共同研究・競争的資金等の研究課題

2016年4月 - 2017年3月

漢字習熟度テストにおける受験者の解答行動の分析


資金種別
競争的資金

本研究では、日本語学習者を対象とした漢字習熟度テスト(以下、漢字テスト)の解答過程を明らかにすること目的とし、以下について定量的、定性的に分析を行った。
使用した漢字テストは、「漢字力診断テスト」(加納1997)を参考にして作成した7種90問で、項目分析を行い、各問題形式別の正答率および弁別性の指標である識別力を母語別に算出した上で正答率及び識別力が高い項目及び低い項目を抜粋し、調査に使用した。
調査は、2016年6月から2017年2月に大学の教室内において1対1で行い、解答中の手元の様子はビデオ録画した。調査協力者は都内の大学に所属する20名であった。手順は、漢字テストの受験、解答中の映像を刺激とした解答過程に関するインタビューの順であった。
インタビューデータは文字化し、定性的コーディング(佐藤2009)によって解答過程をコード化し、識別力や正答率の高い問題と低い問題で使用されている解答行動を比較した。その結果、以下の点が明らかになった。
1. 識別力の低い問題では、「母語知識の利用」や「自動化された知識による解答」が発生していたのに対し、識別力が高い問題では「文を読む」「意味の想起」「字形の想起」が発生していた。
2. 正答率が低い問題では「低頻度語としての認識」「漢字の有無の判断」「選択肢間の意味の検討」が発生したのに対して、正答率が高い問題では「自動化された知識による解答」「高頻度語としての認識」が発生していた。
上記の結果、漢字テストとして一般に想定される過程が発生している問題が適切に漢字力を識別していること、また受験者は解答中に、使用された漢字の頻度や使用場面を想起するなど日常生活の場面と漢字学習が強く結びついていることが示唆された。本研究は、漢字テストの解答過程の一部を明らかにし、妥当性に関する知見の蓄積に貢献したと考える。今後、統計分析を行い、学会等にて報告する予定である。

リンク情報
URL
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H00048/