日誌

認知行動療法メモ

心理的柔軟性について

(執筆途中です)

 

心理的柔軟性の定義は

「意識のある人間として,不必要な防御なし(見かけに左右されずあるがままで)に,今,この瞬間に十分に接触しながら,選択された価値の方向に沿って行動を続けたり変化させたりする能力」(Hayes et al., 2011)

です。きわめて簡単にいうと,「役に立つ考えに基づいて行動する能力」であり,もう少し長めで柔らかく表現すると,「勝手に湧き上がる自分の思考や感情にとらわれることなく、自分自身が大切にしたい考えをより採用し、いきいきとした生活を送るための行動的側面」となります。

 心理的柔軟性には6つのコア・プロセス(Hayes et al., 2006)があり,ヘキサフレックスと呼ばれる六角形で表されますが,トリフレックス(Harris, 2019)と呼ばれる三角形,2つのスキル(Flaxman et al., 2013)というまとめ方もあります。

 

 

【文献】

Hayes, S. C., Strosahl, K. D., & Wilson, K. G. (2011). Acceptance and commitment therapy: The process and practice of mindful change. Guilford press.

Hayes, Stephen C.; Luoma, Jason B.; Bond, Frank W.; Masuda, Akihiko; and Lillis, Jason, "Acceptance and
Commitment Therapy: Model, processes and outcomes" (2006). Psychology Faculty Publications. 101.
https://scholarworks.gsu.edu/psych_facpub/101 (open accessバージョン, 正式なjounal版は Hayes, S. C., Luoma, J., Bond, F., Masuda, A., & Lillis, J. (2006). Acceptance and Commitment Therapy: Model, processes, and outcomes. Behaviour Research and Therapy, 44(1), 1-25.)

Harris, R. (2019). ACT made simple: An easy-to-read primer on acceptance and commitment therapy. New Harbinger Publications.

Flaxman, P. E., Bond, F. W., & Livheim, F. (2013). The mindful and effective employee: An acceptance and commitment therapy training manual for improving well-being and performance. New Harbinger Publications.

 

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マインドフルネス・ACT関連の公開記事一覧

 researchmapのバージョンアップによるリンク切れを修正 2020223

一般向けの読み物

 
  • 武田薬報web
セルフメディケーションにおける「マインドフルネス」のすすめ(音声体験付き)
 土屋がインタビューを受けてライターの方が書かれた記事です。
 音声は,声優経験者の方が担当して下さったので,とても聴きやすいです。
   ACTで使うマインドフルネス瞑想エクササイズとしても役立ちます。
 
  • 安全と健康

2017年

1月号 マインドフルネスって何?(著者提出原稿図差し替え版) 
2月号 苦痛と苦悩の違いについて知ろう
3月号 苦悩の正体
4月号 マインドフルネス・スキルと身体感覚
5月号 何のためのマインドフルネス?
6月号 「今、この瞬間」との接触
7月号 アクセプタンス
8月号 思考が行動に与える影響を無力化する
9月号 レジリエンスのある自己
10月号 現在から未来へ向かった行為パターンを意識する 
11月号 望んだ人生の方向に進み始める 
12月号 まとめと体験、そして応用のヒント

 

 

  •  アドバンテッジJOURNAL

【マインドフルネス】セルフケアからリーダーシップまで

マインドフルネスとは?身につけるための方法を解説

新型コロナウイルス流行による心理的不安にマインドフルに対処する

新型コロナウイルス流行による心理的不安にマインドフルに対処する【続編】

従業員がいきいきと働くために役立つマインドフルネス

WHOが勧めるストレス対処のセルフケア~思考や感情への気づき方~  new

 

 

  • ダイヤモンド・オンライン

燃え尽き症候群になりやすい人、なりにくい人の思考法「決定的な違い」

普通っぽいのに仕事ができる人だけが持つ「2つのスキル」 new

 

レビュー類

 
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ボディ・スキャン

 
 
マインドフルネス・スキルの練習において,どんなに時間がないと思っていても
必ず時間をとれそうな方法の1つがボディ・スキャンだと思います。
 
なぜなら,寝る前の横になっている時にできるからです。
誰でも睡眠はとるので,その前の時間であれば,必ず利用できる
時間となるためです。
 
本来は,途中で寝てしまうような時は練習の意味が薄れてしまいますが,
何もやらないよりはやった方がましなので,本当に時間がない方には
おすすめのマインドフルネス・スキルの練習と思います。
 
具体的なやり方は,下記の本のp118-119, 139-140に解説があります。
 
マインドフルネスストレス低減法
ジョン・カバットジン, Jon Kabat‐Zinn
北大路書房(2007/09/05)

 
簡単にポイントを解説します。まず,ボディスキャンの概要ですが,
 
ボディ・スキャンとは,自分が注意を集中している体の一部が感じている
本当の感覚を感じとり,その場所に,あるいはその中に自分の意識をとどめ
ようとする方法(p118)
 
というものです。要は,意識的に自分のある部分の身体感覚に注意を向けることを,
全身について順番にやっていくということです。
 
体のどこかが痛かったり,かゆかったり,しびれていたり,冷たかったり,熱かったり
したら,その部分に注意が向きますよね?ボディ・スキャンは,こうした刺激が
生じていなくても,その部分に注意を向けることをしていく方法です。
 

注意を向けるプロセスや順番については,以下のように説明されています。

 
最初は,左足の先から始めて,ゆっくりと足の付け根のほうへ注意を
移動させます。移動にするにつれて生じてくる感覚を感じとりながら,
呼吸にも注意を向けます。(p119)
 
本の中で,注意を向けるプロセスが2通り位別々の解説がされている
気がしますが,この注意をゆっくりと移動させるやり方が,スキャン
という語感にはあっている気がします。
 
注意を向ける順番は,
 
左足の先→骨盤→右足の先→骨盤→腰と腹部,背中と胸,肩→
両手の指先→左右同時に腕から肩→首→のど→顔のすべての部分→
後頭部→頭のてっぺん
 
で,頭のてっぺんまできたら,くじらの噴水孔のような穴があいていて
そこから呼吸しているイメージをします。頭のてっぺんから空気が入り,体全体
を通って足の先から出てゆき,今度は足の先から入った空気が体全体を通り抜けて
また頭のてっぺんから出てゆくように,体全体で呼吸しているイメージをします。
 
その流れを説明すると以下の動画のようになります。
 
 

 
 

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苦痛と苦悩の違い

「苦痛」と「苦悩」という言葉は似たような単語と思う方が多いと思います。
しかし,自分の思考や感情とうまくつき合うためには,これらを区別して
捉える事が非常に大切です。

苦痛と苦悩の関係を図式化してみると,以下のような形になると思います。



図は苦痛の丸から矢印が広がり,苦悩の丸(点線)を形成していますが,
これは苦痛と異なり苦悩はどこまでも広がりうることを表しています。

そして,この苦悩が広がる特徴は,ことばを使う人間特有のものです。
以下の動画は動物と人の同じ部分と異なる部分を説明しています。




・雷のような恐怖刺激にさらされると,動物もヒトも等しく苦痛を感じます。

・しかし,雷に関連した刺激がなくなると,動物は苦痛もなくなりますが,ヒトは苦痛の
ようなもの(点線内)が残っています。それに付随した反応も生じています(実線内)。

・これらが,ヒトのみに発生する「苦悩」です。これは,現在感じている刺激ではなく,
過去や未来の時間にある刺激ともいえます


苦悩がいかに我々の手に負えない特徴を持っているか示したのが
以下の図です。







ことばを使う以上,苦悩が生じるのは避けて通れないことですが,
苦悩とまともに向き合っても自分の力は及びません。

そこで必要になるのが,上図の下の方にある通り,綱引きをやめる,
すなわち苦悩をあるがままにしておく,という手段です。

この「あるがまま」にしておく態度こそが,マインドフルネスや
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)で身につける
ことが目指されるスキルの1つとなります。

2018/02/10 追記
『安全と健康』誌に2017年に連載した「マインドフルネスのスキルを身につける~生産性向上につながるセルフケア」の記事も参考にしてください。

2月号「苦痛と苦悩の違いについて知ろう
3月号「苦悩の正体

その他の記事一覧

 

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※ただし動画を作る際に使っている画像自体は除外します。その他の2枚の画像は完全に土屋作です。

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心理的柔軟性の6つのコアプロセス(1):「今,この瞬間」との接触


2019/10/07 追記
2020/08/21 リンク修正
心理的柔軟性について一通り知りたい方は
マインドフルネス・ACT関連の公開記事一覧
で公開している『安全と健康』の連載記事をお読みください。

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ACTの定番テキストの第2版の,心理的柔軟性の6つのコアプロセスについてそれぞれ解説している章から,説明内容をちょっとイラスト化してみるシリーズを書いていきます。まずは,「今,この瞬間」との接触から。

Acceptance and Commitment Therapy: The Process and Practice of Mindful Change
Steven C. Hayes, Kirk D. Strosahl, Kelly G. Wilson


ヒトが成長していく過程で身につける,刺激への注意の向け方について,3つの要素が解説されていたので,図にしてみました。これは,皮膚の外にある刺激だけでなく,皮膚の内側にある刺激,つまり内的出来事に対しても同様です。

「今」=刺激A,過去や未来についての思考がBとCと当てはめると,「今,この瞬間」と過去および未来との関係がつかみやすくなるのではないでしょうか。刺激Aは,多くの場合,呼吸にともなう身体感覚という内的出来事が使われる気がします。



マインドの2つのモードの話も出てきます。マインドフルネス認知療法では,「することモード」,「あることモード」という同じような概念がありますが,ACTでのこれの呼び方は,なんか独特な名前でした。意味がちょっと違うのかもしれないけど,それぞれを比べた説明を見かけないので,とりあえずACTでは2つのモードを下記のように説明している,という図を作成してみました。


夕焼けモードで情報処理すればよけいに悩まなくてよい状況で,問題解決モードで自動的に思考を働かせてしまうような場合だとつらいので,こういう2つのモードでマインドが動きうることを知って,意図的に切り替えられるようになるとよいよね,という話でした。

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