2024年3月
教育ICT政策に関する経緯と考察
- 発表場所
- 国際情報学研究第4号 中央大学国際情報学部
教育におけるICT利活用を推進する取組は2000年代のインターネット普及とともに、徐々に行われてきた。しかし、2010年代初頭、紆余曲折が生じたこともあり、関連する政策や経緯の全体像は必ずしも十分に整理されていない。
本稿では、過去の総務省の実証研究の成果やその後の経緯(事業仕分けと事業存続の経緯)など、関連する政策の経緯を整理し、いわゆるGIGAスクール構想により、全国の学校で1人1台等のICT環境の利活用が進められている現状も踏まえ、全国普及が実現した背景や今後のICT政策とレビューの在り方などについて考察した。
これまでの経緯については、ICT環境整備の考え方の内容に沿って、以下のとおり整理した。最初に、学校単位のICT環境整備の期間(1994~2005年)がある。主なプロジェクトとしては、100校プロジェクト、学校インターネット事業、u-Japan政策等がある。次に、教員への支援と双方向性の模索(2006~2009年)の期間があり、IT新改革戦略の策定やスクールニューディール構想の登場などがあげられる。最後に今日に至る児童生徒主体のICT環境(一人1台情報端末)実証、普及(2010年~、2019年~)の期間である。実証研究としては、総務省「フューチャースクール推進事業」、文部科学省「学びのイノベーション事業」があり、その後、先導的教育システム実証事業、先導的な教育体制実証事業等も両省連携で行われた。普及展開として、2019年からGIGAスクール構想が提唱されて、児童生徒1人1台等のICT環境の全国展開が完了した。
GIGAスクール構想が実現した背景として、一点目は、学校教育の情報化の推進に関する法律(令和元年法律第47号)などの基本的な法律の制定があった。二点目は、経済社会の潮流の変化があげられる。具体的には、国民を取り巻くICT環境の変化があり、 スマートフォンの世帯保有率が2010年度9.7%から2019年度83.4%となり、移動系ブロードバンドは2009年12月に6.6万契約から2019年6月に1.4億契約となった。GIGAスクール構想が提唱された2019年には約8割の国民がスマートフォンを保有して無線ブロードバンドでつながるという、2009年にはほとんど存在しなかったICT環境が実現した。加えて、人間中心のSociety 5.0の理念が提唱がされて「for all」のICT環境という理念が統一されたことも大きく、気運が高まったことがあげられる。三点目は政府の体制強化があげられる。GIGAスクール推進本部の発足(2019年)等があり、文部科学省の他、総務省、経済産業省、内閣官房IT担当室(現デジタル庁)も加わった政府一丸の体制が確立されたことが挙げられる。
以上を踏まえた考察として、ICT施策の推進及びレビューにあたっては、理念の明確化と意思統一が重要であること、ユーザへの浸透・中長期のアジャイル改善の重要性、コストをかけないレビューは混乱を生み、避けるべきであることが挙げられる。ICTを道具として使いこなした好事例の整理・浸透等という人間が行わなければ解決できない部分に着目して、政府として十分に投資することが重要であり、粘り強く検討や修正を重ねていく姿勢が継続的に求められる。
※以下のリンクのとおり、概要資料を公表済み。本文は中央大学学術レポジトリに掲載済み。
本稿では、過去の総務省の実証研究の成果やその後の経緯(事業仕分けと事業存続の経緯)など、関連する政策の経緯を整理し、いわゆるGIGAスクール構想により、全国の学校で1人1台等のICT環境の利活用が進められている現状も踏まえ、全国普及が実現した背景や今後のICT政策とレビューの在り方などについて考察した。
これまでの経緯については、ICT環境整備の考え方の内容に沿って、以下のとおり整理した。最初に、学校単位のICT環境整備の期間(1994~2005年)がある。主なプロジェクトとしては、100校プロジェクト、学校インターネット事業、u-Japan政策等がある。次に、教員への支援と双方向性の模索(2006~2009年)の期間があり、IT新改革戦略の策定やスクールニューディール構想の登場などがあげられる。最後に今日に至る児童生徒主体のICT環境(一人1台情報端末)実証、普及(2010年~、2019年~)の期間である。実証研究としては、総務省「フューチャースクール推進事業」、文部科学省「学びのイノベーション事業」があり、その後、先導的教育システム実証事業、先導的な教育体制実証事業等も両省連携で行われた。普及展開として、2019年からGIGAスクール構想が提唱されて、児童生徒1人1台等のICT環境の全国展開が完了した。
GIGAスクール構想が実現した背景として、一点目は、学校教育の情報化の推進に関する法律(令和元年法律第47号)などの基本的な法律の制定があった。二点目は、経済社会の潮流の変化があげられる。具体的には、国民を取り巻くICT環境の変化があり、 スマートフォンの世帯保有率が2010年度9.7%から2019年度83.4%となり、移動系ブロードバンドは2009年12月に6.6万契約から2019年6月に1.4億契約となった。GIGAスクール構想が提唱された2019年には約8割の国民がスマートフォンを保有して無線ブロードバンドでつながるという、2009年にはほとんど存在しなかったICT環境が実現した。加えて、人間中心のSociety 5.0の理念が提唱がされて「for all」のICT環境という理念が統一されたことも大きく、気運が高まったことがあげられる。三点目は政府の体制強化があげられる。GIGAスクール推進本部の発足(2019年)等があり、文部科学省の他、総務省、経済産業省、内閣官房IT担当室(現デジタル庁)も加わった政府一丸の体制が確立されたことが挙げられる。
以上を踏まえた考察として、ICT施策の推進及びレビューにあたっては、理念の明確化と意思統一が重要であること、ユーザへの浸透・中長期のアジャイル改善の重要性、コストをかけないレビューは混乱を生み、避けるべきであることが挙げられる。ICTを道具として使いこなした好事例の整理・浸透等という人間が行わなければ解決できない部分に着目して、政府として十分に投資することが重要であり、粘り強く検討や修正を重ねていく姿勢が継続的に求められる。
※以下のリンクのとおり、概要資料を公表済み。本文は中央大学学術レポジトリに掲載済み。
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