ヒトの血液中には様々な系列の細胞が存在している。造血幹細胞からそれぞれの系列への分化過程を知ることは,血液疾患の病態の理解やその治療法の開発研究において重要である。筆者らは,20年以上にわたって血液細胞の分化経路を探索し,各系列において,系列決定直前までミエロイド細胞分化能が残されているというミエロイド細胞の特殊性を見出し,「ミエロイド基本型モデル」という造血モデルを提唱した。ミエロイド細胞の特殊性は混合性白血病の特徴をよく反映しているだけでなく,血液の進化過程を考察する上でも非常に重要な手がかりを与えてくれている。モデルの提唱後,現在に至るまでに,巨核球や顆粒球の分化経路,無脊椎動物の血液細胞の知見などが集積し,ミエロイド細胞の特殊性が改めて確認されている。それらの文献を紹介しつつ血液細胞の分化過程と進化過程を辿り,「血液」の起源を考察する。(著者抄録)