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2023年3月

サイバーセキュリティ人材育成施策に関する動向と考察

  • 大手英明

発表場所
国際情報学研究第3号 中央大学国際情報学部

我が国では、特に 2015 年の政府関係機関が保有する個人情報の大規模な流出事案が発生して以来、サイバーセキュリティ基本法に基づくサイバーセキュリティ戦略の策定や関連法の改正を行って様々な人材育成施策を強化してきた。
本稿では、これまでの歴史的経緯や基本方針などの全体的な潮流を俯瞰したうえで、新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)による社会的影響や安全保障環境の変化も踏まえ、人材育成に関する実施状況を分析し、今後の人材育成に向けてどのような取組が必要なのか考察した。
これまでの歴史的経緯についてリスクに対する考え方などの内容ごとに整理した。具体的には、eーJapan戦略Ⅱ策定(2003年)以前の明確な戦略がなかった「黎明期」と、2003年から2008年の事前対策中心の「リスク・ゼロ志向の戦略期」、固定系ブロードバンドの世帯普及率が6割を超えた2009年から2012年の事後対策に重点をおいた「リスク前提の戦略期」、移動系ブロードバンドが固定系を超えてスマートフォン世帯保有率が6割を超えた2013年以降、対象を情報からサイバー空間に拡大して能動的な取組を盛り込んで今日まで続く「異次元戦略期」・「戦略改定期」の期に分けて、その特徴を記載し、それぞれ人材育成施策がどのように位置づけられていたか整理した。
昨今、サイバー攻撃による重要インフラサービスに障害が生じる事例や国家の関与が疑われる攻撃が生じる中で、ヒトとモノ両面の脆弱性の完全除去は困難でサイバー攻撃を完全に避けることは難しいため、攻撃後を想定してチームで的確に対処する能力養成の重要性は増すばかりであり、グループワークのあるリアルな演習の繰り返しが求められる。
さらに、今後、AI の進展やサイバー空間の社会への浸透がさらに進み、安全保障環境の悪化に伴う脅威はますます深刻化することも想定されることを踏まえ、社会インフラとなる機関における地道な演習・訓練の実施、好循環をもたらす資格制度の運用、若手人材の発掘・育成を粘り強く続けることが必要である。加えて、オンライン活用はニーズが高いが現行ツールでは制約された視覚と聴覚の下で特にグループワークが十分なものとならないことも踏まえ、守るべきサイバー空間の変化に伴うニーズに応じた取組の多様化や新たな技術の活用等も模索していくことが求められると考えられる。
※以下のリンクのとおり、概要資料のみ公表済み。本文は中央大学学術レポジトリに掲載済み。

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