共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2024年3月

ドイツにおける倫理・道徳教育と学力形成との関係をめぐる実証的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)
  • 濱谷 佳奈

課題番号
19K02771
体系的課題番号
JP19K02771
配分額
(総額)
4,420,000円
(直接経費)
3,400,000円
(間接経費)
1,020,000円

本研究は、ドイツの学校教育に注目し、多様性を包摂する「倫理・道徳教育」と「学力形成」をめぐる構造とその意義を解明することを目的としている。
2020年度は主として文献調査を中心に研究を進めた。研究成果としては、第一に、学校教育において「多様性」がどのように捉えられているかを検討した。具体的には、「多様性を尊重」する教育の観点から、ドイツの実践哲学科コアカリキュラムと教科書を日本の学習指導要領や教科書と比較して分析し、ドイツでは「個々の多様性の根拠を問い、合理的な行動を取ること」を重視していることが確認できた。
第二に、社会の「多様性」への応答として、宗派別の宗教科が分化する潮流と、世俗的な倫理・道徳教育を重視すべきとの主張とが存在しているところが、ドイツの倫理・道徳教育の現在の姿である。各々の「信仰」を志向する諸州では、信仰や世界観の多様性が積極的に尊重された結果として、制度的には倫理・道徳教育の分化が進んでいる。それに伴って、教科間の連携や宗教・宗派間の対話がいっそう求められている。これに対して、「世俗主義」を志向する倫理・哲学科を連邦レベルで正規に導入すべきという意見も根強いことが明らかになった。
第三に、OECDの主導するコンピテンシー志向の学習観が、倫理・道徳教育を担う教科にどのような影響を与えているのかを検討した。二州の事例に焦点を当て、州憲法や州学校法、州のカリキュラムの分析を進め、伝統的な学力には含まれてこなかった社会面、動機面、意志面、道徳面等の非認知能力に対してどのように取り組もうとしているのかを整理できた。
以上の研究成果をさらに発展させ、次年度には倫理・道徳教育と学力形成との関係を検討していくことが課題である。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02771
ID情報
  • 課題番号 : 19K02771
  • 体系的課題番号 : JP19K02771