2016年
現代社会のアクションリサーチにおける時間論的態度の問題
実験社会心理学研究
- 巻
- 56
- 号
- 1
- 開始ページ
- 60
- 終了ページ
- 69
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- DOI
- 10.2130/jjesp.si2-3
- 出版者・発行元
- 日本グループ・ダイナミックス学会
<p>本稿は,アクションリサーチの前提中の前提である,価値志向的であること,よりよい状態を目指そうという態度が,ときにアクションリサーチの現場を閉塞した状況にしてしまうことを指摘したうえで,それがいかに回避され得るのかを考察したものである。アクションリサーチにおけるベターメントの達成は,当事者の内的な世界における「身体の水準」が,共同体における他者との出会いによって,「言語の水準」へと顕在化することとして捉えることが出来る。新潟県中越地震の復興支援の事例では,ベターメントにつながるような「身体の水準」の顕在化に寄与するかかわりは,何らかのよりよい状態に向けて現在を変革する「めざす」かかわりではなく,「変わらなくてよい」ことを前提とした「すごす」かかわりであった。よりよい状態を「めざす」アクションリサーチにおける困難は,近代的な自我がいきつく〈時間のニヒリズム〉からとらえることが出来る。そのニヒリズムを基礎づける「インストルメンタル」な時間態度がどのように生まれたのかをふりかえると,それを保持したまま,なお現在のうちに生の充足を感受する「コンサマトリー」な時間態度が成立可能であることが理解できる。この「コンサマトリー」な時間態度の獲得が,現代社会のアクションリサーチの困難を回避する方策である。</p>
- リンク情報
- ID情報
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- DOI : 10.2130/jjesp.si2-3
- ISSN : 0387-7973
- CiNii Articles ID : 130005249462
- CiNii Books ID : AN00104794
- identifiers.cinii_nr_id : 9000345248108