講演・口頭発表等

2019年9月

蔵王山における火山活動と熱水系ヨウ素同位体比の変動

日本陸水学会第84回金沢大会
  • 松中 哲也
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  • 後藤 章夫
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  • 渡邊 隆広
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  • 土屋 範芳
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  • 笹 公和

記述言語
日本語
会議種別
開催地
金沢(日本)

2011年の東北地方太平洋沖地震後、蔵王火山の活発化が確認されている。2014年10月に火山活動との関連が疑われる火口湖白濁現象が確認された後、2015年4から6月にかけて火山性地震が月最大で319回に達し、火口周辺警報が発令された。火山活動に伴う火口湖と地熱帯の水質変化を把握するため、2013年10月から東北大を中心に定点観測が実施され、本研究ではヨウ素同位体比の変化に着目した。火口湖のヨウ素同位体比は2013年10月17日から2014年10月10日にかけて、火山性地震の減少と共に、2.2$\times$10$^{-9}$から5.6$\times$10$^{-9}$へ徐々に上昇した後、2014年10月20日に4.3$\times$10$^{-10}$へと低下した。この低下のタイミングは、10月19日に火口湖表面で観測された2回目の白濁現象直後に対応していた。また、2014年10月10日, 10月20日, 10月31日におけるヨウ素同位体比の平均値は2.3$\times$10$^{-9}$であり、9月と比べて低くなったのに対し、10月の火山性地震は9月と比べて3倍高くなった。2014年10月までのヨウ素同位体比と火山性地震との間に、負の相関が認められた。一方、地熱帯におけるヨウ素同位体比は、2014年8月の火山性地震の増大(108回)に伴って、5.3$\times$10$^{-9}$から1.6$\times$10$^{-9}$へ低下した。火口湖と地熱帯におけるヨウ素同位体比の変化は、火山活動と関連している可能性があり、2014年8月と10月に起こった火山活動の活発化に伴って、低い同位体比をもつヨウ素が地下から地熱帯と火口湖へ多く供給されたと考えられる。