平沢尚彦

J-GLOBALへ         更新日: 17/09/17 15:13
 
アバター
研究者氏名
平沢尚彦
 
ヒラサワ ナオヒコ
通称等の別名
Hira
URL
http://polaris.nipr.ac.jp/~hira/
所属
国立極地研究所
部署
国立極地研究所 研究教育系気水圏研究グループ
職名
助教、極域データセンター兼任
学位
博士(環境科学)(北海道大学)
その他の所属
総合研究大学院大学

プロフィール

研究課題と活動状況:   大気中に水蒸気として存在する水の一部は凝結や昇華によって雨や雪となり降水として地表面(海洋や陸地)に移動する。地表面からは蒸発によって再び大気中に水が移動する。大気を含む地球表層ではこのような水循環が行われている。極域では降水量および蒸発量はともに少ない。循環する水の量が少ない主要因は低温のために大気中に存在し得る水蒸気量が地球上の他の地域と比べて最も少ないことである。それでも、長い時間を掛けて南極氷床のような巨大な氷の塊を作り上げている。
  水循環に関わる極域の気象過程には、中緯度や低緯度とは異なる興味深い現象がある。地上から1000m程度までの下層には気温逆転層(下方に向かって気温が低下する大気層)が発達し、その中で形成する小さな氷の結晶による降水(ダイヤモンドダスト)が冬季にはほぼ絶え間なく続く。南極氷床の涵養(氷床への水の供給)は、このダイヤモンドダストが大きく寄与していると長い間考えられてきたが、近年その認識は大きく変わりつつある。時折発生するブロッキング現象や発達した総観規模擾乱に関連して低緯度側から大量の水蒸気が一気に(1日程度で)持ち込まれ降水を起こしていることが明らかになり、年間に10回程度発生するこのようなイベントが総降水量の半分程度をも担っていることが内陸域の多くの拠点観測から分かってきた。
  このような極域の水循環およびそれに関わる大気循環の変動を、地域規模~全球規模、イベント~年々変化までの広い時空間を対象として明らかにしようとしている。研究の推進にあたっては、南極観測隊でのフィールド観測、及び昭和基地における衛星データ受信を実施するとともに、国際的に共有されている衛星データアーカイブや全球大気客観解析データ等を利用している。観測データの理論的考察を進めるために数値モデル実験を実施している。また、北極域における研究にも参画している。
  さらに、極域・寒冷域の研究コミュニティを広げることを目的に、気象学会の中に極域・寒冷域研究連絡会を組織しその運営を共同で担っている。極地研究所等で実施される各種シンポジウム、論文誌の編集やレビュー、および研究成果の社会還元のための極地研究所南極北極科学館展示・ホームページ編集に協力してきた。

主なフィールド観測歴:
第38次南極地域観測隊越冬隊(ドームふじ基地、1996.11-1998.3)
第48次南極地域観測隊夏隊(S17航空オペレーション、2006.12-2007.3)
第56次南極地域観測隊夏隊(しらせ船上/昭和基地/S17拠点、2014.12-2015.3)
第58次南極地域観測隊夏隊(しらせ船上/昭和基地/S17拠点、2016.12-2017.3)
ノルウェー・NyAlesund滞在観測(1995/96冬季、1998/99冬季、1999/2000冬季)
北海道・陸別町降雪観測(2012年-現在)
ヤクーツク降雪観測(2012-現在、GRENE北極事業で立上げ)
アラスカ・PFRR降雪観測(2015-現在、GRENE北極事業で立上げ)

研究分野

 
 

経歴

 
1993年
 - 
現在
国立極地研究所 気水圏グループ/極域データセンター/総合研究大学院大学 助教
 

学歴

 
 
 - 
1993年
名古屋大学 理学研究科 大気水圏科学
 
 
 - 
1984年
筑波大学 第一学群 自然学類 地球科学
 

委員歴

 
2016年2月
 - 
現在
日本極地振興会  極地編集委員
 
2015年
 - 
現在
WMO/Antarctic YOPP Committee  日本代表委員
 
2013年
 - 
現在
WMO(世界気象機関)/SPICE(固体降水相互比較観測)計画  陸別観測サイト代表者
 
2011年
 - 
現在
ICPM委員(国際極地気象委員会
 
1996年
 - 
現在
気象学会・極域寒冷域研究連絡会運営委員
 
2012年
 - 
現在
JAXA・EarthCare科学委員会委員
 
2009年
 - 
2012年
JAXA・サブミリ波放射計科学委員会委員
 
1998年
 - 
2006年
気象学会・講演企画委員
 

論文

 
Antarctic numerical weather prediction for supporting JARE by using JMA-NHM
Hashimoto, A., K. Yamada, N. Hirasawa
CAS/JSC WGNE Research Activities in Atmospheric and Oceanic Modelling, WMO   47    2017年   [査読有り]
Identification of air masses responsible for warm events on the East Antarctic coast
SOLA   12 307-313   2016年   [査読有り]
Influence of large-scale atmospheric circulation on marine air intrusion toward the East Antarctic coast
Geophys. Res. Lett.   43 9298-9305   2016年   [査読有り]
Balloon-borne observations of lower stratospheric water vapor at Syowa Station, Antarctica in 2013
Tomikawa, Y., K. Sato, N. Hirasawa, M. Tsutsumi and T. Nakamura
Polar Science   9    2015年   [査読有り]
Hirasawa, N., H. Nakamura, H. Motoyama, M. Hayashi, and T. Yamanouchi
J. Geophys. Res.   118 6916-6928   2013年   [査読有り]

Misc

 
2012年秋季「極域・寒冷域研究連絡会」の報告―極域・寒冷域の雲をつかむ―
平沢尚彦・他
天気   60、   2013年
地上気温と降雪
平沢尚彦
日本気象学会・第46回夏季大学「新しい気象学(テーマ:北極温暖化と異常気象)」・テキスト      2012年
2012年春季極域・寒冷域研究連絡会の報告「厳冬をもたらす大気循環-2011/2012の冬季をふりかえる-」
平沢尚彦・他
天気   852-854   2012年
2011年秋季極域・寒冷域研究連絡会の報告「北極温暖化の理解に向けて」
平沢尚彦・他
天気   63-66   2012年
2010年秋季極域・寒冷域研究連絡会の報告「雪を考える-降雪と積雪のフィールドワーク-」
平沢尚彦・他
天気   58、665-668   2011年

書籍等出版物

 
「南極氷床と物質循環・気候」、気象研究ノート、233
平沢尚彦、山内恭 (担当:共編者, 範囲:編集、及び分担執筆:序章、第1章・南極への大氣・水・物質輸送、第6章・総観規模大気循環システムに伴う物質輸送の描像、第9章・南極氷床の涵養量の分布と年々変化、第12章・ドームふじ基地における降水形成気候、第17章・南極氷床縁辺部のエアロゾル分布の特徴とカタバ風の関わり、第22章・ドームふじ基地の気温逆転層、第25章・特徴的な現象)
日本気象学会   2017年8月   
気候変動の事典
平沢尚彦 (担当:分担執筆, 範囲:南極大陸域の温暖化の特徴と氷床変動)
朝倉書店   2017年   
低温環境の科学事典
平沢尚彦 (担当:分担執筆, 範囲:ブリザード; ダイヤモンドダスト)
朝倉書店   2016年7月   
南極と北極のふしぎQ&A, 南極から地球環境を考える2
平沢尚彦 (担当:監修, 範囲:気象(8-11, 30-33))
丸善出版, 47pp   2014年   
南極の自然・環境Q&A, 南極から地球環境を考える2
平沢尚彦 (担当:監修, 範囲:気象(18-27p))
丸善出版, 47pp   2014年   

講演・口頭発表等

 
極域予測年における日本の貢献
猪上淳、平沢尚彦、末吉哲雄
セッション:南北両極のサイエンスと大型研究、JpGU2017年度春季大会、幕張   2017年5月   
東南極の気候変動の検出と解明に向けた大気・氷床・海洋の長期的観測
平沢尚彦、青木輝夫、林政彦、藤田耕史、飯塚芳徳、栗田直幸、本山秀明、山内恭、末吉哲雄
セッション:南北両極のサイエンスと大型研究、JpGU2017年度春季大会、幕張   2017年5月   
南極氷床上を拠点とした夏季45日間の観測 -第58次南極観測夏隊大気・雪氷チームの報告-
平沢尚彦、林政彦、小西啓之、小塩哲朗、Nuerasimuguli Alimasi、中田浩毅
日本気象学会2017年度春季大会、東京   2017年5月   
南極氷床縁辺域における物質の鉛直輸送のメカニズム
平沢尚彦、林政彦、中田浩毅、小塩哲朗、小西啓之、Nuerasimuguli Alimasi
日本気象学会2017年度春季大会、東京   2017年5月   
東南極の気候変動の検出と解明に向けた大気・氷床・海洋の長期的観測
平沢尚彦、青木輝夫、林政彦、藤田耕史、飯塚芳徳、栗田直幸、本山秀明、山内恭
極域科学シンポジウム   2016年12月   

Works

 
北極域対流圏・成層圏物質の変動と気候影響
2000年

競争的資金等の研究課題

 
南極大陸内陸域における大気循環と水・物質・エネルギー収支
極域における無人航空機による気象観測
北極海上の接地気温逆転層の研究
昭和基地におけるNOAA衛星受信

社会貢献活動

 
社会活動・貢献など
【その他】
一般向け講演会講師など
他大学等での教育活動
【その他】
非常勤講師:山梨大学工学部特別講義(2004年~現在)
第三回 小型無人航空機の現状と科学観測への応用に関する研究会
【その他】  2006年
学会・シンポジウム等のコンビーナ
気候と雪氷圏
【その他】  日本地球惑星合同大会  2005年
学会・シンポジウム等のコンビーナ
気候と雪氷圏
【その他】  日本気象学会春季大会・専門分科会  2005年
学会・シンポジウム等のコンビーナ

その他

 
  南極氷床の涵養・消耗をはじめとする極域の大気及び雪氷圏における水循環を研究することは地球の気候システムの理解の一翼を担うと考えている。極域は、人間の生活圏から離れていることや低温環境のため、現在でも観測データが他の地域に比べて乏しい。特に、降水量や水蒸気量の観測データを得ることは重要な課題である。

  1997年に南極観測隊に参加し、内陸ドームふじ基地において越冬観測を行い、ブロッキング現象発生時の内陸域の天候変動を明らかにし、ブロッキングと惑星規模波動との関連を議論することができた。2007年に氷床縁辺部から海洋上にかけての航空機観測を行い、エアロゾルの広域空間分布を取得した。このデータをもとにカタバ風がその末端部で物質輸送に果たす新しい視点を得つつある。また、南極氷床の頂上域における気温逆転層の構造や季節的変化についての議論を進めている。

  新しい知見を得るために、降雪量観測の課題の克服、無人航空機の気象観測への利用に取り組んでいる。降雪量観測の精度向上を目指したWMO(世界気象機関)主導の国際的研究プログラム:SPICE(個体降水比較観測計画)に日本側の観測拠点代表の一人として承認され参画している。データ解析においては、数値モデルにより南極氷床上の接地気温逆転層を精度よく再現し、水循環機構についての理解を深めようとしている。