2019年5月
腎不全と慢性脱水による持続性高アルドステロン症のために高ナトリウム血症を来たした重症心身障害児例
日本小児体液研究会誌
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- 巻
- 11
- 号
- 開始ページ
- 29
- 終了ページ
- 33
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- 日本小児体液研究会
症例:12歳女児。重症新生児仮死による脳性麻痺、慢性腎不全の診断で重症心身障害児として外来管理を行なっていた。入院の3日前から頻回嘔吐、喘鳴が出現し徐々に増悪、経管栄養も困難となったため当院救急外来を受診した。発熱、喘鳴、ツルゴールの低下、10%の体重減少を認め、検査にて高Na血症および右上肺野の浸潤影を認めたことから、誤嚥性肺炎、高張性脱水の診断で入院となった。高張性脱水に対し、等張液を用いた輸液を開始したところ、脱水所見は改善したものの血清Na濃度は上昇を続けた。輸液を低張Na製剤に変更した後も血清Naが上昇するため、最終的に5%グルコース液にて1日水分量を最低100ml/kgとなるよう輸液量を維持したところ、数日で血清Na濃度は改善した。高Na血症下で慢性腎不全状態としては不相応に血清K濃度が低下する傾向があったことから、アルドステロン作用の関与を疑い追加検査を行ったところ、著明な高アルドステロン血症および抗利尿ホルモン(AVP)の高値を認めた。全身状態の改善後、自宅での充分な水分管理を続けたところ、約3ヵ月後には血漿アルドステロン値およびAVPの改善がみられ、電解質の異常は認められなかった。患児は胃食道逆流により日常的に嘔吐が認められ、慢性的な水分、栄養注入量の不足状態にあったことに加え、腎不全によるAVP反応性低下による希釈尿排泄が慢性的な脱水状態を生じ、アルドステロンの過剰分泌を来したものと考えられた。このようなNa排泄障害下でのNa含有製剤による輸液が容易に高Na血症を招いたと考えられた。本例のような特殊な背景がある患児に対して輸液を行う際には、基礎疾患とそれに伴う病態を十分に把握しておくことが重要と考えられた。(著者抄録)