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2011/03/28

福島第一原発周辺の風向・風速を公開しました

Tweet ThisSend to Facebook | by kitamoto
すでに3月22日の公開から1週間が経過してしまいましたが、今回の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震・関東東北大震災)に対応したウェブサイトをご紹介します。

福島第一原発周辺の風向・風速(Google Mapsタイリング版) | 2011年3月 東北地方太平洋沖地震 - 国立情報学研究所



このサイトでは、福島第一原子力発電所を中心とした東日本の風向・風速をGoogle Maps上で一望できます。33時間先までの予報データも閲覧できますので、今後の風向なども把握することができます。

これには気象庁の数値予報モデルGPV (Grid Point Value)、すなわち天気予報のためのシミュレーション結果をまとめた生データを使っています。気象庁ではこのシミュレーション結果を読み解き、そこにそれぞれの土地の特殊な条件を加えた上で、各地の天気予報を発表しているのです。したがって、実測した観測値そのものではないものの、大きなスケールにおいてはそれなりに信頼できるデータであると言えるでしょう。

その他、地震に関連する情報は、2011年3月 東北地方太平洋沖地震関連情報に今後も集約していきます。まだまだ初期段階ですが、息の長い取り組みとして続けていきたいと思います。

★★★

さて、今回の地震については、なかなかブログエントリーを書くことができませんでした。毎日毎日、地震に関する映像や情報が心に衝撃を与え、自分が咀嚼すべき情報もあまりに多種多様で大量、自分は何をどう整理すべきなのか、呆然と情報を消費する日々が続きました。そして、「自分はこれまで一体何をやってきたのか」という情けない気持ちを整理することもできませんでした。

私はこれまで、こうした緊急時の情報処理に貢献することを重要な研究目標の一つにしてきました。私の研究者としての社会貢献は、このような混乱した場面で社会に役立つ情報を迅速に出せるよう、日ごろから情報基盤を準備しておくことである、とも考えていました。そしてそれは、既にそこそこは整えてきたつもりでした。

しかし今回の地震で、私は迅速に動くことができませんでした。もちろん地震発生当日(=帰宅困難徹夜中)から対応は開始しました。しかし、何を対象とすべきか、システムをどう作るべきか、試行錯誤をする間にも容赦なく時間は経過していきます。10日も経ってようやく上記ページは完成しましたが、自分としては「10日でこの程度か、何もできなかったな。。」という落胆ばかりを感じます。専門家として迅速に有用な情報を発信することはできなかったのです。

★★★

ただし今回の地震からの復興は長期間にわたる戦いです。落胆ばかりしていてもしょうがありませんので、自分にもできそうなことは何かをいろいろ考えました。その結果、以下の点を中心に活動を進めていこうかなと考えています。

1. 気象データおよび放射線データの可視化

福島第一原発は今後しばらくの期間は放射線(放射性物質)の放出源となりますので、周囲の風向などの気象データ、および放射線モニタリングポストや浄水場での放射線観測値を知りたい方々がたくさんいらっしゃいます。この点に関して、私は幸いにも手元に気象データをたくさん持ってますので(デジタル台風)、データの可視化に何らかの貢献ができると考えています。上記の「風向・風速マップ」はその第一弾という位置づけです。

2. 自然言語文ジオコーディングソフトウェア(GeoNLP)の開発

自然言語文の地名を解析する処理は、被災地における情報の整理や統合に大きな役割を果たすと考えられます。もちろん緯度経度があれば地図には落とし込めるのですが、日常的に位置を示すために利用されるシンボルは緯度経度ではなく地名ですので、現場では多くの情報が地名で整理されることになると思います。しかし、単純な住所のジオコーディング(地名から緯度経度への変換処理)とは異なり、自然言語文には構文的な関係や意味的な関係が含まれますので、そうした依存関係まできちんと読み解いてジオコーディングをするのはなかなか大変です。そうした作業をサポートするソフトウェアの開発を実は昨年から開始していますが、予定を前倒しして早急にリリースしたいと考えています。

3. デジタル震災文庫の構築

今回の大震災は、未来の日本の行方を左右する、時代の転換点となる出来事です。3.11は「あの日の記憶」として語り継がれ、今後の日本の原点となるでしょう。したがって、この大震災をそれぞれの視点から再構築しつつ論じることが、未来の研究者の大きなテーマになります。また津波に関する研究だけではなく、被災者に関する研究や、デマに関する研究なども、今回の大震災のデータが基礎データとなります。そうした研究を可能とするためには、大震災に関するあらゆるデータを後世にきっちり残していくことが我々の責務です。

例えば神戸大学附属図書館は、阪神・淡路大震災の記録を震災文庫としてまとめています。ここの文庫の収集対象は阪神・淡路大震災資料の共有化をめざしてに、以下のようにまとめられています。

被災地での「震災や復興に関する記録や資料類(以下、震災資料)」の収集・保存・公開は、ボランティア団体、図書館、行政関係機関などがおこないました。収集対象となったのは、図書類だけでなく、ビラやチラシ、ミニコミ、ボランティアの記録ノート類など震災の一次資料、いわば、整理したり、まとめる前の素材となる資料からでした。神戸大学附属図書館も、1995年4月から従来は取り扱わないビラやチラシ、ニュースレター類の収集にも努め、震災文庫として、10月から公開をはじめました。人と防災未来センター資料室の資料は、同年10月からはじめた兵庫県の調査事業を基礎にしています。人と防災未来センター開館後の2002年4月から公開を開始してきました。現在も、神戸大学震災文庫や人と防災未来センター資料室以外にも、人・街・ながた震災資料室、震災・まちのアーカイブなどそれぞれの機関が、震災資料を保管しています。このように被災地では、さまざまな機関が独自に震災資料の収集、公開をおこなっています。

しかし今回の大震災では、これに加えて「デジタル震災文庫」が絶対に必要です。多くの資料がボーンデジタルで公開され、ウェブサイトに続々とアップロードされています。これらを早急に集めてアーカイブしていかないと、大震災発生直後の状況は永遠に復元できなくなってしまうのです。

阪神・淡路大震災の際も、地震直後に立ち上がった神戸大学のウェブサーバが世界中に情報を発信したことが語り草となっていますが、確かキャプチャ画像が残っているだけで、オリジナルページはどこにも残っていないと記憶しています。2011年の大震災では、さらに大きなスケールで、初期の記録が失われる事態も生じかねません(グーグルなどが保存してくれてるかな?)。

おそらくツイッターやブログなどだと大規模にアーカイブしている方々もいるでしょう(例えばANPI NLP:メインページ)。しかし同様に、もっと収集しにくい地方自治体や公共的なウェブサイトなども幅広くアーカイブする必要があります(まあ国会図書館が一応やってますが、収集頻度がアレなので。。)。そして「デジタル震災文庫」を継続的に成長させつつ、整理して検索可能とすることが、現代に生きる研究者の大きな貢献であると考えています。これはもちろん、一人で完結するような取り組みではなく、大きなグループで取り組んでいく必要があるでしょう。

その他、私も参加しているLinked Dataのプロジェクトによる、震災関連データの統合やOpen Governmentへの動きなども重要な課題になるかもしれません。このあたりはまだ検討中の段階です。

以上、自分でも何か貢献できそうなプロジェクトをまとめてみました。無力感を感じた日々もありましたが、まだまだ先は長い戦いですので、気を取り直して自分も息長く取り組んでいきたいと思います。

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