共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2023年3月

戦争が歴史化される過程~第一次世界大戦期イギリスにおける戦争博物館とジェンダー~

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
19K01068
体系的課題番号
JP19K01068
配分額
(総額)
4,290,000円
(直接経費)
3,300,000円
(間接経費)
990,000円

本研究はイギリスのジェンダー構造に大きな変化をもたらした第一次世界大戦を、戦争博物館という媒体を通して考察しようとするものである。
本年度は帝国戦争博物館のコレクションを収集した委員会の一つである女性労働小委員会に焦点をあて、「女性が女性をコメモレイト(顕彰)する」ことに大きな意義を見出した同委員会が発揮したイニシアティヴとその限界に迫った。とくに絵画や写真、模型といった美術史料・ビジュアル史料の収集過程に着目することで、女性労働小委員会がテーマ設定、画家の選定から制作依頼まで一手に引き受け、博物館のコレクションづくりに積極的に関与した事実を明らかにした。小委員会の報告書や調査書、女性写真家の回想録といった史料の分析を通して、女性労働小委員会のコレクション・ポリシーを明確化するとともに、企画から収集、展示までの一連のプロセスを再構成することで、小委員会が直面した問題を当時のジェンダー概念との関わりのなかで考察した。以上の研究成果をもとに、論文'Museum as Propaganda'を執筆し、UrbanScope(12,2021)に発表した。
また、捕虜、脱走兵、良心的兵役拒否者など、コメモレイトの対象から排除されてきた「弱き男たち」に焦点をあてることで、戦争博物館が描く戦時マスキュリニティの揺らぎについても考察した。兵士として勇敢に戦うことがマスキュリニティの核となる戦時にあって、戦争神経症に罹患した兵士たちは、自らが喪失したマスキュリニティをいかに回復しようとしたのか。戦後に立ち上げられた戦争神経症に関する調査委員会での証言に着目しながら、伝統的な戦時マスキュリニティがいかに修正され、再構築されたかを「覇権的マスキュリニティの揺らぎ?」と題する論文にまとめ『日本ジェンダー研究』(24,2021年)に発表した。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K01068
ID情報
  • 課題番号 : 19K01068
  • 体系的課題番号 : JP19K01068

この研究課題の成果一覧

論文

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MISC

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