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2024年9月30日

AIの浸透したデジタル社会における諸課題の検討と考察

  • 大手英明

発表場所
中央大学政策文化総合研究所年報第27号(2023年度)

近年、新型コロナ禍を経て、AIを含む高度な ICT システムが進化しており、検索、SNS、EC(電子商取引)、動画配信サービス、オンライン会議サービスなどの各種サービスはその機能を飛躍的に向上させて高度化し、経済社会に浸透してきている。こうしたデジタル社会において、従来は問題提起にとどまっていた根源的な課題が顕在化してきている。
本稿では、これらを俯瞰できるよう広範なテーマについて相互の関連性を意識しながら取りあげた。プライバシー、知財、偽・誤情報を主な論点とし、昨今のデジタル潮流としてのAI及びメタバースを巡る状況とELSIの観点を捉えつつ、デジタルサービスの地域での実装、高度なICTシステムについて、顕在化している主な課題の抽出と考察を行った。

具体的には、昨今のデジタル潮流としてのAI及びメタバースを巡る状況とELSIの観点を踏まえ、デジタルサービスの地域での実装と高度なICTシステムについて、以下のとおり主な課題を抽出して整理した。
メタバースについては各種課題が指摘されるが社会課題には至ってはいない。今後の見通しとして、ゲームやイベント等の娯楽分野を中心に ユースケースを増やし、デバイスが普及し、その副次的な効果としてビジネス利用なども増えていくという流れが自然ではないかと考えられる。
また、ELSIについては新たな技術を社会で活用するにあたり、俯瞰的な視野で物事を捉える必要があり、社会受容が重要な観点となる。デジタルサービスの地域での実装の取組においては、地域課題の明確化と住民の理解の浸透に加え、メリットがスイッチングコストを上回ることへの実感を持ってもらうことが重要である。やみくもにデジタル化するのではなくアナログを残した方が利便性が良くなる部分を見極めることが求められる。
さらに、高度なICTシステムを巡る課題については、エコチェンバー、フィルターバブルを巡る課題はすでに社会課題として顕在化しており、特に生成AIの課題は、機械学習の過程での著作権者との関係に加え、生成物は偽・誤情報、過剰供給、ハルシネーション(幻覚)などの課題が想定される。こうした中で、OP(オリジネータープロファイル)技術が着目される。

以上を踏まえると、地域課題に対応したデジタルサービス実装、生成AI等の高度なICTシステムの活用についても共通してSociety 5.0の理念にある経済発展と社会的課題の解決の両立に資する人間中心の社会を実現するという視点が重要である。結局、様々なデジタルサービスを受容するのは人間であり、新技術に過度に惑わされることなく、一般的な人間にとってどうなのかという視点を持つことが最も重要である。デジタルが一般的な人間にとって負担となるようでは本末転倒であり、アナログとデジタルの良さをベストミックスさせて総合的に人間にとってより良いものにしていく試行錯誤が求められると考えられる。

※以下のリンクのとおり、概要資料を公表済み。

リンク情報
URL
https://researchmap.jp/multidatabases/multidatabase_contents/detail/800858/839e5d83672ecc95d5fd9bf87b674f35?frame_id=1457171
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https://researchmap.jp/multidatabases/multidatabase_contents/detail/800858/b2a8fa6ea5ccfea863c4e70756686791?frame_id=1457171