2019年4月 - 2022年3月
ストレス応答生合成と化学修飾を融合した多様性天然物による難治性疾患治療薬の開発
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
本研究は、全く新しい骨格を持つ化合物ライブラリーと革新的スクリーニング法を開発、それらを駆使し既存薬と一線を画す新たな作用機序を有するヒット化合物の網羅的探索を目的とした。令和元年度の主な3つの研究成果概要を次に示す。(1) 糸状菌二次代謝産物の生合成経路の改変・再設計による新規擬天然化合物ライブラリーを構築した。糸状菌ゲノム解析の進展により糸状菌が合成する二次代謝産物の設計図が明らかとなった。令和元年度は、ゲノム情報を基に外来遺伝子導入による糸状菌二次代謝産物の生合成経路の改変・再設計を行った。得られた新規化合物の抗ウイルス活性を測定、HIV-1に対してウイルス抑制効果を発揮する化合物の同定に成功した。(2) アデノウイルス (AdV) に対する抗ウイルス効果を迅速・簡便に測定する実験系を構築した [Antivir Chem Chemother. 2020]。結膜細胞に感染したAdVは流行性角結膜炎 (EKC) の原因となる。これまで結膜細胞感染AdVに対する抗ウイルス活性の測定には、ウサギの眼球を使用していたが本手法ではヒト結膜細胞由来の実験用細胞株、CRL11516細胞を用いており従来の手法に比して簡便・迅速かつ高いコストパフォーマンスを実現しただけでなく動物愛護の観点からも有用な成果となった (論文作成中)。(3) 薬剤耐性菌 (AMR) に有効で既存の抗菌薬と異なる作用機序をもつ新規抗菌薬候補化合物を同定した。細菌内の核酸代謝経路を標的とし、in vitroで細胞毒性や既存の抗菌薬との交叉耐性を持たない核酸アナログだけでなく薬剤耐性遺伝子そのものを破壊しAMRを薬剤感受性菌に戻すという全く新しい作用を発揮する新規化合物の同定に成功した [ACS Infect Dis. 2019]。
- ID情報
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- 課題番号 : 19H03701
- 体系的課題番号 : JP19H03701