基本情報

所属
東京大学 大学院情報理工学系研究科 情報理工学教育研究センター 次世代知能科学研究部門 特任研究員
学位
博士(理学)(2010年3月 北海道大学)

連絡先
kkagayaai.u-tokyo.ac.jp
研究者番号
00580177
ORCID ID
 https://orcid.org/0000-0003-3001-7690
J-GLOBAL ID
201101022208840720
researchmap会員ID
B000000659

外部リンク

研究分野
動物生理学,動物行動学,神経行動・生理学,ソフトロボット学,データサイエンス

 

概要

動物が,多様な環境・身体・脳の結合系として,どのようなメカニズムで行動を現すのかという問題に関心があります.特に「しなやかさ」や「自発性」を生みだすメカニズムに着目しています.分野は動物個体の機能を主に対象とする動物生理学分野となります.が,ソフトロボティクスをはじめ複数の境界領域に,この問題は現われます.これまでザリガニ,シャコなどの甲殻類を主な対象として研究してきました.そのために採用しているアプローチは次の三つです:

  1. 神経細胞や筋活動,身体の運動の計測を核とする行動生理学的方法
  2. それら計測値に対してモデルの構成・評価をする統計的推測・機械学習法
  3. 実機構成・評価を通したソフトロボット学的方法

さらにその先には,動物の生きるメカニズムを人間技術に転換すること(バイオミメティクス)を展望しています.

 

しなやかな弾性変形運動の発現・調節機構の研究

進化を通して獲得された身体と個体外環境との相互作用から驚くべき多様性が生まれます.脳と身体と環境,これらは分割統治されているわけではありません.しなやかにカップリングしています(embodimentの観点).このような多様性を体系化し理解するにはどのようにしたらよいでしょうか?外骨格ばねという変形する身体をうまく使ってはじめて実現される節足動物(シャコ Kagaya & Patek, 2016テッポウエビアギトアリ Aonuma+2023),軟体動物(タコ)を対象にこの問題に取り組んでいます.最近は,バイオミメティクスを目指しソフトロボット学(Inoue+2021, Ito+2021, Kagaya+2022)への研究を展開しています.


自発性行動の発現・調節の神経機構の研究

readiness potential 

動物行動は,明確な感覚刺激がなくても自発的・内発的に開始します.なぜ,どのようにして動物は自発的に行動を開始するのか? その神経機構を明らかにするため,これまではアメリカザリガニを対象として研究に取り組んできました.そして,ヒトを含む霊長類で過去報告されていたような,自発行動開始に先行する「準備活動」がザリガニにも存在することを発見しました(Kagaya & Takahata, 2010).準備活動の生成には,特定の神経細胞の自発性ではなく,回帰的な神経回路網の動作が鍵であることを提唱しました(Kagaya & Takahata, 2011).さらに,この回路網をより広く多自由度力学系としてみて,自発が,自己組織化臨界現象として説明されるプレプリントを公開中です(Kagaya, et al., 2022).

 

分野連携データ駆動型研究

- 行動生物学(カニ) [Harada+2020]

個々の動物個体の行動の個性がどの程度あるか,階層モデルと非階層モデルを予測(汎化誤差)の視点で推測する方法を提案しました.カイカムリは海綿を加工してかぶりものをつくります.この行動に個性があるかが問題です.解析からこのカニは小さいが大きめの帽子をつくり,逆に大きいが小さめのをつくる傾向が個体ごとに一貫する傾向があることを新たな統計的モデル評価法を通して示しました.階層モデルのような構造のある特異モデルの評価では統計的に正則な条件は成立しなくなっており最尤法の枠組によるAICはあまり適していません.そこでベイズ法に基づくWAIC(渡辺2012)を用いています.

- 疫学(ヒト) [Mizumoto+2020a, b, c]

科学的探求はデータに即して行なわれます.2020年春より続く新型コロナウイルスの流行は不確実なだけでなく未知の状況の中でデータから情報を得て行動することの重要性が広く認識されたと言えます.水本憲治さんと数理疫学分野でのデータ解析の共同研究を行いました.とくに,ダイヤモンドプリンセス号でのデータをもとに無症状の方の割合の統計的推測を報告しました(Mizumoto+2020).

- 染色体生物学(ヒト細胞) [Kagaya+2020]  

林眞理さんが開発した染色体が融合したときに蛍光を発する細胞系で,単一のX染色体の姉妹どうしが融合したときの細胞分裂周期などの表現型への影響を統計的に推測しました.融合を誘導すると,微小核という構造が生じて間期長が長く,不安定になると結論づけました.階層ベイズモデリングとその評価法を適用して,同一細胞が起源の系譜の細胞群をひとまとまりと考えるべきか予測の視点で考察しました.

 


主要な論文

  25

書籍等出版物

  3

主要なMISC

  17

講演・口頭発表等

  30

担当経験のある科目(授業)

  2

所属学協会

  2

受賞

  2

共同研究・競争的資金等の研究課題

  4

社会貢献活動

  6

メディア報道

  4