基本情報

所属
東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系 / 先進科学研究機構 教授
学位
博士(学術)(2002年3月 東京大学)

連絡先
yajimabio.c.u-tokyo.ac.jp
J-GLOBAL ID
201201008865903221
researchmap会員ID
B000219662

外部リンク

リバースバイオエンジニアリングにより、生命システムの謎に迫る

生命システムを「エネルギー」「物質」「情報」を相互変換する生体高分子システムと捉え、そのシステムの本質的な役割を担う「バイオナノマシン(タンパク質)」「 バイオマイクロマシン(繊毛や細胞)」の動作・設計原理の理解、および、ホモキラルな生命現象の理解を目指しています。

我々人間は、月にまで行くことができるロケットを作ることができても、たった数十㎛のサイズの細胞一つすら作ることができていません。これは生命システムの理解の仕方がまだまだ不十分であることに他なりません。本研究室では、人工マシンとは異なる動作原理を有する可能性のあるバイオ(ナノ/マイクロ)マシンの基礎研究を基軸とし、主に生体高分子から自発的に構築される(特に動きや変形を伴う)人工細胞のプロトタイプの創製を目指すとともに、医療・工学への展開を探っています。

矢島研究室で一緒に研究(モータータンパク質・細胞骨格・軸糸・繊毛・紡錘体・繊毛虫・コアセルベート・人工細胞)を希望する方(学振PDへの応募も相談にのります)、広域科学専攻 修士/博士課程に進学希望の方は、上記メールアドレスまでご連絡ください。随時相談にのります。研究室見学も歓迎します。

矢島研からの最近の研究成果(責任著者のみ)

Matsuda et al. Cytoskeleton 2024                                                                                                                                                                      アクチン/ミオシン/アニリンからなる物理的分子ネットワークを自律的に形成・変化させ、細胞骨格系の力学機能の原理に迫りました。細胞骨格ネットワークの大変形にはアクトミオシン系の伸長・収縮力だけではなく、細胞骨格の切断が大きな役割を果たし、細胞スケールの高次機能を自己組織化しうるプラットフォーム機能の一端を示しました。

Sato et al. Scientific Reports 2023, Sato et al. BBRC 2024                                                                                                                               細胞形態の左右非対称性/ホモキラリティにかかわる"Myosin 1C"が、細胞膜をミミックした流動性のある脂質展開膜上で細胞骨格アクチンフィラメントをコークスクリュー様運動(アクチンの長軸に沿って並進運動させつつ、長軸周りに回転運動させる)をさせる性質が備わっていることを明らかにしました。細胞や組織の形態のホモキラリティが決まる力学的分子機構の解明の手掛かりになる可能性があります。                                       

Sugawa et al. Communications Biology 2022                                                        4次元(xyzθ)単粒子トラッキング光学顕微システムにより、”キネシンチーム"が細胞骨格微小管上を螺旋運動(Yajima&Cross. Nat. Chem.Biol. 2005)するばかりか、予想外にも自転(上下軸方向の回転、ヨーイング)運動をすることを初めて明らかにしました。キネシンが結合した金ナノロッドが微小管上で自転しつつ螺旋運動する現象をノイズで駆動されるラチェット機構によってモデル化しました。自転する分子機構は未解明です。

Yamagishi et al. Scientific Reports 2022                                             微小管のマイナス端方向にのみ進むと考えられていた”逆行性キネシン”(kinesin-14、教科書ではNcdと記載されることが多い)が、運動支点を変えることで微小管のプラス端方向に進む順行性キネシンにもなり得ることを明らかにし、キネシンの運動方向において通説とは異なる結果を報告しました。キネシンの運動方向を決定する分子機構は解明できていない謎の一つです。kinesin-5の分子数に応じて運動方向が決定する機構(Yamagishi et al. BBRC 2021)も謎です。

Yamaguchi et al. Scientific Reports 2022                                                           繊毛を構成するエンジンとなる”軸糸外腕ダイニン”が、微小管の長軸に沿って右巻き螺旋運動をすることを、3次元位置検出光学顕微システム(tPOT, Yajima et al. Nat.Struct.Mol.Biol. 2008)により明らかにしました。リニアモーターのトルク発生は、しなやかな繊毛運動とのかかわりが想像されますが、その関連性については不明です。

Marumo et al. Communications Biology 2021                                            低レイノルズ数の世界で生きる真核単細胞繊毛虫”テトラヒメナ”は、螺旋遊泳することが100年以上も前から観察されていましたが、錯視により右巻か左巻きかは判別がつきませんでした。3次元位置検出光学顕微システム(tPOT)により、右巻きであることを明らかにし、螺旋遊泳はCa2+によって制御されることを明らかにしました。繊毛虫の遊泳モデルの構築に大きく貢献できます。

Maruyama et al. Communications Biology 2021, Yamagishi  et al. Cytskeleton 2020                                                       細胞の中では、10nmほどのタンパク質からなるバイオナノマシンが働いています。人間が作るマシンとどことなく似ているようにも見えますが、その動く仕組みは似て非なるものです。細胞分裂期"kiesin-6"が微小管上を前後・左右方向に確率的にステップし、そのステップ方向にバイアスがあることを明らかにしました。人工マシンのようなステップ方向が決定的な機構とは異なり、kinesin-6のステップの左右性の選択には揺らぎが内在します。左右対称性を破り、一方向性運動を創発させる機構は未解明です。


論文

  28

書籍等出版物

  13

MISC

  1

共同研究・競争的資金等の研究課題

  24

社会貢献活動

  1