MISC

2018年

白神山地ブナ林における蒸発散量の経年変化

水文・水資源学会研究発表会要旨集
  • 滝野 祐
  • 古本 淳一
  • 高瀬 恵次
  • 石田 祐宣
  • 伊藤 大雄
  • 戎 信宏
  • 佐藤 嘉展
  • 萬 和明
  • 山口 弘誠
  • 中北 英一
  • 矢吹 正教
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開始ページ
142
終了ページ
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.11520/jshwr.31.0_142
出版者・発行元
水文・水資源学会

2008年8月から白神山地核心・緩衝地域に隣接する原生的なブナの割合が高い森林内(北緯40度33分56秒、東経140度7分40秒)で微気象観測タワー(以下、単にタワー)を用いた総合気象・乱流観測が継続されている。山地の森林は水源涵養の役割を期待されているが、ブナはリターが豊富なため特にその能力が高いので、以前よりタワーでの観測から白神サイトの水循環の全般的な傾向を見出す研究が行われてきた(石田,2012)。しかし、年毎の蒸発散量の違いをもたらす要因については明らかにされていない。そこで、本研究では白神山地ブナ林における水循環の特徴を明らかにすべく、特に蒸発散に焦点をあてて、その量の影響要因を明らかにすることを目的とする。観測に用いたタワーの全高は34mで、タワーには一般気象および熱・水・CO2フラックスの測定のための機材が取り付けられている。対象期間は2012年~2016年で、蒸発散量は樹高上で測定されている風速と水蒸気密度の乱流データを使用し、渦相関法により求めた。また、現地の気象データを使い、ポテンシャル蒸発量<i>E<sub>p</sub></i> (近藤・徐, 1997)も日単位で求めた。<i>E<sub>p</sub></i>の定義は湿った標準面からの蒸発散量である。これと実蒸発散量<i>E</i>を比べることで水分ストレスや蒸散量の大小を判断することができる。渦相関法のデータは品質チェックを行い、良質と判断された日の蒸発散量<i>E</i>と<i>E<sub>p</sub></i>との比を月ごとに求め、不良データの場合は<i>E<sub>p</sub></i>より蒸発散量<i>E</i>の推定を行った。2012年~2016年のこれらの値と降水量Prについて月積算値と年間積算値を求めた。結果として対象期間の年平均降水量は2808mm、年平均蒸発散量は604mmであった。年間で降水は約20%、蒸発散に分配されている。2013年は雪解けが遅く蒸発散量にも影響を与えた。2013年の蒸発散量は556mmで平均を下回っており、年間を通じて蒸発散量が他の年よりも小さかった。これは雪融けの遅れがブナのフェノロジーに大きく影響を及ぼし、蒸発散量にも影響を与えたと言える。これは、<i>E</i>/<i>E</i><i>p</i>の値が小さいことにも現れているようにみえる。逆に雪融けが5年間の中で最も早かった2015年は蒸発散量が713mmと平均値を上回っている。これらから、白神サイトでは、積雪はブナのフェノロジーに大きな影響を与え、ひいては、蒸発散量や<i>E</i>/<i>E</i><i>p</i>の変化を支配する一因になると考えられる。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.11520/jshwr.31.0_142
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130007553970
ID情報
  • DOI : 10.11520/jshwr.31.0_142
  • CiNii Articles ID : 130007553970
  • identifiers.cinii_nr_id : 9000399372949

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