論文

2014年3月31日

<論文>神女の回心はいかに語られたか : 近代沖縄における村落祭祀の解体と力の転位

コンタクト・ゾーン = Contact zone
  • 及川 高

6
2013
開始ページ
101
終了ページ
127
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
京都大学大学院人間・環境学研究科 文化人類学分野

かつて琉球王国の国家祭祀の一部として組織されていた個々の村落の祭祀は、琉球処分(1872-1879)によって王府がなくなった後、公的な地位を失い多くが解体に向かった。本稿の課題は祭祀が廃止されていった過程で、伝統文化が近代社会にどのように連続してきたのかという問題を、「神の力」と「人間の霊力」という2つの力の布置の変化に注目して整理することにある。事例として取りあげるのは、クリスチャンになった神女(ノロ)、大城カメという人物である。彼女は1872年に沖縄の神女の血統に生まれ、若くして一度はその職を継承するものの、身を襲った不幸のために実存の危機に陥り、折しも沖縄宣教を活性化させていたキリスト教に心を寄せることになる。彼女はこの回心によって伝統的な村落祭祀と対立し、最終的に祭祀を廃絶させるに至る。こうした過程は近代沖縄における村落祭祀の解体を、従来の脱呪術化のモデルとは異なる枠組みから理解する可能性を示している。本稿はこの過程をターナーの社会劇のモデルに従って整理し、村落祭祀の解体には「神の力」と「人間の霊力」という2つの力の転位が見出されることを指摘する。そしてそうした転位には、近代における宗教の地位が主に内面的信仰を基盤としており、その枠組みの下で伝統的な力の布置が変化した帰結としての面があることを明らかにする。

リンク情報
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/120005617576
CiNii Books
http://ci.nii.ac.jp/ncid/AA12260795
ID情報
  • ISSN : 2188-5974
  • CiNii Articles ID : 120005617576
  • CiNii Books ID : AA12260795
  • identifiers.cinii_nr_id : 9000006915368

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