2009年 - 2011年
高分子薄膜太陽電池におけるフラーレン誘導体の両極輸送機構の解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費 特別研究員奨励費
共役高分子であるpoly(ρ-phenylenevinylene)誘導体(MDMO-PPV)とフラーレン誘導体(PCBM)を用いたブレンド膜のマイクロ秒領域における過渡吸収測定を行った。その結果、フラーレン濃度が高い系では、電荷種として従来考えられてきた共役高分子正孔ポーラロン、フラーレンアニオンに加えて、さらにフラーレンカチオンも生成していることを見出した。すなわち、これまで電子輸送のみを担うと考えられてきたフラーレンが電子のみならず正孔をも輸送していることを分光的に初めて明らかにした。これは有機薄膜太陽電池におけるフラーレンの両極輸送性を実証した初めての例である。
さらに上述のフラーレンカチオンの生成機構を解明するため、イオン化ポテンシャルの異なる種々の共役高分子を用いて、ナノ秒からミリ秒にわたる広時間帯域の過渡吸収分光法により電荷種の生成過程と分率の測定を行った。その結果、フラーレンカチオンは共役高分子からフラーレンへの正孔注入によって生成していることを明らかにした。また、フラーレンカチオンの平衡分率は用いる共役高分子のイオン化ポテンシャルの大きさによって決定されることから、正孔注入はフラーレンHOMO準位の広いバンド幅と大きな縮退度によって起きていることを明らかにした。
この研究では、高分子薄膜太陽電池の光電変換機能において重要な役割を果たしている共役高分子/フラーレン接合界面での電荷の輸送機構を、過渡吸収分光法を駆使して解明してきた。このことは有機薄膜太陽電池では界面の物性が重要な役割を担っていることを示しており、有機トランジスタなどバルク物性が重要な役割を果たす他の有機電子デバイスとは異なる有機薄膜太陽電池のならではの特徴を示すことができた。この研究は高分子薄膜太陽電池の動作素過程に新たな物理的描像を与え、理解を深めるという学術上の成果のみならず、高分子薄膜太陽電池の設計指針を提示するという応用上寄与するところも少なくない。
さらに上述のフラーレンカチオンの生成機構を解明するため、イオン化ポテンシャルの異なる種々の共役高分子を用いて、ナノ秒からミリ秒にわたる広時間帯域の過渡吸収分光法により電荷種の生成過程と分率の測定を行った。その結果、フラーレンカチオンは共役高分子からフラーレンへの正孔注入によって生成していることを明らかにした。また、フラーレンカチオンの平衡分率は用いる共役高分子のイオン化ポテンシャルの大きさによって決定されることから、正孔注入はフラーレンHOMO準位の広いバンド幅と大きな縮退度によって起きていることを明らかにした。
この研究では、高分子薄膜太陽電池の光電変換機能において重要な役割を果たしている共役高分子/フラーレン接合界面での電荷の輸送機構を、過渡吸収分光法を駆使して解明してきた。このことは有機薄膜太陽電池では界面の物性が重要な役割を担っていることを示しており、有機トランジスタなどバルク物性が重要な役割を果たす他の有機電子デバイスとは異なる有機薄膜太陽電池のならではの特徴を示すことができた。この研究は高分子薄膜太陽電池の動作素過程に新たな物理的描像を与え、理解を深めるという学術上の成果のみならず、高分子薄膜太陽電池の設計指針を提示するという応用上寄与するところも少なくない。
- ID情報
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- 課題番号 : 09J03604
- 体系的課題番号 : JP09J03604