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2015/01/21

翻訳『アリストテレス的現代形而上学』の担当章紹介

Tweet ThisSend to Facebook | by Ikuro
翻訳者のひとりとして参加させて頂いた、トゥオマス・タフコ(編)『アリストテレス的現代形而上学』(加地大介+鈴木生郎+秋葉剛史+谷川卓+植村玄輝+北村直彰訳、春秋社、2014年)が無事出版されました。翻訳にあたってご協力頂いた皆様、本当にありがとうございます。

以下は、Twitterで(特に担当した論文を中心に)本書の簡単な紹介をさせていただいたものです、長くなりすぎてしまったのでまとめて読むことができるように、こちらにも(文章の変なところだけは直し、少し再編集して)転載させて頂くことにしました。

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『アリストテレス的現代形而上学』は、 Tuomas E. Tahko (ed.) *Contemporary Aristotelian Metaphysics* (OUP, 2012)の全訳になります。本書は、昨年に惜しくも亡くなられた、現代形而上学の代表的論者E. J. Loweを中心に編まれた論文集でもあり、その点で本訳書も彼に対する追悼の意味を帯びることになってしまいました。このことについては、加地先生による訳者あとがきを参照していただければと。


本書の背景や狙いについては、加地先生による力のこもった冒頭解説や、編者のタフコさんの序論が明快な見通しを与えてくれます。また、タフコさんの論文(第二章)が、アリストテレス的現代形而上学の特徴(いくつかの点については、現代形而上学についての比較的主流になりつつある理解)を綺麗にかつ穏当にまとめているので、これも特にお勧めです。

私が担当した章は、第4エリック・オルソン「同一性・量化・数」と、第12カトリン・コスリツキ「本質・必然性・説明」になります。

オルソンの「同一性・量化・数」は、もしかすると「アリストテレス的」な感じは若干希薄かもしれません。この論文の主題は、とても基本的な形而上学的問題、つまり、何かと何かが同じであることと、あるものが存在するということと、あるものに何らかの数を割り当てられることの関係を扱うものです。

ごく標準的な考え方に従えば、あるものとあるものが同じだということは、要するに、それが「ひとつ」のものだということです。また、何かが存在することは、それが少なくとも「ひとつ」あることだと考えられます。したがって、同一性と数、量化(存在)と数が密接に結びついています。
しかし、現代の哲学者のなかには、こうした標準的見解を否定する論者がいます(その代表者が、先ほど挙げたロウです)。こうした論者によれば、ある種のものについては、あるものとあるものが同じものだとしても、それは「ひとつ」のものだとは言えない。同様に、その種のものが存在するとしても、そうしたものが少なくとも「ひとつある」とも言えないとされます。

オルソンの目的は、こうした議論(特にロウの主張)を批判的に吟味することです。この論文は、話題としては基礎的な(そしてちょっと地味な)ポイントを論じるものですが、とてもオーソドックスな仕方で書かれており、個人的には現代形而上学の議論の感覚をつかむのにとてもよい論文だと思います。
実際、この論文で用いられる明確化の手法や議論の進め方は、現代形而上学の議論で頻繁に用いられるものです。こうしたやり方に馴染めれば、大概の現代形而上学の論文を読むことができるのではないかと。


コスリツキ「本質・必然性・説明」は、本書の中でも特にアリストテレス研究としての側面を強くもつ論文です。実際、歴史的研究の成果もかなり踏まえられています。(歴史研究として評価することは私にはできないのですが。)

とはいえ、その関心の向け方はかなり現代的です。この論文の目的は、現代ではキット・ファインに代表される「本質を必然的性質の一種として理解しない/本質を非様相的に理解する立場」が直面する課題の解決にあたって、アリストテレスから重要な洞察を引き出せることを示すことにあります。もう少しだけ具体的に述べると、アリストテレスが『分析論後書』で提示した「論証」の理論が、こうした立場を展開するために必要な「特別なタイプの帰結関係を特徴づける」という課題を解決するための考え方を提供してくれることが論じられます。また、論証の具体例として、『動物部分論』のラクダの胃の事例が検討されます。

この論文は、(それぞれ専門化が進み難しくなりつつある)現代的関心と歴史的関心の両立を試みるものなので、様々な方にどのように受けとめられるか楽しみです。


以上です。どうぞよろしくお願いします。


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