2018年4月 - 2020年3月
高比重リポタンパクを利用した後眼部疾患に対する点眼治療の開発
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究 若手研究
我々は、VCP蛋白のATPase活性を調整する化合物であるKUS121(以下KUS剤)を生体ナノ材料である高比重リポタンパク(HDL)に内包した点眼剤(以下、HDL_KUS)を実験動物ラットに点眼し、網膜に到達したKUS濃度をHDLに内包していないKUS剤(以下、PBS_KUS)と比較したところ、HDL_KUS点眼群で網膜内KUS濃度が有意に高い結果となったが、再現性実験では同様の結果を得られなかった。この問題点を克服すべく、カチオン性脂質であるDOTAP(1,2-dioleoyl-3-trimethylammonium-propane)やDC-コレステロール(3beta-[N-(N',N'-dimethylaminoethane)-carbamoyl]cholesterol、以下DC-Chol)を含むHDLにKUSを作製した。DOTAPを使ったHDL_KUSでは粒子のゼータ電位は陰性であったがDC-CholをHDL内脂質の10%包含したHDL_KUS(以下、DC10)ではゼータ電位は陽性となり、粒子のカチオン化に成功した。このカチオン性のHDLを実験動物ラットに点眼し網膜内KUS濃度を測定したが、PBS_KUSに対する優位性を確認できなかった。本研究の進捗を妨げている原因の一つは網膜内KUS濃度測定の再現性の低さであり、標本の処理条件や測定条件の検討を行う予定である。また蛋白やKUS剤の構成や配分を変更して検討する余地がある。実験動物ラットに対する点眼試験でPBS_KUSに対して明らかに網膜到達性の高いHDL_KUSの組成が確定できれば、その組成のHDL_KUSの安全性や治療効果を培養細胞や疾患モデル動物を用いて確認する必要がある。
- ID情報
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- 課題番号 : 18K16924
- 体系的課題番号 : JP18K16924