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2010/10/28

COP10生物多様性交流フェアで「いきものタッチャー」を公開

Tweet ThisSend to Facebook | by kitamoto
今週は名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催されています。生物多様性に関する今後の方向性を決める会議として、多くの国・機関からの出席者が激しい議論を戦わせていますが、明日までの会期中に新しい枠組みで合意できるのかどうか、まさに大詰めを迎えているところです。

さて、そんな熱い議論の横では、ただいまCOP10併催生物多様性交流フェアという催しが開かれています。私はこちらの方に、データ統合・解析システム(DIAS)プロジェクトの一員として、東京大学保全生態学研究室の皆さんや東京大学生産技術研究所の方と一緒に出展しています。下のようなテントを1個借り切って、ここで10月23日から29日までの1週間、ポスターや標本などを展示しつつ来場者の方に研究内容を説明しているのです。



ここで展示しているマルハナバチとチョウの標本は特に見事です。マルハナバチの標本を見ると、羽はきれいに横に広げられ、舌は引き出され、トゲもきれいに引き出されています。実はこの標本を作った人は日本でも指折りの昆虫標本作りの名手で、この超絶技巧も長年の鍛錬の賜物なのです。昆虫マニアたちも絶賛するプロの技をぜひ見てみてください。


とはいえ、私がこの記事で宣伝したいのは、この素晴らしい標本ではありません。いきものタッチャー - バーチャルモニタリングで生物種の見分け方を学習しよう!という、このイベントを契機に作ったシステムの方です。このシステムの基本的なアイデアは、ゲーム形式を用いた種の判別のトレーニングです。DIASで進めている市民参加型モニタリングにおいては、市民の方々が種を正しく判別する能力を養成することが重要な課題です。例えば外来種の防除を目的とするセイヨウオオマルハナバチ監視活動では、外来種のハチ(セイヨウオオマルハナバチ)だけを捕まえて、在来種のハチを捕まえないことが重要です。そのためには、外来種のハチだけを素早く見分けることができなければなりません。

そこで思いついたのが、ICカードの活用です。ICカードの表面に昆虫の写真を貼り付けて、カードをつかむことを「昆虫を捕獲する」行為に対応させれば、実際に自分の手で捕まえた昆虫(カード)が捕まえるべきものなのかどうかを、ICカードリーダで素早く判定できることになります。そしてフィールドに複数のカードをばらまき、その中から対象となる写真だけをすばやく集めるゲームにすれば、種の判別という問題にも関心を持ってもらえるのではないだろうか。いわば「バーチャルモニタリング」として、バーチャルに昆虫を捕獲する行為の体験を通して、実世界での種の判別について学んでいくわけです。

実物の「いきものタッチャー」の様子を以下に示します。



こんな感じでテーブルの上に20枚のカードがばらまいてあり、この中に5枚だけ外来種のハチの写真があります。真ん中の円の部分がカードリーダーで、ここにカードをタッチすると、外来種か在来種かの判定がモニター上に出ます。もし外来種のカードだったら正解!右側の木の容器の中に正解カードを集め、5枚のカードが集まったらゲーム完了です。その代わり、5枚集める前に制限時間の60秒が経過したら、ゲームオーバーです。

実際にこのゲームを参加者の方々に試していただいたところ、「面白かった」とかなり好評でした。ただ「難しかった」という意見も多かったですが。。。








子供たちに「ゲームやる?」と聞くと「やるやる!」と答えて、急に真剣に昆虫を見つめ始めます。また、ゲームの開始とともに時計の「チクタク音」が響き始めると、参加者の眼差しは一段と真剣になり、まるでやる気のスイッチがカチリと入ったかのようです。残り時間が少なくなるとだんだん焦り始めて、手当たり次第にカードをタッチし始める人もでてきます。ですので、いくら5枚のカードを見つけたとはいっても、それだけで生物種の見分け方を理解したとはいえません。でも、ゲームに熱中した一瞬だけでも生物にはいろいろな種がいるんだということに関心を持ってもらえたら、このゲームの目的としては成功なのかなと考えています。

なおこのゲームには裏の仕組みがあります。実はICカードでタッチした記録は、すべてログとしてサーバにアーカイブしているのです。この記録を分析すれば、みなさんがどのような間違いをしやすいのか、どのような角度だと見つけやすいのか、などの知識が得られるかもしれません。つまり、ゲーム機はデータ収集機でもあるわけです。私としてはここに本当の興味があります。

また、ゲームのアーカイブを応用すれば、ゲームのリアルタイム中継とか、ゲームのツイッター中継なども可能になります。これを見ながら、「ああ今日は雨だからお客さんが少なそうだな。。」などと、私も東京から会場の様子を想像しています。

さて、こんな風にいろいろ紹介しつつも、実はフェアは明日までなのです。この記事を読んで会場に来られる方はほとんどいないと思いますが、明日の午後は私も会場のデモに加わりますので、よろしければお立ち寄り下さい。

さらに蛇足ですが、鋭い方なら既におわかりのように、このシステムはハチやチョウだけにしか使えないシステムではありません。ICカードに貼り付ける写真を変えれば、植物でも動物でも、あらゆる種の判別ゲームに使えるはずです。しかもシステムに使っている部品はトータル10万円以下で揃えられそうな部品ばかり(ただしゲームソフトウェアは除く)。ゲームソフトウェアさえうまく一般化できれば、何セットも制作して幅広く同時展開できるかもしれませんね。
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