2020年9月
【精神科における脳回路研究の最前線】統合失調症におけるミスマッチ陰性電位(MMN)発生異常
日本生物学的精神医学会誌
- 巻
- 31
- 号
- 3
- 開始ページ
- 127
- 終了ページ
- 133
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- DOI
- 10.11249/jsbpjjpp.31.3_127
- 出版者・発行元
- 日本生物学的精神医学会
ヒト脳は自動的な音声変化検出の神経機構を発達させてきた。この機構はミスマッチ陰性電位(MMN)に反映される。欠落音MMNのような多くの研究によって,MMNの記憶痕跡説の証拠が集積された。実際,欠落音MMNは160ms以上のSOA(刺激間隔)では誘発されないが,この所見は時間統合窓機能(TWI)の存在を示している。つまり,感覚記憶にコード化された神経痕跡の長さは160〜170msのTWIの長さに相当するのである。最近MMNは,統合失調症における有望な神経生理的バイオマーカーの一つとして期待されているが,興味深いことに早期の統合失調症患者のMMN減衰は,周波数変化MMN等と比較して持続長変化MMN(dMMN)で顕著である。この理由として,dMMNの異常は,TWIの機能不全によって引き起こされている可能性も考えられる。さらに重要なのは,精神病発症危険状態(ARMS)で記録されたdMMNの障害が,統合失調症発症を高率に予測するバイオマーカーとして期待されることである。MMNの主な発生源は,一次聴覚野近傍の上側頭回(STG)と同定されている。多くの神経画像研究が統合失調症におけるSTGの構造異常を明らかにしてきた。また,MMNはNMDA受容体拮抗薬によって著しく減衰,消失することも知られている。さらに,死後脳研究において,DARPP-32とカルシニューリン(CaN)は,統合失調症においてドパミン-グルタミン酸神経系の異常を密接に反映するが,DARPP-32とCaNの異常が以前に前頭前野に認められていたよりもSTGで強く認められた。また,統合失調症におけるMMN異常については,最新のメタアナリシスでも0.95という大きな効果量が報告されている。以上の所見をまとめると,STGにおけるdMMN異常が,統合失調症における有望なバイオマーカーであることがわかる。(著者抄録)
- リンク情報
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- DOI
- https://doi.org/10.11249/jsbpjjpp.31.3_127
- CiNii Research
- https://cir.nii.ac.jp/crid/1390567172575796992?lang=ja
- URL
- https://search.jamas.or.jp/index.php?module=Default&action=Link&pub_year=2020&ichushi_jid=J05574&link_issn=&doc_id=20201001430004&doc_link_id=10.11249%2Fjsbpjjpp.31.3_127&url=https%3A%2F%2Fdoi.org%2F10.11249%2Fjsbpjjpp.31.3_127&type=J-STAGE&icon=https%3A%2F%2Fjk04.jamas.or.jp%2Ficon%2F00007_3.gif
- ID情報
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- DOI : 10.11249/jsbpjjpp.31.3_127
- ISSN : 2186-6619
- eISSN : 2186-6465
- 医中誌Web ID : 2021073394
- CiNii Articles ID : 130007907824
- CiNii Research ID : 1390567172575796992