやり、「そこが大切なポイントだよね!そこを書くとよくなると思うよ」「最初の書きだしはどうする?」と促していく。途中で上手に書けているものを見つけて、1行程度読み上げる。そのことで、うまく書けない者はそれを参考にして他のところを書く、ということで紡いでいく。(文章指導で20分)
最後に、各班の中で、お互いに見せあい、自分たちの班の代表を選んで、それを発表する。
<指導のポイント>
この授業で目指しているのは、新たに身につけた数学的な知見を正しく文章で表現できる力をつけることである。モンティホール問題を扱うことによって、確率の発展的授業として使うこともできるが、条件付き確率を教えることが目的ではない。では、なぜこの問題を扱うか、というと、「直感と異なる結果になるものを論理によって正しく伝える」には良い材料だからである。また、4つの選択肢のうち1つを選ぶのは、分数では1/4、百分率では25%であり、やや数学的な知識が乏しい生徒でも直感がききやすく、理解しやすい。直感ではなく数学で考えることの良さを伝えることができる点でも、題材として適している。
指導者は条件付き確率の理論を(この場面で)教えようとすると失敗するので、そこを気をつける必要がある。もし、この問題のバリエーションから条件付き確率を教えることが目的であれば、別のアプローチをとるべき。
導入部分は、いかにこのクイズショーに興味をもってもらうかがポイント。よって、パワーポイントのスライドや、パネルを使うなどして、テンポよく進めるとよい。
最後の説明文を書かせる場面では、必要に応じて再びトランプで実験のシーンを振り返り、「なぜ「変えない戦略」では25%しか当たらないか」を口頭で説明させると、スムーズに進みやすい。
(参考文献:
「ふしぎな無限」ブルーバックス )←この本には、実際の授業(e-教室)の様子が掲載されています。