2018年4月 - 2022年3月
ビザンティン美術「聖母の眠り」図の辺境における展開と装飾プログラム論について
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究 若手研究
南部イタリアおよびトルコ・カッパドキアの聖堂装飾を調査した。イタリアではBari、Monte Sant’Angelo、Barletta、Melfi、Matera、Squinzano、Conversano、Lecce、Tursi、Padua、Capuaといった諸都市の聖堂、モニュメントが対象となった。カッパドキアではギョレメを拠点とし、Zelve、Zemi、Ayvali、Gomeda、Ibrahimpaca、Balkanderesi、Cavsin、Kuzilcukur、Gulldere、Narなどの各地区に遺る岩窟聖堂、加えてギョレメ野外博物館を調査した。イタリア調査では中期~後期ビザンティン期のイタリアとビザンティンの繋がりを考える重要性が見えた。特にSquinzianoのSanta Maria a Cerrate聖堂にはビザンティンの強い影響が見られる「聖母の眠り」図があり、これに描かれた「聖母被昇天」図と合わせて興味深い。本聖堂では配置を変えて「眠り」が描き直されており、現在関心を持っている「眠り」の配置の変遷の問題にとって重要なモニュメントと言え、先行研究の調査中である。カッパドキアでは、過去調査時に撮影許可が下りなかった一部の聖堂で許可が出たため、中期ビザンティン期聖堂の貴重な資料を得ることが出来た。1212年の年紀を持つKarsi Kiliseは「眠り」図が良好に残っており、これは前回フラッシュ撮影不可だったものが今回は許可されたことも幸運であった。カッパドキアにおいてはむしろ後期の作例が不足しており、Karsiの作例は重要である。バルカン半島などでは後期に見られなくなったモティーフ、構図が生きていることが確認できた。
- ID情報
-
- 課題番号 : 18K12245
- 体系的課題番号 : JP18K12245
この研究課題の成果一覧
絞り込み
論文
1-
早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌 = WASEDA RILAS JOURNAL (9) 109-122 2021年10月 査読有り