著者等はこれまで自己骨髄由来間葉系細胞(BSCs)移植による声帯再生を試み、良好な結果を得ている。移植方法は、BSCsをcell sourceに、足場であるコラーゲンとともに傷害声帯に注入移植するというものであるが、移植細胞を作製する一連の過程で骨髄からBSCsのみを選択的に増殖させる必要があり、この細胞培養の際に用いる培養液の安全性などが問題となる。すなわち、通常細胞培養を行うときには細胞増殖を促進する目的で基準培養液にウシ胎児血清(FBS)などを10%程度添加したものを用いるが、ウシには海綿状脳症などの感染の危険性があり、その血清を使用することは安全面において問題がある。そこで今回、基本培地に自己血清を添加した培地を作製し、この中でのBSCsの増殖を試み、自己血清添加のみで臨床応用レベルまでの細胞数獲得が可能であるか検討した。その結果、約2週間の細胞培養で十分量の細胞数が獲得できることが明らかになった。