論文

2021年3月

開口運動を用いた簡易な嚥下機能評価について

日本歯科医学会誌
  • 原 豪志
  • ,
  • 飯田 貴俊
  • ,
  • 戸原 雄
  • ,
  • 玉田 泰嗣
  • ,
  • 中根 綾子
  • ,
  • 水口 俊介
  • ,
  • 戸原 玄

40
開始ページ
55
終了ページ
60
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
日本歯科医学会

舌骨上筋の筋力低下は嚥下障害を引き起こす。開口筋は舌骨上筋を含むため、過去に開口する力を計測する開口力計を開発し、単施設の調査にて開口力が嚥下障害の指標となることを報告した。しかし、多様な状況を有する患者において、開口力を臨床適用するために多施設共同研究の実施が必要である。一方で舌骨上筋は速筋線維が優位であるため、疲労が生じやすく、繰り返す収縮により収縮速度が低下する。そのため、開口する速度を計測することで舌骨上筋の疲労を評価できる可能性がある。そこで本プロジェクト研究では、1)開口力の多施設共同研究と2)開口する速度を計測可能な開口速度計の開発を行った。開口力の多施設共同研究では131名の対象者として開口力、握力、舌圧を計測し、ADLの評価として、Barthel Indexを評価した。摂食嚥下機能は、Functional oral intake scale(FOIS)により評価した。開口力従属変数とした重回帰分析を行ったところ、開口力とFOISは独立して相関していた(β=0.408、p<0.001)。本結果より開口力が嚥下障害の指標として有用であることが明らかになった。開口速度計の開発について、まず頭部キャップ、チンキャップ、伸縮歪みセンサーを内蔵したゴムバンドにより構成される開口速度計を完成させた。開口速度は、開口の程度を伸縮歪みセンサーにて計測し、開口時間で徐して算出した。計測プロトコルとして、舌骨上筋の筋疲労を目的とした開口保持を行い、その前後で開口速度を計測した。さらに、開口保持後の開口速度を開口保持前の開口速度で徐して開口速度維持率を算出し、舌骨上筋の疲労の指標とした。しかし、開口保持が不十分な場合、開口速度維持率にばらつきが見られることが分かった。開口速度計は、舌骨上筋の疲労耐久性の指標になりうるが、計測プロトコル中の開口保持を確実に行う工夫が必要となる。(著者抄録)

ID情報
  • ISSN : 0286-164X
  • 医中誌Web ID : 2021234856

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