講演・口頭発表等

2009年12月24日

水素原子と水和構造を主眼に置いたタンパク質構造解析

茨城大学フロンティア応用原子科学研究センター,平成21年度活動報告会
  • 山田太郎

記述言語
日本語
会議種別
口頭発表(一般)
主催者
茨城大学FRC
開催地
茨城大学IQBRC

タンパク質の性質を議論する上で、水素原子の存在は重要である。しかしながら、それを観測するための手段は限られているため、推論をもとに議論されることも多い。X線構造解析は非水素原子の位置を決定することにおいては威力を発揮するが、水素原子に関しては観測することが非常に難しい。それは水素原子は電子を一つしか持たないたいためにX線の散乱能が小さいことによる。酵素反応では陽子が移動する反応が多いが,陽子は電子を一つも持たないため,X線で観測することは不可能である。それに対し、中性子は原子核によって散乱を受けるために,陽子や水素原子などの軽元素を観測するのに都合が良い。中性子源はX線源に比べて強度が小さいという弱点があるが,現在稼働が始まっているJ-PARCの出力の向上に期待がかかっている。およそ全ての生体内の反応は水溶液中でおこなわれおり,タンパク質の構造の安定性や、酵素反応の機構を議論する上で,タンパク質中の水分子や周りの水和水の影響は無視出来ない。中性子回折を用いた構造解析により,これまでのX線構造解析では観測が難しかった水和水の構造についても観測ができるようになり、違った観点からタンパク質の構造が見直されるものと思われる。今回は,これまでに県BL部門生体系グループで行われたタンパク質構造解析を例に挙げて,中性子回折による単結晶構造解析で何ができるのかを紹介する。