2016年3月
村上信彦の『奇譚クラブ』における匿名テキストを解読する——戦後の民主 的平等論者の分身について
立命館文学
ダウンロード
回数 : 280
- 巻
- 号
- 647
- 開始ページ
- 40
- 終了ページ
- 62
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(大学,研究機関等紀要)
- 出版者・発行元
- 立命館大学人文学会
戦後から1980年代にかけて、服装史・女性史等の分野で活躍した村上信彦は、一貫して男女の民主的平等を主張したラディカルな女性解放論者として知られる。本稿では、村上が吾妻新という筆名を用い、1950年代、アブノーマル性風俗雑誌『奇譚クラブ』に、サディズムを擁護する議論を集中的に発表していたことを明らかにした。即ち吾妻は、同意のない単純な暴力・虐待である「サド的」なサディズムを古いものとし、新たに、完全な男女平等関係と信頼関係を前提とし、寝室に限定される加虐・被虐関係を「近代化されたサディズム」として提唱した。本稿では、吾妻新が村上信彦の筆名であることを実証した後、吾妻のサディズム擁護の主張が、村上名義の、公娼制などの封建制批判と対になっており、吾妻のサディズム論が女性解放論と矛盾せず、同じ思想に立脚するものであったことを明らかにした。
- リンク情報
- ID情報
-
- ISSN : 0287-7015
- CiNii Articles ID : 40020846790
- CiNii Books ID : AN00289973