講演・口頭発表等

2018年9月29日

ガスダッチオーブンの調理過程における煮物料理の核酸関連物質変動と嗜好性について

日本調理科学会中国・四国支部 第8回大会
  • 野村知未
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  • 林秀之
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  • 山本克也
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  • 水馬義輝
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  • 佐藤英男
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  • 田中美花
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  • 塩田良子
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  • 戸松美紀子
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  • 杉山寿美

記述言語
日本語
会議種別

【目的】 ガスダッチオーブン(以下DO)は,鋳鉄製ダッチオーブンをガスコンロの魚焼きグリルにて使用できるよう改良された,高温緩慢加熱が可能な鍋である。本研究ではDOの有用性を検討するため,DOで調理した煮物料理の嗜好性について明らかにすることを目的とした。
【方法】 試料は,鶏手羽中,エリンギ,煮大豆,パプリカを用いて,「鶏ときのこの煮物」を調製した。加熱時間は,従来法の鍋で14-18分,DO法では14-18分と余熱時間15-30分とし,調理過程での空間温度履歴を確認した。食材からの煮汁への呈味成分溶出量は,アミノ酸,イノシン酸,グアニル酸をHPLCで定量し,得られた値よりうま味強度を算出した。NaはICPで定量した。官能評価は,2点比較法を用いて女子大生30名に実施し,従来法に対するDO法の試料を7段階で評価した。
【結果・考察】 DOと従来法の全煮汁中のアミノ酸量は,加熱時間に関わらずDO法の煮物で総量が高く,特にうま味・酸味を呈するアミノ酸量は,最大で約1.5倍高かった。また,グアニル酸,イノシン酸においても,従来法に比べてDO法で高い値を示した。グアニル酸は,DOの緩慢加熱中にヌクレアーゼにより生成され,さらに高温加熱により組織が弛み,煮汁中に溶出したと考えられる。さらにDO法は,余熱時間を長くするとともに全煮汁中のアミノ酸,イノシン酸,グアニル酸量が有意に(p<0.01)高くなったが,Na量に差は認められなかった。官能評価では,DO法で鶏肉が有意に(p<0.01)軟らかく,エリンギは有意に(p<0.05)うま味が強いと評価された。これらのことから,DO法は高温緩慢加熱であることから,加熱過程で酵素により呈味成分が生成される食材を使用した煮汁と共に食す料理において,優れた嗜好性を期待できることが示唆された。