本稿の目的は、日本において著作権が建築分野のアーカイブズの実現に与える影響を明らかにすることである。そのために、著作権者に対する三つの権利制限──公文書館等を対象とした著作権法上の制限、「図書館等」を対象とした著作権法上の制限、建築設計等の業務委託契約にともなう制限──に着目した。その結果、①著作権保護期間中の資料は、所蔵のアーカイブズ機関タイプによって著作者に対する権利制限が異なるために、利用が難しかったり意図せずして利用できてしまったりする、②建築設計等の円滑な業務遂行のために、その業務契約書において受託者の著作権が制限されることにより、利用はおろかアーカイブズ機関で受入が難しくなる可能性もある、以上の二点を明らかにした。