共同研究・競争的資金等の研究課題

2007年 - 2008年

DNA含有免疫複合体が自然免疫を介してループス腎炎の病態に及ぼす影響について

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
19591260
体系的課題番号
JP19591260
配分額
(総額)
4,550,000円
(直接経費)
3,500,000円
(間接経費)
1,050,000円

全身性エリテマトーデス(SLE)における最も特徴的な自己免疫病態として、DNAに対する自己抗体産生が挙げられる。その結果、末梢血液中にはDNA含有免疫複合体が見出される。一方、Toll-like receptor9 (TLR9)は、細菌由来のDNA配列であるCpG oligonucleotide(CpG ODN)を特異的に認識し、免疫系を活性化する自然免疫受容体である。SLEの主症状であるループス腎炎において、TLR9のループス腎炎の病態への関与について検討した。
小児期発症SLE患者の腎組織のTLR9の免疫染色を行ったところ、糸球体におけるTLR9の発現は、正常の糸球体やループス腎炎寛解期の糸球体では認められず、腎炎の増悪期にのみ認められた。さらに、TLR9とSynaptopodinの二重染色により、TLR9は糸球体上皮細胞に一致して発現していることが判明した。また、TLR9が強発現する時期は、血清学的に抗二重鎖DNA抗体価の上昇と低補体血症を認める時期であり、血中にDNA含有免疫複合体が多い時期に一致することが推測された。また、ループス腎炎の急性期や増悪期には、synaptopodin、nephrin、podocin等の糸球体上皮細胞スリット膜関連蛋白の発現が低下する事実から、TLR9が糸球体上皮細胞傷害に関与している可能性が推測された。
この結果を基にマウス由来糸球体上皮細胞(MPC)をcytokine(IL-6, IL-1β, TNF-α, VEGF, IFN-β), CpG ODN、DNA含有免疫複合体等で刺激したところ、これらの全てが、無刺激では発現の見られなかったTLR9 mRNAの発現を誘導した。また、CpG ODN、DNA含有免疫複合体等の刺激によりMPCでのsynaptopodin mRNAの発現の低下を認めた。
これらの結果より糸球体上皮細胞は、TLR9を介してループス腎炎における炎症病態や糸球体上皮細胞傷害に関与する可能性が推測された。本研究は、ヒトのループス腎炎とTLR9の関わりを明らかにした初めての報告である。今回の知見は、ループス腎炎の活動性の新たな指標や自然免疫系をターゲットとした新たな治療法の開発などにつながる可能性を秘めている。

リンク情報
Kaken Url
https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-19591260/19591260seika.pdf
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19591260
ID情報
  • 課題番号 : 19591260
  • 体系的課題番号 : JP19591260