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2013/03/11

STEPS Musical Company第43回オリジナルミュージカル公演CHERRY

Tweet ThisSend to Facebook | by:suzumura

昨日は、12時3分から14時1分まで、慶應義塾大学日吉キャンパス塾生会館2階大ホールにおいて、STEPS Musical Companyの第43回オリジナルミュージカル公演CHERRYを鑑賞しました。


寸評は以下の通りです。


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キャバレーを舞台にしたミュージカルといえば、誰もが思い浮かべるのはライザ・ミネリが主演した1972年のMGM映画Cabaretであろうし、日本人の注目の度合いからすれば、米倉涼子が主演したことで話題になったChicagoが挙げられるだろう。


「金、女、酒」という三つの要素が揃ったキャバレーはそれだけでどこかいかがわしさが漂い、そのいわくありげな空間には自ずから物語が生まれるだけに、ミュージカルの舞台としては手頃な場所といえる。


その意味で、キャバレーCHERRYに集う人々の姿を描いたSTEPS Musical Companyの新作CHERRY(脚本、演出:本澤真綾)は、ミュージカルの王道に沿った作品と見えるかもしれない。


しかし、Cabaretほどに批判の精神を内に含まず、Chicagoよりも猥雑さと辛辣さを備えないCHERRYが描くのは、華やかな夜の蝶がその羽ばたきの影に抱える、誰にも打ち明けられない日々の生活の中での苦しみと、そのような必死で飛ぼうとする蝶たちを支える人々の姿である。


新宿二丁目に所在するCHERRYは、ナンバーワンの雅こと木村雅代(寺嶋麻美)とナンバーツーの愛莉(林美穂)の二人を看板とする、「キワモノばかり」のキャバレーである。


その「キワモノ」には、「夜な夜なキャバ嬢の格好をして楽しむオネエ系スタイリスト」のジョージ(増岡侑祐)やいつも厄介ごとを背負わされる20歳のボーイ平太(松岡大貴)ら一風変わった従業員だけでなく、CHERRY以外には家庭にも居場所のないサラリーマン石井(飯野雅貴)といった庶民的な客だけでなく、女優を目指して上京しながら34回連続でオーディションに落選している雅代と男遊びの激しい愛莉も含まれる。


開業以来赤字続きでも一向に気にする風のないマスター(丸井貴皓)の下、CHERRYは驚くほどのんびりとした場所となっていたが、正体不明の米国人女性サラ(井田愛実子)がCHERRYに現れ、店で働くことを志願する頃から、雲行きが怪しくなる。


実は、サラはCHERRYの入居するビルのオーナー佐々木(高橋浩介)と結託してCHERRYの追い落としを画策する不動産会社社長高橋(宇野巧)に雇われ、CHERRYの内部を調べるためにやって来たのであった。


一方、かつてマスターの部下として苦楽をともにした高橋は、5年前に大きな企画に携わっていながら途中で退職したマスターに対する遺恨を晴らすため、CHERRYの立ち退きを画策し、目的を達成するために様々な手段を用いていた。


35回目の挑戦で初めて採用された雅代に「映画の仕事」の現場である出来事が起きるが、その場面を捉えた高橋の一味は、いよいよCHERRYの立ち退きに動き出すのであった。


新宿二丁目の家庭的なキャバレーCHERRYを舞台に、雅代とその両親(藤村一平、今井里紗)の関係、「女優になる」という雅代の夢の行方と現実との葛藤、マスターと高橋の因縁という3つの大きな筋を織り交ぜて話を進める手腕は、複数の筋が同時進行する米国のテレビドラマを髣髴とさせ、非凡である。


ただし、3つの主要な筋のうち、CHERRYの立ち退きの原因となったマスターと高橋の関係が決着しきらなかったのは話を詰め込みすぎた結果であり、高橋や佐々木の悪辣さで中盤を盛り上げただけに、解決の方法としてはやや物足りなさが残った。


また、最終日の第一公演であるために前日までの疲労が蓄積されているという事情を考慮しても、主役を務める寺嶋や主役に対峙するはずの林の歌唱が安定さを欠き、他の少なからぬ出演者も音程や声量が不十分であったことは、基礎的な要素の揺らぎを推察させ、改善の余地があるものと思われた。


確かに、一部の出演者がヘッドバンドマイクロホンを着用し、不足しがちな声量を補う試みがなされていた。しかし、装着の仕方が不適切であったためか、あるいは音楽が大きすぎたためか、さほど効果を発揮せず、むしろマイクロホンの装着の有無により歌唱の内容にむらが出たことは、舞台を支える重要な因子の一つを不十分なものとすることに繋がり、この作品の完成度を一層高めることを難しくしてしまった。


ヘッドバンドマイクロホンを利用することはとりわけ昨今のミュージカルでは流行の観さえ呈しているが、250席程度の会場であればマイクロホンを利用することなく十分歌唱することができるだけに、今後は会場の広さを念頭に置いた機材の使用が望まれるところである。


このように、若干の改善点が看取された今回の上演であったものの、3つの主要な筋に対応するかのように主舞台から三方に伸びる階段を作り、空間を立体的に用いた舞台作りは優れており、この舞台だけでも一見の価値はあろう。


そして、毎回ながら脚本とともに劇中で唄われる作品を全て団内で生み出す創造的な営みは、高く評価されるべきものである。


次回の公演は半年後に行われようが、そのときにより進化した舞台の披露が期待されるところである。


*STEPS Musical Company第43回オリジナルミュージカル公演CHERRY, 2013年3月10日(日), 12時3分から14時1分, 慶應義塾大学日吉キャンパス塾生会館2階大ホール.
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<Executive Summary>
Stage Review: STEPS Musical Company the 43rd Performance "CHERRY" (Yusuke Suzumura)


The 43rd Performance of STEPS Musical Company of Keio University was held on 10th March at Keio University Hiyoshi Campus Students' Hall Main Hall. In this time an original musical CHERRY was performed.


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