松浦 年男

J-GLOBALへ         更新日: 17/05/15 14:42
 
アバター
研究者氏名
松浦 年男
 
マツウラトシオ
ハンドル
yearman
eメール
yearmankyudai.jp
所属
北星学園大学
部署
文学部 共通科目部門
職名
准教授
学位
博士(文学)(九州大学)
科研費研究者番号
80526690
Twitter ID
yearman

プロフィール

中学時代は英語が苦手で苦しんでいました。ただ,ALTが「なぜ日本では大晦日にそばを食べるんだ?」と質問したのに対して「日本人は長生きしたいと願っていて,麺が長いというのと掛けている」という主旨のことを言って通じたのでそれを嬉しく思ったのを覚えています。その後,高校に入ってから,「自分は英語が好きなんだ」と思い込むことにして勉強したところ成績が上がり,楽しく勉強できるようになっていきました。高2で進路を考えていたとき,中学のときのALTとのやりとりを思い出し,調べていったところで日本語教師という職業を知り,これにしようと考え,大東文化大学の外国語学部日本語学科に行きました。

そこで2年次のときに,言語学概論の授業を受けました。そこではスティーブン・ピンカーの『言語を生み出す本能』をベースに授業をしていました。授業の初回で先生が「言語は本能」と言っていたのに対し,え?日本語独特のものはたくさんあるでしょ?(今にして思うとほとんどが音と意味の恣意性に関わる話)と,激しく違和感を覚え,授業後に意見しに行ったところ,「まあまあそういう側面もあるけどね。本質は違うんだよ」という答えられ,とりあえず受けていくかと授業を聴いていたら,音韻論が分析的(パズル的)で面白いと感じ,さらに統語論で使役文の樹形図を見てすごい!と感動したあたりからはまっていきました。3年でゼミに入ったときには日本語教師志望から変わり,卒業後は大学院に進学することにし(日本語教師志望のときから就職のことを考えて院進学するつもりではいました),授業以外でも先生について行って様々な研究会や学会に参加していました。

学部卒業後は九州大学の言語学講座に進学しました。そこではそれまでほとんど勉強してこなかった統語論や意味論を中心とした理論言語学,心理言語学,歴史言語学,言語獲得研究,日本語史研究に触れ,授業だけでなく様々な勉強会,研究室での雑談,飲み会での言語談義で鍛えられたなあと思います。

学部,修士時代は,上海語を対象にして特に分節音の諸問題を扱ってきました。上海語は学部時代の同級生に上海からの留学生がいて,彼女の方言についてまとまった記述がまだあまりなかったのが動機です(今考えると,中国語能力が低くて探しきれなかった)。最初はトーンをやろうと思っていたのですが,分節音について色々と調べて整理するうちに,当時の指導教員だった早田先生と,母音音素を少なく設定できるのではという話で(年末年始にメールで)盛り上がり,それを中心的なテーマにして卒業論文と大東文化大の紀要を書きました。修士も継続して上海語のこと続け,M1の終わりに1カ月ほど上海に行って調査をしたものの,どうにも中国語(普通話)の能力が低く調査もあまりうまく行ったとは言えませんでした。そのままうだつの上がらないまま2年間が終わりました。M1の終わりに集めたデータを使ってどうにかこうにか書いた修士論文では,上海語の分節音韻論を一から見直し,それを素性階層と不完全指定を使って理論的ぽく記述しました。修士で身につけたのはTeXの使い方が一番かもしれません。それぐらいうまく行ってない時代でした。

博士課程に進学してからは,修士論文の一部をもとにした論文を書いただけで上海語は一切やめ,長崎県の島原方言に見られる音調現象(アクセント)について取り組みました。これも母語話者が研究室の先輩にいて(このパターン多すぎ),当時やっていたアクセント勉強会でその方を対象にした簡単な調査をしたところ,予測されたとおりにならないというのが出てきたのがきっかけです。これを色々な学会で発表したところ評判もよく,自分自身でも面白いと思え,まさに「当たり」を引いた感じがしました。その後,現地にも赴き調査を重ねていきました。その成果をもとにトロント大学での国際学会(International Conference on East Asian Linguisitcs)で発表できたのは後のことを考えると大きいことでした。その後,長崎市内に調査地を移しました。そこで協力的な話者に出会うことができ,調査も,場合によっては日帰りでほぼ毎月1-2回行うことができたので,非常勤を4つほど抱えていた身としては大変助かりました。内容はほとんどが島原での調査の再認でしたが,まとまった量を集めることができました。島原,長崎での調査では,複合語と外来語を手がかりに様々な語種の音調現象に関わる規則性を記述していきました。そしてその成果を博士論文にまとめました。

さらに,博士課程では当時同じ研究室で院生だった村岡くんと共同で,文の即時理解におけるプロソディーの機能について実験を行いました。それまでも文の即時理解に関する研究や,文の解釈にプロソディーがどう影響するかに関する研究はあったのですが,(少なくとも日本語を対象にした)即時理解におけるプロソディーの影響を調べたものはありませんでした。この研究では,心理言語学の方法を実地で勉強することができ,また,音韻論・音声学以外の研究者とのつながりを持てたことが非常によかったです。私の就職とほぼ同時期に共同研究は一区切りつけたのですが,現在もこのトピックについては関心を持っており,少しずつながら続きを始めています。

さて,博士論文を提出してから一年間ポスドクとして言語運用総合研究センターに所属し,その後,北星学園大学に赴任しました。2010年度より科研費をいただき,熊本県の天草島に分布する方言に関して同様の調査を開始しました。この地域には長崎と鹿児島の両方の性質を持った音調が分布しており,記述的にはもちろん,理論的,歴史研究的にも様々な影響があるのではないかとにらんでいます。現在このプロジェクトは五十嵐陽介さん(広島大)と共同で進めています。

これと同時期に,福岡方言のイントネーションと統語構造のインターフェイスについても調べ始めました。こちらについてはちょっと後手に回っていますが,予備実験ではかなり面白い現象が見つかったので早いところ本格的な実験ができればと考えています。

また,2012年ごろから促音の音声実現における地域差に関する調査も始めました。標準語の促音は直後が清音に限られることが多く,濁音は外来語に限られます。外来語でも促音の後の濁音が清音になる(バッグ→バック)という変化があるなど,安定しない音環境でした。また,音声実現を見ても促音+濁音の狭窄区間には声帯振動がほとんど見られません。ところが,天草方言や鹿児島方言では促音+濁音を外来語のみならず和語・漢語に持ちます。これらの方言での促音の音声実現は標準語と同じなのか疑問に思い調査を始めました。幸いこれも2013年度より科研費をいただき調査を進めており,天草以外に山形県での調査を行っています。

ちなみに,北星学園大学では学部1年生を対象とした日本語表現(文章表現)の授業を受け持っています。こちらでは,初年次における文章表現教育について試行錯誤しております。教育は実践の積み重ねが重要だと考え,実証的に成果を示すことよりも,とにかく良さそうと思ったものを探してきては自分の授業において実践しています。2014年からは自分で決めたテーマに関するレビュー論文を書かせることを試みています。これは論述型の執筆ではどうしても自分が出過ぎるので,一度自分から離れる離れることを意図しており,その点ではうまく行っているところはあるのですが,ちょっと学生には負荷が高めなようで,改善の余地があります。ちなみに2016年の春にこのテーマで論文を出しました。

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研究分野

 
 
  • 言語学 / 言語学 / 音声学,音韻論

経歴

 
2013年4月
 - 
現在
北星学園大学 文学部 准教授
 
2009年4月
 - 
2013年3月
北星学園大学 文学部 専任講師
 
2007年4月
 - 
2009年3月
九州大学 専門研究員
 

学歴

 
2000年4月
 - 
2007年3月
九州大学 人文科学府 言語・文学専攻 (言語学専修)
 
1996年4月
 - 
2000年3月
大東文化大学 外国語学部 日本語学科
 

受賞

 
2014年12月
金田一京助博士記念賞
 

書籍等出版物

 
長崎方言からみた語音調の構造
松浦年男
ひつじ書房   2014年2月   ISBN:978-4-89476-681-5

論文

 
北海道方言における文末詞「サ」の分布と意味
松浦 年男・岸本宜久
北海道方言研究会会報      2017年
二型アクセント方言のイントネーション
松浦 年男
現代音韻論の動向:日本音韻論学会の歩みと展望   100-103   2016年9月
松浦 年男・佐藤 久美子
北星論集   54(1) 33-54   2016年9月
松浦年男・佐藤久美子
九州大学言語学論集   (36) 255-270   2016年3月   [招待有り]
松浦年男・田村早苗・石垣佳奈子・岡田一祐・高木維・吉村悠介
北星論集   53(2) 47-55   2016年3月
松浦年男
国立国語研究所論集   (10) 159-177   2016年1月   [査読有り]
天草二型アクセントの諸問題
松浦年男
筑紫日本語研究2014   51-59   2015年6月
五十嵐陽介,松浦年男
九州大学言語学論集   (35) 71-102   2015年3月   [査読有り]
大学初年次の学生に対する日本語語彙力調査の試行
松浦年男
北星論集   52(2) 53-61   2015年3月
松浦年男
「消滅危機方言の調査・保存のための総合的研究」八丈方言調査報告書   9-30   2013年10月
長崎方言における音調の音声実現:初期報告
松浦年男
大東文化大学日本語学科20周年記念論文集   156-166   2013年1月   [招待有り]
松浦年男
「消滅危機方言の調査・保存のための総合的研究」宮古方言調査報告書   111-126   2012年8月
長崎方言におけるアルファベット関連語彙の音調
松浦年男
音声研究   16(1) 105-118   2012年4月   [査読有り]
長崎方言における語音調の対立
松浦年男
音韻研究   (12) 31-38   2010年8月   [査読有り]
松浦年男
九州大学言語学論集   (30) 29-58   2009年12月   [査読有り]
松浦年男
Journal of East Asian Linguistics   17(4) 381-397   2008年12月   [査読有り]
長崎方言における人名のアクセント型
松浦年男
言語の研究−ユーラシア諸言語からの視座−(語学教育フォーラム)   (16) 405-421   2008年10月   [招待有り]
二種類の韻律情報が文の一時的曖昧性の解消に及ぼす影響
村岡諭,松浦年男,坂本勉
音韻研究   (11) 19-26   2008年3月   [査読有り]
長崎方言における例外的複合語アクセントの生起条件
松浦年男
音韻研究   (11) 11-18   2008年3月   [査読有り]
The Effect of Pitch and Pause in Processing Relative Clauses in Japanese
Satoru Muraoka, Toshio Matsuura, Tsutomu Sakamoto
Communicating Skills of Intention   239-255   2007年2月   [査読有り]
Satoru Muraoka, Toshio Matsuura, Tsutomu Sakamoto
Journal of Cognitive Science   7(2) 115-137   2006年12月   [査読有り]
日本語統語解析における顕在的韻律情報の影響
村岡諭,松浦年男,坂本勉
音韻研究   9 75-82   2006年4月   [査読有り]
Two types of compound tone in Shimabara Japanese
松浦年男
音韻研究   (9) 67-74   2006年4月   [査読有り]
統語解析時の再分析における顕在的韻律情報の影響
村岡諭,松浦年男,坂本勉
音韻研究   57-64   2005年4月   [査読有り]
島原市方言における複合語音調の中和と外来語音調
松浦年男
音韻研究   (8) 49-56   2005年4月   [査読有り]
上海語の言葉遊びに見られる個人差と音節構造
松浦年男
九州大学言語学論集   (23) 23-33   2003年11月   [査読有り]
早田輝洋,松浦年男
大東文化大学紀要(人文科学)   (39) 127-134   2001年3月

Misc

 
方言の危機を考える ~世界の言語と北海道方言~
松浦 年男
道民カレッジ「ほっかいどう学」大学インターネット講座 補助教材      2016年11月   [依頼有り]
アクセントにも地域差
松浦年男
北海道新聞(文化欄)      2014年12月   [依頼有り]

講演・口頭発表等

 
イッド(一度)にロッゴー(六合)? 語根融合における音韻制限の多様性
松浦 年男
日本言語学会第154回大会   2017年6月25日   
北海道方言における文末詞「サ」の分布と意味 [招待有り]
松浦年男・岸本宜久
北海道方言研究会第216回例会   2016年2月14日   
長崎・天草方言における統語構造と韻律構造の写像関係 [招待有り]
松浦年男
キックオフワークショップ 「語のプロソディーと文のプロソディーの相互作用」   2016年1月10日   
大学初年次の文章表現教育における「レビュー論文」作成の試行
松浦年男・田村早苗・石垣佳奈子・岡田一祐・高木維・吉村悠介
日本リメディアル教育学会第11回全国大会   2015年8月29日   
Where lexical distribution meets phonetic realization: Closure voicing of voiced obstruent geminates in two Amakusa Japanese dialects
MATSUURA, Toshio and Francis Michinao Matsui
GemCon 2015   2015年8月12日   

担当経験のある科目

 

Works

 
「言葉」で問う日本の危機(北海道新聞社、高校生はこれを読め!)
2010年9月

競争的資金等の研究課題

 
日本学術振興会: 科学研究費基金助成金
研究期間: 2013年4月 - 2017年3月    代表者: 松浦年男
文部科学省: 科学研究費補助金(若手研究(B))
研究期間: 2010年4月 - 2013年3月    代表者: 松浦年男