論文

査読有り
2015年

胚乳タンパク組成変異酒造好適米「華さやか」 : その特徴と酒質調節機能

日本醸造協会誌
  • 齋藤 知明

110
7
開始ページ
470
終了ページ
478
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.6013/jbrewsocjapan.110.470
出版者・発行元
日本醸造協会

清酒中のアミノ酸は原料米のタンパク質に由来し,味に関わる重要なファクターである。国税庁で規定する分析法では清酒のアミノ酸度は概ね1.0~2.0程度である。特に米だけを原料とする純米酒ではアミノ酸度が1.8~2.5程度と若干高くなる場合が多く,「味がくどい」と認識される原因となっている。このアミノ酸を減少させるため,原料米の栽培管理に特段の注意を払うとともに,醸造現場では,原料米の重量の40~60%程度まで高度精米することで,米の表層部に多いタンパク質を減らし,純米吟醸酒などのアミノ酸低減を図っている。しかし,このことは生産コストの上昇につながり,商品価格に反映されることから,「美味しいが値段が高い」として消費拡大の障害となっている。一方,清酒の消費動向は減少傾向が持続しているが,タイプ別の内訳をみれば純米・純米吟醸酒の製造量は増加している。このことは「アルコール添加されていない米だけの清酒」として安全・安心のイメージが消費者に定着していることによると想定されるが,依然として「味がくどい」「すっきり感が欲しい」との声は多い。清酒業界でもこのような「手頃な価格で美味い純米酒」を求める市場の声に応えるべく,研究開発を行ってきているが技術的には難度が高く,課題となっている。原料米の貯蔵タンパク質は主に胚乳中にタンパク質顆粒として蓄積され,難消化性タンパク質であるプロラミンを主に構成されるプロテインボディタイプI(PB-I)と易消化性タンパク質であるグルテリンを主に構成されているプロテインボディタイプII(PB-II)に分けられる。新形質米「低グルテリン米」はグルテリンの比率が低く,プロラミンの比率が高い米であるが,この米の性質を利用して,アミノ酸の少ない清酒の製造の試みが各地で行われている。青森県ではこの度,「低グルテリン米」とは異なる機序で難消化性タンパク質を胚乳に蓄積する酒造好適米「華さやか」の品種化に成功し,実用化に至ったことから,その概要について紹介する。

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DOI
https://doi.org/10.6013/jbrewsocjapan.110.470
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/120005866493
CiNii Books
http://ci.nii.ac.jp/ncid/AN10034389
URL
http://id.ndl.go.jp/bib/026624049
URL
http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010892945 本文へのリンクあり
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  • DOI : 10.6013/jbrewsocjapan.110.470
  • ISSN : 0914-7314
  • CiNii Articles ID : 120005866493
  • CiNii Books ID : AN10034389

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