基本情報

所属
電気通信大学 脳・医工学研究センター 特任教授
学位
理学博士(東京大学)

研究者番号
70281706
J-GLOBAL ID
201201010477333566
researchmap会員ID
7000001316

外部リンク

 哺乳類の視覚野には、眼優位カラム、方位カラム、運動方向カラムなどのカラム構造(脳表から白質までを貫く円柱状の機能的構造単位)が存在する。「シナプス可塑性」を数学的に定式化することによって、このようなカラムの形成を理論的に説明する自己組織化モデルを構築し、計算機シミュレーションによって実験的に見られる構造の再現に成功した。  外側膝状体の遅延反応型と非遅延反応型ニューロンの存在が、既に報告されているので、それらを考慮した自己組織化モデルを構築し、視覚野ニューロンにおける方位選択性だけでなく、方向選択性、およびそれらのマップ構造を再現することに成功した。視覚野単純型細胞の示す最適方位と受容野位相の張る空間が、位相幾何学的にクラインの壷K2と等価であること発見し、ホモトピー論によって、方位マップに現れる特異点を分類できることを示した。さらに、運動方向マップに現れる不連続線と方位マップの特異点の幾何学的関係を明らかにした。また、ネコを用いた内因性光学計測によって、この幾何学的関係を実証した。サルの視覚野には眼優位カラムに沿って、チトクローム酸化酵素によって染まる規則的なブロッブ構造が見られるが、この両者の幾何学的関係を自己組織化モデルによって再現した。 さらに、厚さをもつ3次元的な大脳皮質に適用できるように自己組織化モデルを拡張し、方位カラムの構造が灰白質の曲率が大きいところでは乱れることを示し、ピッツバーグ大学の研究グループとのfMRIを用いた共同研究によって、理論結果の妥当性を実証した。  着脱可能でかつ安定に動物の頭部に固定できる方位視体験を制限するゴーグルを開発し、発達期の動物の視覚野方位マップが視体験によってどのように再編されるのかを調べた。  ①3週齢から8週齢の幼若ネコに1、2週間単一方位を視体験させると、経験した方位に選択的に反応する領域が視覚野の広い領域を占めること(過剰表現)を発見した。また、②臨界期のプロファイルを描くことに成功し、その臨界期(生後10日から50日)における可塑性にはNMDA受容体が重要な役割を演じていることを薬理学的に解明した。さらに、③幼若期にはわずか数時間だけゴーグル飼育をした場合にも、統計的に優位な過剰表現が見られることから、従来予想されていた以上に、方位選択性はダイナミックに変化することを示した。  さらに、個々の視覚野ニューロンは方位選択性を示すが、方位カラムの存在しないげっ歯類においても、ゴーグル飼育をすることによって、経験方位の過剰表現を誘導できることを確認した。特に、①幼若マウスに1週間単一方位を視体験させた場合には、経験方位に対する視覚野の反応が増強すること、②成熟マウスについても2-3週間同じ視体験操作を行えば、経験方位に対する反応が優位に増加することを確認した。この内因性信号光学計測法から得られた経験方位に依存する視覚反応の変化を、二光子励起イメージング法を用いて細胞レベルで調べたところ、経験方位に選択的に反応する細胞密度においてのみ単一方位視体験による有意な増加がみられた。

論文

  73

MISC

  22

書籍等出版物

  20

講演・口頭発表等

  20