共同研究・競争的資金等の研究課題

2017年4月 - 2020年3月

大阪漢学と近代企業家に関する研究―泊園書院と重建懐徳堂を中心として

日本学術振興会  科学研究費助成事業 若手研究(B)  若手研究(B)

課題番号
17K18250
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
2,990,000円
(直接経費)
2,300,000円
(間接経費)
690,000円
資金種別
競争的資金

当該年度の研究では、泊園書院出身の「企業家」のうち、備前国児島地方の地主に注目し、彼らの思想および実践の連関性を考察するとともに、総理府賞勲局編集の『紅緑藍綬褒章名鑑』および『紺綬褒章名鑑』を典拠として、泊園門人を輩出したイエの成員のうち、褒章を受章した者の業績を調査し、その全体像の把握に努めた。
明治期に活躍した泊園門人の星島謹一郎と中野寿吉は、地元の銀行業、鉄道業、紡績業の企業運営に関与する実業家であったが、星島は港湾建設や干拓事業、中野は学校設立や紛争調停に関与するなど、ともに地域の利益にかかわる活動に情熱を傾けている。また彼らは戸長村長もしくは地方議員としても活躍しており、星島は国政進出、中野は政党支援を行うなど、ともに政治家としての一面を持っていた。
しかし、彼らの漢学に対するスタンスは微妙に異なっており、中野の場合、漢学を学問として捉え、それを踏まえたあるべき社会秩序を構想し、実際にも自己を含めた組織の統治強化に役立てる一方、星島の場合、地元名士たちと交流する際の趣味として漢学を捉え、またそのことによって事業活動に不可欠な社会結合や情報交換の場を獲得していたと考えられる。
また、泊園門人を輩出したイエの成員には、①緑綬褒章(実業精励)、②藍綬褒章(公益振興)、③紺綬褒章(公共寄付)の受章者が多数いたが、このうち③の合計受章数が上位7家にランクするイエに注目すると、7家中4家は①も受章しており、「実業家」かつ「篤志家」タイプが多かったことが確認できる。さらに彼らの寄付先を見ると、恩賜財団済生会・日本赤十字社・関東大震災関係が最も多く、次いで彼らの出身地もしくは活動地における教育・医療・治水事業などが多数見受けられた。

ID情報
  • 課題番号 : 17K18250