2019年6月 - 2022年3月
嘔吐するモデル動物スンクスの戻し交配で解明するPONVの遺伝学的機序
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
全身麻酔後の術後悪心嘔吐(PONV)に対する新しい予防法を開発できないだろうか?本邦ではPONVなどの嘔吐に関する基礎研究はあまり行われてはいない.その原因の1つに,頻用される実験動物である齧歯類は嘔吐できないという事実がある.実際,ラットやマウスは脳幹の嘔吐中枢が未発達で,いかなる嘔吐刺激を加えても嘔吐行動はまったく出現しない.そこでわれわれは最も嘔吐しやすい哺乳類であるスンクス(Suncus murinus,食虫目トガリネズミ科)に注目した.本研究の目的は遺伝学的に吐きにくい因子を持つスンクスを戻し交配によって新たに創出し,従来の吐きやすいスンクスとゲノム配列を比較することで,吐きにくさと関連がある遺伝子群を探索し,PONV予防薬の創薬に繋げることである.われわれのプロジェクトでは,世界でも本邦の紀和実験動物研究所でのみ維持されているLer系(Low emetic response:吐きにくい)とHer系(High emetic response:吐きやすい)の近交系スンクスを使用する.まずLer系のオス(ブリーダー)とHer系のメス(レシピエント)を交配させ,生まれたオスのうち,催吐物質ベラトリンで30分間,嘔吐を起こさなかった個体を次のブリーダーとしてHer系のメスと戻し交配させる.戻し交配を10世代繰り返すことで,Ler系が従来持つ「吐きにくい遺伝的因子」を遺伝的背景が均一なままのHer系に導入することが可能となる.2019年9月から30ヶ月にわたりわれわれはこの戻し交配を行っている.目標とした10世代目にはすでに到達し,現在,行動実験と全ゲノム解析を進めている.
- ID情報
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- 課題番号 : 19K22647
- 体系的課題番号 : JP19K22647
この研究課題の成果一覧
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講演・口頭発表等
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日本遺伝学会第94回札幌大会 2022年9月14日
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日本進化学会第23回東京大会 2021年8月19日
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The 2nd AsiaEvo Conference 2021年8月