変形性膝関節症に対する高位脛骨骨切り術(HTO)の術後成績に影響を与えるものとして術後の良好な下肢アライメントの獲得が重要である。そのためには、大きな負荷が加わる歩行動作の分析が必要であり、とりわけ歩行時の膝関節機能の評価は重要である。本研究は、膝関節や股関節周囲筋力および疼痛が歩行時の膝関節機能に与える影響を明らかにするために、HTO施行例の歩行時の膝関節機能に関わるパラメーターの経時的変化を計測した。独歩可能になった1症例を対象に術後6ヵ月目、8ヵ月目、12ヵ月目の計3回、膝関節機能に関わるパラメーターとして疼痛、膝関節と股関節周囲の筋力、歩行時の膝関節角度と膝関節モーメントを測定した。12ヵ月目には、股関節屈曲、股関節伸展位での内外旋、膝関節伸展筋力は向上したが、疼痛が残存し股関節伸展、内転筋力は低下していた。本症例では大腿二頭筋腱部の残存した疼痛により膝関節に屈曲拘縮が生じ、大臀筋の筋力低下を引き起こした可能性が考えられる。一方で、股関節屈曲筋力と股関節伸展位での内外旋筋力、膝関節伸展筋力の向上は、特に歩行時の矢状面と前額面の関節モーメントに良好な影響を与えたと考える。(著者抄録)