基本情報

所属
関東学院大学
学位
博士(工学)

通称等の別名
6588sRHk
J-GLOBAL ID
201201056799417226
researchmap会員ID
7000001089

「機械図面は,どのように描けば正しいといえるのか?」
 これは,意外と難しいものです.図面は設計と加工の契約書の役割を果たすので,図面は正しく書かれなければならず,解釈に齟齬があってならないわけですが,意外に,日本の図面は,それができてないといわれています.
製品の源となる図面は,企業にとっては公開できないために,日本では,図面表記の交流がなかなか生まれません.
気がつけば,近頃,このままでは図面鎖国状態になるとまで言われるようになりました.私は日本の図面を教育分野から改善したいと思っています.そこで,GD&T(Geometrical Dimensioning & Tolerancing),GPS(Geometrical Product Specification 製品の幾何特性仕様),公差解析に興味をもって教育・研究活動をしています.

 

■大学の紹介HP

https://rikou.kanto-gakuin.ac.jp/teacher/244

 

■ 高校生向けの紹介サイト(夢ナビ)

https://yumenavi.info/vue/lecture.html?GNKCD=g014535

設計の重要ポイントはココ! 製造業の負担を減らす「公差」の研究

 

 ■抱負

 私の抱負は,「日本の機械製図を私のキャリアをかけて世界標準レベルに上げたい」ということに尽きます。関東学院大学の学生はもちろんのこと,他大学,高専,工業高校,そして,民間企業も含めて,機械製図を世界標準レベルに上げたいという目標をもっています。念のため,機械製図を説明すると,機械の部品や組立品の図面を描くことをいいます。機械系の学科であれば必修としている学校がほとんどだと思います。

 数学や物理など多くの学問には普遍の法則がありますが,機械製図というのは人間が作ったルールに過ぎませんので,数十年前のルールと,今のルールはまったく違う箇所があります。なぜ,ルールが変わってしまうのかというと,機械図面にあいまいさがないようにルールを少しずつ改定してきたからです。それにも関わらず,産業界も教育界も,古いルールのまま数十年つづけてきたために,日本の機械製図は時代遅れになってしまいました。JISの解説文には,「このままでは図面鎖国になりかねない」と警鐘を鳴らされるほど,日本の機械製図は,旧態依然としています。それにしても,ものづくり立国であるはずの日本が製図鎖国というのもずいぶんおかしな話ですが,どうやら一部の企業しか新しい製図ルールに則った図面を描いていなかったようです。けれども,それが私にとってはチャンスであり,この種の教育に取り組んでいる人が少ないということもあり,この分野を深く知りたいと思うようになりました。今,思い起こしてみると,図面をしっかり描きたいという心は,企業でのエンジニアの時代に植え付けられたものだと思います。当時在籍していた企業では,その企業の標準に則った機械製図がされていて,図面の確認作業(検図)が非常に厳格でした。このときの体験は,ずっと深層心理の奥にあって,結果的に私のキャリア・アンカーになりました。

 

 私が,会社外の機械製図の状況を知ったのは,ちょうど高専の授業で製図を担当するようになった2013年ぐらいだと思います。そのとき,日本の機械製図の規格はどのように作られているのか知りたいと思っていて,日本規格協会のセミナーを担当している講師の方に,規格を作っているJISの委員長を紹介してもらいました。それが,関東学院大学の金田徹先生でした。それが今日の,この縁につながるとは,当時は夢にも思っていませんでした。

 

ノースカロライナ州立大学シャーロット校

 

 その後も,新しい機械製図に興味をもち続け,2017年に機械製図の分野で先行しているアメリカに7か月間留学する機会がありました。このアメリカ行きも,金田先生のご紹介によるものでした。帰国したのち本の執筆をし始めて,約5年をかけて著書が発行されました。これは,主に企業のエンジニア向けに書いたものですが,関東学院大学でも,「サイズ公差・幾何公差」,「公差解析」という2つの授業で学生にも教えています。さらに,本だけではなく,この本の図を使って動画教材も作りました。2024年1月より,設計工学会 事業部会 幾何公差担当としてYouTubeに公開して,さらに書籍と動画を使った講習会も行います。

 

幾何公差・公差解析実践ハンドブック 設計工学会 事業部会 幾何公差講習担当 のYoutubeチャンネル

 

  そして,もう一つ,図面というのは,基本的に紙やPDFファイルを媒体としますが,これを廃止しようという流れがあります。今は, CADというソフトウェアが当たり前のように使われるようになっていますが,従来,そのCADは部品の形だけを扱ってきました。近年になって,そのCADがつくるデータ,これを3Dモデルと呼びますが,この3Dモデルに機械製図で書き入れるような情報を載せようとしています。これを3Dアノテートモデル(以後,3DAモデル)と呼びます。この3DAモデルに加える情報は,あいまいさを除いた新しい製図方式でなければならず,従来の製図方式は受け付けられません。産業界が3Dモデルと2次元の機械図面を併用するのをやめて,3DAモデルのみを使うようになれば,機械図面を描く手間は省け,さらに3DAモデルがもつデータを製造や測定と言った後工程で流用することができます。これを身近な例で例えれば,手書きの紙は人が読まなければ誰かに伝えられないけれど,Wordファイルのような電子データであれば,色々なところに転送したり,編集したりすることができるようになって利便性が上がる,と言えるでしょう。

 

3DA(アノテートモデル)の例 

 

 このように,動画,動画,講習会などをリンクさせて,「日本の機械製図,ひいては3DAモデルの普及を私のキャリアをかけて世界標準レベルに上げたい」という壮大な目標に向かっています。私の中での静かな挑戦が,少しずつ進んでいます。


受賞

  26

論文

  32

MISC

  20

書籍等出版物

  12

講演・口頭発表等

  104

主要な担当経験のある科目(授業)

  8

所属学協会

  3

共同研究・競争的資金等の研究課題

  10

産業財産権

  10

社会貢献活動

  1