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研究ブログ

2010/05/01

研究費申請書・報告書の簡略化の具体案(続き)

Tweet ThisSend to Facebook | 固定リンク | by:tmiyakawa
研究費申請書・報告書の簡略化の具体案の続きです。
論文・特許・データベース・著作など、研究成果のデータベースについてもう少し詳細に考えてみました(論文を例にとって記載しています;社会活動やソフトウェア制作のようなものの場合は、それの紹介を論文化すれば同様に扱えるかと思います)。

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現状の研究費の報告書は研究費単位・年度単位で出す必要があります。これに加え、所属の部局、利用した大学の施設(動物施設や共同利用施設など)、新学術領域研究などのグループ研究、COEや私学助成、財団からの助成などでも、それぞれで報告書を出す必要があり、たくさんの重複がありこれが研究者の事務仕事を増やしています。また、研究は、年度ごとや研究費毎できちんとしたまとまりになっているということは実際はあまりないはずで、これは研究の実態に即していません。

原著論文は内容のまとまり具合やその国際性を考えても、研究成果の究極の報告書としての性質を持ち合わせていると考えることができます。従って、論文とそれに関する日本語要旨などのメタ情報をあわせて省庁横断的な共通の報告の基本単位として認めてもらうのが良いのでは、という提案です。

具体的には、何らかの論文データベース(例えばCiNiiやJ-Globalを拡張・改善したようなシステム)に、
1) 論文の情報を登録(Pubmedなど外部システムからインポートできるようにしておく;各論文はDOIを持っているので、単一のDOIを持つ論文の情報は、重複させずに一つの論文アイテムとして集約)、
2) その論文のメタ情報として、著者の研究者番号を登録、
3)  個々の論文アイテムに日本語の比較的わかりやすい要旨をつける(これはその著者の研究グループで最低一つつければよい;その他にも関連のメタ情報をつけてもよいようにしておく;専門外の人にもできるだけわかりやすく書くようにする;400字程度の学会発表要旨のようなものから、JSTのプレスリリースのようなものまで、重要度に応じて量・質は調整すればよいことにしておく)、
4) その論文をサポートした研究費や利用した共同利用施設の情報をつける(省庁横断的に研究費のIDを決め、そのIDを掲載)、
というようにしておきます。
さらに、この論文データベースは
5) 他の各種データベース(RmapやReaDなど)と共通のAPIで連携できるようにしておき、相互の情報のインポート・エクスポートが可能なようにしておく、
6) e-Radと連携させ、その論文のメタ情報として著者の研究者番号が登録された時点で、e-Rad上でその研究者のページにその論文が現れるようにしておく、
7) Web of Science、Google Scholar、Scopusなどと連携し、引用数情報を論文のメタ情報として自動的につける(名寄情報をこれらのDBに与えるかわりに引用数情報をもらう)、
8) 各種申請書の業績欄にもこれらのデータベースから容易に業績をフィードできるようにしておく(チェックボックスで選んだ関連する論文アイテムがフィードされるようにしておく;PDFの申請書では、審査員が業績アイテムをクリックするとこのメタ情報つきの論文アイテムへ飛ぶようにしておく)、
というようにしておきます。

このようなデータベースに論文とそのメタ情報を登録することをもって報告書のかわりとします。
所属の部局、利用した大学の施設(動物施設や共同利用施設など)、新学術領域研究などのグループ研究、COEや私学助成、研究助成財団などが成果を取りまとめようとする時には、研究者には上記以上の作業を求めず、上記のデータベースシステムから部局や研究グループの側が情報を半自動的に収集して取りまとめます。

以上のようにすることによって、
1) 研究者が重複する報告書をあちこちに出す労力・時間のムダを削減することができる、
2) 従来型の報告書よりも、実質的な一般国民への説明になっている(論文毎に比較的わかりやすい日本語の説明があり、詳細を知りたい場合は原著論文やその研究を行った研究者の総合的情報へすぐ到達できる)、
3) 研究者、各機関、部局や各研究費の種別、研究分野毎に、長期的にそのアウトプットや影響力を容易に追うことができるようになる、
4) 科学・技術政策の長期的な視点に立ったマクロ的分析にも有効に使える、
などのメリットがあると考えられます。

また、申請書・報告書に関しての会合が6月4日にありますので、ご意見などあれば、よろしくお願いいたします。
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2010/04/17

研究費申請書・報告書の簡略化の具体案

Tweet ThisSend to Facebook | 固定リンク | by:tmiyakawa
神経科学者SNSからの提言とそのマスコミによる報道、さらに大阪での会合の影響もあってか、事務的な無駄を排除して効率化する方向で具体的に動いていただくことができるかもしれない状況になってきました。行政にたずさわる方々がチームを作って、複数年度予算の導入、使途の弾力化、競争的資金の使用ルールの統一化、申請書・報告書の簡略化・統一化などなど、研究費の効率的予算措置の検討をしてくださる可能性が出てきたようです。

このような動きの一環として、文科省の方より研究費の申請・報告のシステムについての意見を聞いていただいており、現在、自分の考えをまとめているところです。システムの改善について、現場の研究者の意見も聞いてくれるというのがうれしいですね。

以下に、現段階で自分が考えていることをメモ程度に記しておきます。もし何かご意見・アイデア・アドバイスなどありましたら、お気軽にコメント欄に記載していただければと思います。

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まず、具体案を考える前に、研究費の申請書・報告書の目的を考えてみます。

申請書については、1) 申請の研究計画の内容が適切か、2) 申請者がその研究を遂行するのに十分な能力を持っているか、3) その研究を遂行する環境にあるかどうか、4) 研究にかかる経費の内訳が適切かどうか、について第三者が判断しますので、これらの関する情報が記載されている必要があるでしょう。

報告書については、1) 当該の研究費によってどのような成果が得られたかを、国民に報告・説明する(「国民」には当然、他の研究者や官僚も含むが、主たる対象は研究費の出資者である国民)、2) 研究費をどのように使用したかについての記録を残すことにより不正使用を防止する、という意味があると思われます。

 以上の目的を達成できることが第一に重要であると考えられますが、これが達成される範囲内でムダを最大限省くことが次に大切なことでしょう。このムダには印刷費、印刷物の保管・管理・廃棄などの目に見えやすい経費に加え、事務員や研究者の人件費・時間の目に見えにくい(がしかし莫大な)コストがかかっていると考えられます。このコストはすべて貴重な税金から支払われています。つまり、上の目的を達成できる範囲内で、1) 申請書・報告書の欄の数、紙面のページ数、提出の頻度、書式の種類などはできるだけ減らす(Reduce)、2) 同じ内容・情報についてはできるだけどこか一ヶ所に記載・アップデートしておくだけでよいようにして様々な申請書・報告書・データベースなどではその情報を再利用し重複は可能な限り避ける(Reuse・Recycle)、という書類情報3Rの原則を基本にすることによるコスト削減を目的とすることを、申請書・報告書の改善の議論の上でのコンセンサスにするとよいのでは、と思います。

 次に、この書類情報3R原則にもとづいて、研究費の申請書・報告書の改善案と、それに必要な各種システムの改訂や連携についてかなり具体的に考えてみます(以下、主に文科省科研費のフォームを念頭において書いています)。

 
全般的な改善


・ 研究費は基本的に複数年度予算制度とする。従来型の報告書は基本的には中間報告と最終報告だけにする(3年以内のものは中間報告はなし)。年度ごとのものは廃止し、論文発表ごとに短くできるだけわかりやすい日本語の説明をネット上のシステムに掲載。

・ 省庁横断的に申請・報告書のフォームなど、できるだけ統一を目指す。

 
研究費申請書

・ 研究費申請書の表紙PDFファイル作成サイトを作る(「確定申告コーナー」のようなシステム;省庁横断的であることが好ましい)。この表紙作成サイトでは、申請書の表紙部分の基礎情報(所属機関・部局・職)について、研究者番号を入力すると自動的にRmapまたはe-RadまたはReaD(以下、「3R」と呼びます;これまた3Rでややこしくてすみませんが)などから必要な情報がフィードされるようにする。

・ 「研究業績」、「研究略歴」の欄は廃止する。審査用Webサイト中に、3Rのどれかでの当該研究者のURL(申請書中の科研費研究者番号から自動的にフィード)が出てきてクリックすると経歴と業績を見ることができるようにすればよい。この場合、URLへのリンクが切れていたり、内容がアップデートされていないと問題なので、そこをどうするかについて検討は必要。「申請した研究に関連する重要な研究」については、どう表現するか。また、「研究代表者に下線」というのにはどう対応するか(RmapでPubmed、CiNiiなどからのインポート時に自動的につくようにしていただく?)。「連携研究者」についての業績についても名前と研究者番号のみの記載にする(審査用Webサイト中にその人の3R内のURLへのリンク)。

・ 「研究費の応募・受け入れ状況・エフォート」欄も廃止。3R(おそらくこれはe-Rad)内の対応する部分のURLが審査用Webサイト中に出てくるようにする。eRadには既にこの情報が集約済なはずなのでこの欄の記入は重複作業となる。

・ 「これまでに受けた研究費とその成果など」の欄も廃止または削減。これまでに受けた研究費についてはe-Radか科研費DB(省庁横断的なので、おそらくe-Rad)に集約(研究成果と中間・事後評価も含める)しておき、それへのリンクが審査用Webサイト中に掲載される。

・ 「研究施設・設備・研究資料等、現在の研究環境」について。当該の研究者がこれまでに研究費で購入した高額備品・資料についても3R中のどこか (eRadか?)に集約しておく。Rmapにも「研究施設・設備・研究資料等、現在の研究環境」という欄があっても良いかもしれない。審査用Webサイト中に3R内のこの項目へのリンクをはる。これにより、購入申請している高額設備・備品の妥当性の判断材料になるだけでなく、その高額備品を使いたい人が検索して共同研究の依頼をするのも容易になる。「高額備品」の基準は、どの程度が妥当か(100万円、300万円、500万円以上くらいか?)。

・ 「研究計画・方法」で年度ごとに計画を書くのはムダ。研究、特にボトムアップのではものは2年後、3年後のことは予想がつかないことが多い。チャレンジングな研究に関しては、いつ頃見つけたいものがみつかるかは予想が困難。予定していた研究の途中での意外な発見などにより、計画を大幅に変更したほうが良い場合もかなりある。

・ 「研究経費」の年度ごとの記載とその使用内訳は必要か?必要であるとすればなぜか?必要である場合も、高額備品と人件費だけでよいのではないか。消耗品や旅費についての申請にほとんど意味はないのでは。研究の進展により、フレキシブルに研究打ち合わせの旅費が使えるほうが良い。JSTのCRESTなどの場合、内訳の内容が精査されアドバイスがもらえることがあるので意味があるかもしれないが、科研費の場合、アドバイスや意見がもらえることは皆無に近いので、ほとんど意味がないのでは?

・ 所属の部局ついての「現有設備」については、各申請者がこの内容を小さい欄にまとめるというのは適切ではないであろう(欄に書き切れないのと、これをまとめるのは部局であるべき)。各機関の部局毎での主な高額共通機器・設備などのデータベースを設け、それへのリンクをはる形にすればよいのでは。部局毎の現有設備のデータベースを構築するのはかなりのサイズのプロジェクトになりそうであるが、高額機器の有効活用、共同研究の推進の意味でもあったほうが良さそうである。

 

研究費報告書

・ 収支決算報告書(C-6-1)については研究者が記載するべき項目は、皆無。これは所属機関の事務が行うべきものとして規定するべきであろう。

・ 実績報告書(C-7-1)は(論文が出ている場合は)不要ではないか。「研究発表」欄に相当する部分については、雑誌論文、学会発表(招待講演)、図書、産業財産権の各アイテムが発生した時点(論文発表時など)で、3Rのどれかのシステムにその情報を掲載する(年度末に、それがきちんと行われているかチェックされる仕組みはあったほうが良い)。情報は一元的に蓄積させる方式がよい。

・ C-7-1の「研究実績の概要」に相当するような部分については、論文が出なかった場合や論文になっていない部分について特筆することがある場合にのみ、e-Rad(?)の当該の研究費の欄にその概要を記載する。

・ 新学術領域研究などのグループ型研究では、個々の班員による報告書に加え、グループ全体の報告書の提出の必要がある。これについてもできるだけ作業が重複しないように努力する必要がある(下のほうの議論参照)。

 

科研費交付申請書(A-2-1)・交付請求書(A-4-1)・確認書(A-2-3)

・ これらはそもそも必要か?

・ 交付申請書の使用内訳については、もともとの申請書の総額に対して、実際の配分額の割合に基づいて、自動的に比例配分されるようになればよいのではないか?そもそも使用内訳が必要ない、ということであれば交付申請書自体も必要ないのではないか。

・ 交付申請書内の「研究の目的」「本年度の実施計画」はオリジナルの申請書と重複するので不要では。

・ 「主要な物品の内訳」については、審査や評価されるわけでもなく、不要でムダな情報ではないか。

・ 交付請求書・確認書は完全に形式的なもので、実質的な意味がない。申請時にこのプロセスに同意する形にして、廃止するべきでは。

 
以上を実現するために、RmapまたはReadまたはe-Rad(=3R)に実装されるべき機能

・ 3Rのどこかで、各論文アイテムに、それをサポートしたファンディングの情報(科研費の種類・番号など)、一般向けのわかりやすい400〜800字程度の要旨(、引用数情報)をつける。

・ 3Rに蓄積される業績は共通フォーマットで相互にインポートやエクスポートができるようにし、他のシステムやアプリケーションでも使えるようなデザインにしておく。

・ 要旨中で使用した専門用語の解説をWikipedia的なところに記載するように推奨する(既に専門用語解説がWikipedia的なところにあるものについては不要)。Rmapのキーワードについてのメタ情報を活用?

・ ScopusやWoS、ないしはGoogle Scholarなどと連携し、各論文アイテムには引用数がフィードされるようにする。ScopusやWoSには、「名寄せ」情報がない(同姓同名問題がある)ので、その情報を与えるかわりに引用数をもらう。

・ 3Rからの業績情報は誰でも簡便に取得できるようにしておく(Rmapでは現状でもこれがかなり簡便にできるようになっている)。大学などの機関や部局の評価に関する報告書については、機関の事務系職員ないしは評価機関がこれらの情報を用いて準備するようにする。研究者は機関評価のための報告書作成には原則的に関わらない、ということで済むようにする。新学術領域研究などのグループ型研究の報告書も同様な方向(=個々の研究者はできるだけ関わらなくて済むような方向)で作成する。


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最後にもう一つ。これは少し毛色の違う案ですが、研究計画の記載の必要すらもない、これまでの業績に連動して額が決まる基盤的研究費の導入も期待したいところです(神経科学者SNSの提言にもあります)。現状の文科省科研費の審査は、事実上、これまでの業績の評価が大きなウェイトをしめていますので、この部分を独立させると良いのでは、ということです。この基盤的研究費は自由な研究に使えることにすれば、「目的外使用」を気にする必要もなく、他の研究費との「合算による使用」など弾力的に使えることにもなりますので、いろいろなことがたいへんやりやすくなります。
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2009/12/17

多次元ブレインストーミング

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生理研の吉田明先生に頼まれて、「多次元ブレインストーミング -物質と情報をつなぐ20年後の脳科学-」という会の案内を掲載させていただきました。

将来脳科学関連分野を目指す大学生、大学院生を集めて、「物質からどのようにして情報が形成されるのか」という根本的な視点から20年後にはどのような脳科学研究が展開されているかについてのフリーディスカッション、20年後を夢見た議論を行う、とのことです。

なんかわくわくしますね。

最近、事業仕分けを受けて現実的に20年後どころではないという感もあり、私自身もすべてのムダを減らしましょうなどと主張しております。このご時世にそんな非現実的で非常にムダと思えるような会合を紹介するとは何事か、とお叱りを受けそうです。

しかし、そういう批判をされる方がいれば、私が普段使っている意味の「ムダ」をご説明する必要があるでしょう。頭をひねって最大限削減するべきムダというのは、本来科学者が行うべきでない事務作業とか、3年に一回しか使われない高額機器の購入とか、そういった類のムダのことです。

話がかなりとびますが、自分が修士課程に進学する直前の春休みに、アリゾナ州でAssistant Professorをされていた先輩のお宅に2〜3週間ホームステイをさせていただく機会がありました。そこでは様々なことが目的志向的にオーガナイズされていて、何もかもが効率的に動いているように見えました。例えば、日本では実験プログラムとかは学生が自分でプログラミングしており、そのプログラミングをすることにむしろ時間が割かれてしまっていて実際の研究はそれほど進んでいないことが多かったのですが、そこではインド人などのプログラマーたちが雇用されていて、先生は研究自体・実験自体のことを考えることに集中することができていました。先生のご自宅にはプールがついていたのですが、先生は「研究者にとっては、プールでのんびりと水の上に浮かんで、いろいろと想像をめぐらせたり自由にものを考えたりする、というようなことが大事」というような主旨のことをおっしゃっていました。自分は昔は週100時間を超えるくらい働いてしまう学生だったのですが、そのお話を聞いて以来、なんとかできるだけすべてを効率化することによって、そういった想像を巡らせる余裕とか自由にものをゆったりと考える時間、時間を気にせず人と議論をすることができるような時間が少しでもとれるように工夫をしてきました。もちろん日本の家にはプールはありませんので、三四郎池のまわりをぐるぐる回るとか、吉田山を越えて真如堂まで歩く、とかで代用してきたわけですが。そういうことが今の自分の研究活動の根幹の一部を作ってきたのは間違いないです。何が言いたいかといいますと、研究者にとっては、一般の人がはたからみて一見ムダにみえるようなことがムダであるどころか本来の中心的・本質的な仕事でもある、ということです。研究者にとって本当にムダで排除するべきものと、一見ムダに見えるが実はムダでないものを峻別することが大事ということです。

ということで話を元に戻すと、こんなときだからこそ、ゆったりとした気持ちに気分をスパッと切り替え、20年後を夢見た議論を行うことは意義のあることでしょう、ということですね。研究費が削減されても、20年後の科学を想像したり議論したりすることは死守することが大切。

自分は残念ながら出張で出席できません。プログラムを拝見すると、多少詰め込みすぎの感もないではないですが、話題提供者の先生方は、夢の議論に火をつけることができるでしょうか?参加者のみなさんが良い夢をみることができればいいですね。

参加される先生方、
I want to challenge you to use your love and knowledge of science to spark the same sense of wonder and excitement in a new generation.


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2009/11/23

ムダを減らすことはできないだろうか

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事業仕分けが私たち研究者に波紋を投げかけています。仕分け人の方々の質問や結論が的を外しがちであったということは問題としてあるものの、こういった予算についての議論がオープンにされたことは非常に画期的で素晴らしいことであるのは間違いないと思います。
私は多数の学会や関係機関・団体より、予算を減らさないで欲しい旨の意見を文科省や総合科学技術会議に送ることを促すメールをいただきました。予算を減らさないでいただきたいのはやまやまなのですが、事業仕分けにおいての私たちへの基本的な問いをよく考えてみますとそれは、「ムダは無いのか、効率化できることはないのか」ということであると思います。その仕分け人の方々の個別の指摘に関しては適切とは言えないことがかなりあったと思いますが、研究者側の対応として、問いかけの核心の主旨には答えずに、個別の件に単純に反論して予算を減らさないようにして欲しいという姿勢については私は少し違うのではないか、と感じるわけです。
といいますのは、私がアメリカでの5年間の滞在の後に日本に帰国して以来、日本の研究システムにはなんとムダが多いことか、と強く感じてきたからです。

「ムダはないですか」という問いが主旨なのですから、「申しわけありません、確かにムダはありますので、改善する努力をいたします。しかし、重要なxxxやyyyの予算は減らさないでいただきたい」という姿勢で答えていくのが本道なのではないでしょうか。

ずばり、日本の研究業界のシステムにはたくさんのムダがあり、膨大な額の貴重な税金をムダに浪費している側面があると断言します。以下に私が思いついたものをリストアップしてみました。


・単年度予算の制度が巨額のムダを生んでいます。使い切らないと次年度減額される、ということで、不要なものを購入したりするわけです。その年度の予算にちょうどピッタリ合わせるように会計を一生懸命考える労力も多大なものでばかになりません。不正な研究費の プールが問題にされていますが、納税者の立場からすると自分がおさめた税金ができるだけ効率的に使われて欲しいと思うわけで、年度末の不要な物品の購入を促進するような制度そのもののほうが遥かに不正であるように感じます。

・先端的機器や輸入に頼らざるを得ない消耗品(抗体やキットなど)を北米・欧州から日本に輸入する場合、日本では間に輸入業者さんが入り高額のマージンを 取る、という日本特有の商習慣があります。この円高のご時世ですら、なんと、円ドルレート200〜300円 /ドル程度が普通に生じています。この排他的契約を持った輸入業者とさらに納入業者が間に入ります。先の大学向けの補正予算では、その多くが海外からの高額機器購入に使用されたと推測しますが、例えば、この円ドルレートを1.5倍程度(現在であれば135 円/ドル程度)を上限にするように規制を儲けるだけで莫大な額のセービングができるはずです。また、可能な場合は大学・研究機関が直接海外の製造元から購入するべきです。

・お古になった高額機器を全国レベルでオークションにかけるシステムを導入するべきです。私が以前訪ねた国内のお金持ち研究室では最先端の高額顕微鏡を 1〜2年毎に買い替えていらっしゃいました。ベンチに顕微鏡がずらりと並ぶわけですが、基本的に使っているのは最新のもののみ。最先端のすごい業績を出している研究室は最新の顕微鏡を常に持っていても良いとは思います。一方で、独立したての若手や裕福でない地方大学の研究者などにとっては、お古でもたいへん有り難いのです。使われなくなったお古は国内で有効利用されるべきでしょう。

・高額機器・高額設備は、できるだけ共同で使用するようにすべきでしょう。一部の裕福な研究所・研究室などでは、高額機器が多数設置されている一方で、回転率が悪くほこりをかぶっているようなものが多数あるという状態です。機器の共同使用によって回転率を上げることは、高額の機器が有効に使用されるようになるだけでなく、使用者間の情報交換などにより機器が使いやすい状態に保たれ、より容易に使用できるようになるという効果もあります。

・上の点と関連しますが、機関間の共同利用・共同研究を行いやすくするシステム・制度を拡充するべきだと思います。手前ミソになりますが、私たちの研究室では遺伝子改変マウスの「網羅的行動テストバッテリー」というシステムを用いて国内外の多数の研究室(80以上)と共同研究を行うことにより、独自の研究資源を効率的に活用することに成功しています。また、この種のものを効率的に推進するためには、研究室間、大学・研究機関どうしの研究費のやりとりを容易にするシステムが不可欠ですが、現在、これがありません。これは早急にトップダウン的に整備されるべきだと思います。

・各種の研究費の申請書・報告書に記載する情報には重複する部分・内容がたいへん多い一方で、それぞれの書類のフォーマットが大幅に異なっていることがムダを生んでいます。例えば、たいていの申請書にはその人物の研究分野、経歴、業績リストを記載するわけですが、この様式がそれぞれ異なっており、記載時、事務処理時のチェック、審査時に無用の労力を必要とすることになります。公的な研究費や民間のものも含め、これを統一することによって大幅なムダが省けることになるでしょう。これについては、まさにこのresearchmapのようなものを公的にデファクト・スタンダードのものにすることが良いのではないでしょうか。Researchmapの情報を常に最新のものにアップデートしておきさえすれば、研究者番号を申請書・報告書に記載するだけで良いということになれば、たいへん便利でムダが省けます。また、人事の公募時も各機関がそれぞれの様式のCVを要求することがありますが、これもresearchmapでの記載を要求するだけにする風潮が広まればムダに若手の労力を消費することがなくなり良いと思います(今の若手はたくさん公募に応募しなければいけませんので、この労力は無視できません)。

・研究費の報告書は、大幅削減か廃止すべきだと思います。まず、論文自体がそもそも究極の報告書になっているわけです。論文はオープンアクセスにすれば一 般の人も読むことができるようになりますので、少し高くついてもできるだけそのようにするべきです。一方、従来型の報告書はほとんど誰も読まない代物です。これのかわりに、発表した論文についてweb上でタイトル・アブストラクトとともに、一般の方々むけの簡単な日本語の解説をつけて公開し、 googleなどの検索エンジンでひっかかってくるようにする、というのが実質的で良いのではないでしょうか。特定領域統合脳の報告書については、Neuroinformatics Japan Centerが開発しているXooNIpsというシステムを使ってこれに準ずることを行っています。また、論文で発表した内容や関連する専門用語について Wikipediaかそれに類するものに解説を書くことを義務化する(その用語が未登録の場合)、ということも良いと思います。アメリカのSociety for NeuroscienceではWikipedia Initiativeを推進しているわけですが、そのようなことを日本でもやるのが良いと思います。

・実際の仕分けでも出てきましたが、研究費の種目について。現状では一つ一つが小さく、たくさん申請書・報告書を書かなければならずムダです。研究内容毎に申請書を書いているというよりも、一つ一つの研究費ではたりないのでたくさん申請書を書いているのが実体だと思います。これにより研究費取得に割かれている ムダな労力を削減することができます。ということで種目をシンプル化するということには賛成です。採択率が10%の種目があれば、90%の申請にかかった 労力はムダであったということですが、申請や審査には研究者の人件費がかかっている、ということを認識するべきであると思います。不採択に終わったときの徒労感も潜在的なムダと言えます。不採択の申請に要している労働力・心理的負担・費用は、潜在的な「埋蔵金」と考えることもできるでしょう。あと、申請書を書く必要 のない安定した後付けの基盤的研究費(過去の研究成果を反映した研究費)を創出するとさらにムダな労力を省くことができるように思います。研究費が「当たる」と か「外れた」というような言葉で一喜一憂するわけですが、もう少し安定したもの(評価に連動して額が決まり、all or noneにはならないようなもの)があったほうが良いと思います。

・日本には「出来レース」の研究費の公募というのがあるようです。トップダウン的に特定の研究を遂行するグループを決定する、という具合にしたほうが良い場合は確かにあると思います。その種の研究をアクティブに行っている研究室は日本では一つしかないかもしれませんので。しかし、その場合にはトップダウンで決めました、ということに公にすれば良いわけで、公募にしてムダな労力を多数の研究者に費やさせる必要はないように思います。「出来レース」の公募は大きなムダをうみますので、ぜひ廃止して欲しいです。トップダウンで決めるものは決めるもの、公募は公募、という実態にあった分かりやすいシステムにすることが全体の効率性を上げると思います。

・大学図書館で紙媒体の雑誌を購読するのはできるだけやめる方向にいくべきだと思います。非常に高額なわりには必要性は大幅に薄れてきていると思います。 国会図書館のような少数のところだけで購読しておけば良いのではないでしょうか。電子ジャーナルの購読についても、大学・機関ごとではなく国として出版社と交渉し、機関の規模による格差を是正して欲しいです。

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皆様、限られた研究資源で最大のアウトプットがでるような最適な仕組みをこの機会に考えてみるというのはいかがでしょうか?他にも各種の事務処理手続きや、教育・研究の仕組みで改良できること、潜在的なムダ、潜在的な「埋蔵金」や「埋蔵労働力」はないでしょうか?研究費の総額が今後、減ったとしても増えたとしても、それが限られていることにはかわりないわけです。
不思議なことに事業仕分けはこういったことを私たちが考える絶好の機会を提供してくれたように感じます。

And so...,
My fellow Scientists: ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country.

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