MISC

2018年6月

【シリーズ新潮流Vol.9-The Next Step of Imaging Technology 人工知能で医療は変わるのか-加速する医療分野のAI開発の現在と未来】 臨床におけるAI活用の現状と展望 AIを用いた創薬の実際と今後の展望 化学構造のための深層学習技術GCNの紹介とその応用

INNERVISION
  • 小島 諒介
  • ,
  • 奥野 恭史

33
7
開始ページ
71
終了ページ
73
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
(株)インナービジョン

医療・創薬において深層学習を用いた新たな手法が日々考案されており、画像認識で大きな成功を収めた畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network:CNN)は医療における画像診断などに応用され、従来法を大きく上回る性能を発揮している例も少なくない。特に、経験的に設計された低次元の特徴量表現に変換することなく、直接、画像データを入力として必要な出力(例えば、ラベル)を得るためのニューラルネットワークを学習させるという方法論はend-to-endアプローチと呼ばれ、深層学習の基本的な考え方の一つになっている。このend-to-endアプローチは、特徴量に変換する際の情報の欠損を最小限にとどめることができ、システム全体の最適化も容易であることから、医療・創薬における多くのタスクにおいても、性能を出す上で重要な考え方となっている。しかし、医療・創薬では、医用画像のほかにも、臨床データが保存されている電子カルテなど、専門分野の知見やエビデンスを集約した種々のデータベース、さらには化合物やタンパク質の分子構造データに至るまでの多岐にわたるデータを扱う必要がある。しかし、これらのデータは、必ずしもCNNやそれ以前から使われていた多層パーセプトロン(multi-layer perceptron:MLP)などのニューラルネットに情報の欠損なく入力できるようなデータ構造を持っているわけではない。本稿では、これらの従来の深層学習では扱うことの難しい構造のデータに対する新たな技術として、グラフ構造を扱うニューラルネットワークであるグラフ畳み込みネットワーク(graph convolutional network:GCN)を紹介する。また、GCNを医療・創薬に応用していく上で、この技術がどのような位置づけにあり、そのほかの関連技術と合わせてどのように活用していくかについて述べる。本稿では、まず、創薬におけるグラフ構造を扱う問題を例として挙げつつ、GCNに関する技術的な紹介を行う、その後に、医学研究におけるわれわれの取り組みに関連したGCNの活用を紹介し、最後にまとめと今後の展望について述べる。(著者抄録)

ID情報
  • ISSN : 0913-8919
  • 医中誌Web ID : 2018286341

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