共同研究・競争的資金等の研究課題

1999年 - 2001年

生体内T細胞における活性化と免疫寛容の細胞内シグナル伝達機構

日本学術振興会  基盤研究(C)(2)  基盤研究(C)

課題番号
11670276
体系的課題番号
JP11670276
担当区分
研究代表者
資金種別
その他

細菌性スーパー抗原に対する反応性が異なるヒト生体内の細胞を用いて、どのような細胞内シグナル伝達機構に基づいて反応性の差異が生じるのかを解明することをめざした。
まず成熟胸腺T細胞は成人末梢血T細胞に比べて、細菌性スーパー抗原の刺激に対するサイトカイン産生能が非常に低く免疫寛容状態にある。この反応性が異なる2つの細胞系を用いて細胞内シグナル伝達の相違を検討した結果、シグナリング初期に関わるsrc family kinasee(Lck)の活性に顕著な差を認めた。刺激に伴い末梢血のLckはphosphatase CD45により速やかに脱リン酸化されキナーゼ活性も急激に上昇した。これとは対照的に、胸腺細胞ではCD45とLckが物理的に乖離していてLckは脱リン酸化されず、キナーゼ活性も全く上昇しなかった。さらに、シグナル伝達の機能的コンパートメントとして重要なmicrodomainであるraftへのLck分子の集積を検討したところ、この現象が末梢血のみで観察された。以上、細菌性スーパー抗原によるT細胞の活性化にはCD45によるLckの活性化が重要であること、また成熟胸腺細胞においては両分子の物理的乖離によりLckが活性化されず免疫寛容状態にあることが明らかとなった。
次にヒトT細胞のサブセットであるCD4^+T細胞とCD8^+T細胞の細菌性スーパー抗原に対する反応性の差異を、増殖能・サイトカイン産生能・細胞障害活性の側面から検討した。その結果、CD4^+T細胞では、細胞増殖反応およびインターロイキン(IL)-2やIL-4の産生能が優位に、また、CD8^+T細胞ではインターフェロン(1FN)-γ産生能と細胞障害活性が優位であった。以上、それぞれ独自の反応性を有していることが明らかとなった。この相違にはLckの活性化調節機構が関与しているようであるが、詳細は現在検討中である。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-11670276
ID情報
  • 課題番号 : 11670276
  • 体系的課題番号 : JP11670276