論文

査読有り
2011年

蝦夷・俘囚への叙位——蝦夷爵制の再検討を中心に

日本史研究
  • 河原梓水

589
開始ページ
42
終了ページ
59
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(学術雑誌)
出版者・発行元
日本史研究会

古代蝦夷は、服属後も律令制的秩序から排除されることで公民の外部および下部へと位置付けられ、共同体の結束を強固にする機能を果たすと考えられてきた。その際有効に機能したのが特殊位階とされる蝦夷爵であり、国家は蝦夷爵を用いて服属蝦夷を蝦夷と俘囚という2つの身分にわけ、一方には蝦夷爵を、一方には通常の令制位階を授与することで彼らを分断したとされてきた。
この分断は律令国家の蝦夷支配の根本構造であり極めて重要な意義を見出されてきたが、その根拠である蝦夷爵の実証的研究は十分に行われていなかった。従って本稿では、蝦夷爵の規定とみなされてきた『延喜大蔵省式』条文の再検討を通じて、蝦夷爵は本来蝦夷征討際に設定された臨時位階で、差別指標ではなく征夷の実態に即して設定された実務的位階であることを明らかにした。そして、蝦夷爵は服属蝦夷すべてに与えられた可能性が高く、令制位階への再叙位も想定されていたこと、したがって蝦夷爵は蝦夷身分を分断するものではないことを提示し、国家は律令的秩序への蝦夷の包摂を基本理念としていた可能性を示した。

リンク情報
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/40018992632
CiNii Books
http://ci.nii.ac.jp/ncid/AN00191267
URL
http://id.ndl.go.jp/bib/11241069
ID情報
  • ISSN : 0386-8850
  • CiNii Articles ID : 40018992632
  • CiNii Books ID : AN00191267

エクスポート
BibTeX RIS