MISC

2017年

祭式名を隠した祭式記述

印度學佛教學研究
  • 天野 恭子

65
3
開始ページ
1039
終了ページ
1046
記述言語
英語
掲載種別
出版者・発行元
日本印度学仏教学会

<p>最古層の祭式文献の一つであるMaitrāyaṇī Sam̐hitā(MS)のI 9章は,caturhotr̥祭文についての章と言われている.そこでは,caturhotr̥ 祭文が主要なśrauta祭式において用いられることが述べられているが,caturhotr̥ 祭文はI 9章以外の祭式記述においては全く言及されない.おそらく主要なśrauta祭式が記述された時点ではcaturhotr̥ 祭文の使用は受け入れられていなかったと推察される.また,I 9章には,何の祭式か同定されてこなかった,未解明の儀礼行為が記されている.</p><p>本稿では,I 9章に記される儀礼行為が,sattra,dvādaśāha,mahāvrataという一連の祭式に相当することを論じる.これらの祭式は,MSの主要部分が成立した段階では正統śrauta祭とは見なされていなかった,特殊な祭式である.MS I 9の記述と,主にKāṭhaka-Sam̐hitāのsattra章(KS 33–34)の記述を対照させて,対応関係を指摘する.</p><p>この考察により,MS I 9がsattra,dvādaśāha,mahāvrataの儀礼を記すことは明らかであるが,MS I 9はこれらの祭式の名前を明かさない.それは,これらの祭式が正統śrautaとは違う異文化的背景を持つことに,起因すると考えられる.すなわち,非正統祭式を正統śrauta祭式記述という枠組みに嵌め込んで記述しようとしたことが,I 9章の記述の特殊性を生んだと考えられる.</p>

リンク情報
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130006539150
ID情報
  • CiNii Articles ID : 130006539150
  • identifiers.cinii_nr_id : 9000386169288

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