基本情報

所属
大阪経済大学 経営学部 准教授
学位
博士(学術)(神戸大学)

連絡先
hiroyuki.inaokagmail.com
研究者番号
40536116
J-GLOBAL ID
201201097110333711
researchmap会員ID
B000219696

外部リンク

研究上の関心は、1)17世紀ヨーロッパ哲学、より具体的には、ライプニッツの数学の哲学、とりわけ、「位置解析」「幾何学的記号法」と呼ばれるライプニッツ独自の幾何学研究が持つ哲学的重要性や、無限小解析学が生まれる時代の数学研究における図形の役割について研究しています。

これまでは、普遍記号法の構想を生涯抱いていたライプニッツがなぜ幾何図形を用いない幾何学の構築を試みたのか、無限小解析研究と幾何学研究とはどのように関連しているのか、空間論の展開に幾何学研究がどのように関連しているのか、といった問題に取り組んできました。こうした問いの解明を通じて、点、記号、想像力といった概念の変遷を整理し、ライプニッツの数学の哲学の全体像を再構成することを目指しています。

さらに、パリ時代のライプニッツの数学研究に関して、とりわけ幾何図形がどのような機能を担っていたのかを歴史的かつ哲学的に解明する研究も進めています。具体的には、パリ時代の数学研究の集大成である論文『算術的求積』の全貌を解明する研究や、同時代の他の数学者の証明技法と比較することで、ライプニッツの数学研究の特徴を浮かび上がらせる研究を進めています。

また、2)数学の哲学の研究として、幾何図形を用いた推論(図形推論)についても研究しています。図形を用いた推論は正確なものではない、場合によっては推論を誤謬に導くものとして、歴史的には重要視されてはいなかったのですが、近年その機能を見直す動きが起きています(このへんの事情は 論文「図形推論と数学の哲学――最近の研究から」をお読みいただければひと通りのことはわかります)。図形を用いた背理法による証明や、非ユークリッド幾何学における無限遠点の幾何図形による表現などを分析することで、幾何図形が数学の証明においていかなる機能を果たしてきたのかを、歴史的観点から、かつ、現代的観点から解明する研究を進めています。図形推論は認知科学や数学教育などの分野でも盛んに研究されているテーマでもあり、今後はこれらの分野の研究者と哲学者が共同で研究することが求められています。

ライプニッツ研究と数学の哲学研究の背後には「数学の記号はどのような機能を持つのか」という共通の問題関心があります。

数学の記号に関するこうした問題関心に加えて、最近は、3)アニメーションの哲学の研究も進めています。私たちはアニメーションを鑑賞する際、キャラクターの音声と声優の音声を同一視し、現実世界に存在する声優が発した音声を虚構世界のキャラクターが発したものとみなした上で鑑賞し、楽しみます。声優はこうした意味では裏方的存在であるのですが、他方で、声優自身もまた単なる裏方にはとどまらない存在感を持っています。こうしたアニメーションや声優が置かれた現状を踏まえた上で、声優の音声はどのようにしてキャラクターの音声としてみなすことができるのか、私たちはどのようにしてアニメーション声優の音声を聴いているのか、といった観点から声優の音声が持つ描写機能の分析を進めています。

こうした「声優の哲学」は、ライプニッツの数理哲学研究や現代の数学や論理の哲学研究と同様に、「(図形や音声といった)表現媒体はいかにして対象を描写するのか」という、より広い哲学的関心に基づくものです。この意味において、哲学史研究(ライプニッツ研究)、現代哲学研究(数学・論理の哲学研究)、応用哲学研究(声優の哲学研究)は一つの軸で結びついています。

応用哲学・応用倫理学研究としては、4)スポーツ哲学・倫理学についても研究しています。「人類にとってスポーツとはなにか?/人はなぜスポーツをする/見るのか?」といった問題関心があります。

また、学際的共同研究として、信頼概念に関する学際研究や哲学教育に関する研究も進めています。

さらに最近は、5)ポピュラー哲学(哲学の非専門家を中心とした哲学に関する実践)にも関心を持ち、出版動向をサーベイしたり、学会のシンポジウムを企画したりなどの活動を行っています。哲学対話や哲学カフェといった哲学プラクティスにも関心があります。こちらは教育活動やアウトリーチ活動とも連動させた研究ができればと考えています。


論文

  23

書籍等出版物

  10

講演・口頭発表等

  56

MISC

  19

その他

  12

受賞

  1

委員歴

  13

共同研究・競争的資金等の研究課題

  8

学術貢献活動

  1

メディア報道

  2