症例は72歳男性。保存的治療後に再燃した直腸S状部膀胱瘻の診断で紹介入院した。症状は糞便尿,気尿であった。初回入院時検査では憩室炎による腸管膀胱瘻と考え,患者の希望通りに保存的治療にて軽快退院した。再び発症したための第二回入院時のCT検査にて線状の高輝度の異物を腸管膀胱間に認め,魚骨による腸管膀胱瘻と診断した。CT画像および膀胱鏡検査より同部周囲の炎症が強いと判断し,リスク回避の観点から二期的手術の方針とした。初めに腹腔鏡補助下回腸人工肛門造設術を施行し,その三ヵ月後に腹腔鏡補助下直腸低位前方切除術・膀胱部分切除術を施行した。切除標本の検索では腸管膀胱間に長径34mmの魚骨を認めた。魚骨による腸管膀胱瘻は極めて稀であり,調べ得た範囲では自験例が本邦3例目であった。本症例では,正確な術前診断および腹腔鏡を用いた低侵襲手術がなしえたが,近年の診断や治療の進歩にMEの貢献は大きいと考えられた。(著者抄録)