2015年12月
自尊感情と排斥感の関連についての心理生理学的研究-サイバーボール課題を用いた検討
看護学統合研究
- ,
- ,
- 巻
- 17
- 号
- 1
- 開始ページ
- 1
- 終了ページ
- 9
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- 広島文化学園大学看護学部
様々な社会的状況下で経験される社会的排斥は,自尊心などの基本的欲求を脅かすとともに,個人の日常生活にネガティブな影響を及ぼす。排斥に関する神経科学的研究は増えてきているものの,事象関連脳電位(event-related brain potential; ERP)を用いた研究は比較的少ない。実験的な排斥研究においてよく用いられるものにサイバーボール課題がある。この課題は実験参加者が仮想の他者2人とコンピュータの画面上でボールトスゲームを行うものであり,参加者へのトスを操作することにより他者による排斥の影響を検討できる。この課題は性質上,排斥による効果と同時に予測との不一致による効果を生じる可能性がある。本研究の目的のひとつは,ERP 成分の1つであるフィードバック関連陰性電位(Feedback-related negativity; FRN)に反映される効果について検討することであった。他方,自尊心と社会的排斥感との関連性が示唆されている。FRN を用いてこの関連性を検討することも目的とした。 自尊感情得点に基づいて分けられた,自尊感情高・低群それぞれ8名ずつの参加者について,サイバーボール課題遂行中のFRN を記録した。結果は,FRN が予測との一致性ではなく他者からの受容や拒絶に対して敏感であることを示し,排斥研究におけるFRN の利用可能性を示した。しかし,本実験で観察されたFRN は従来の結果とは異なり,拒絶試行ではなくむしろ受容試行で大きな電位を示した。実験で用いた自尊心低群の参加者にとって他者から選択されることが期待に反する結果であった可能性が考えられる。
- リンク情報
- ID情報
-
- ISSN : 1346-0692
- CiNii Articles ID : 120005842946
- CiNii Books ID : AA11499896