2019年4月 - 2023年3月
霊長類の味覚受容体と消化管共生細菌の共進化:多種共存機構再考の新しいアプローチ
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
本研究の目的は、ボルネオ島に同所的に生息する霊長類種の食物選択性を、①苦味知覚による植物毒回避と、②消化管内共生細菌による解毒という視点から解明することである。2020年度は、昼行性霊長類5種(オランウータン、カニクイザル、ブタオザル、テングザル、シルバーラングール、レッドラングール)の糞を重点的に収集することが目標であった。特に、研究計画の一つである、腸内細菌叢、味覚受容体などの種内変異について検討するため、河畔林、マングローブ林、フタバガキ低地林という異なる植生帯に生息している、上記霊長類種の糞試料の採取を計画していた。しかし、新型コロナウィルス感染症のため、海外における活動が実施できなかった。そのため、国内において、すでに収集済みの糞サンプルの分析を進め、また国内でも実施可能な霊長類の消化器官標本からの解剖学的知見の収集に専念した。国内で飼育されているデングザルの複胃内細菌叢の単離を進める過程で、新種の乳酸菌を発見した。この乳酸菌の性質を解析したところ、植物に含まれる複数の糖を分解する高い活性を示すことが明らかになった。また本乳酸菌は、胃内細菌の網羅解析によって野生個体にも存在していることが分かり、飼育か野生かを問わずテングザルの消化管に適応した乳酸菌であることを示すことに成功した。今回発見した新種の乳酸菌のもつ高い植物分解能は、食物の消化と吸収に大きく寄与し、テングザルの生存に欠かせない能力であると推測されるため、より詳細な解毒能力についての分析も進めている。この他にも、様々な霊長類種を対象として、胃や腸の計測を博物館で実施したり、昨年度に実施した海外調査地をもとに霊長類の生態データの分析などを行った。
- ID情報
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- 課題番号 : 19H03308
- 体系的課題番号 : JP19H03308
この研究課題の成果一覧
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論文
2-
Chemistry & Biodiversity 20 e202300131 2023年3月9日 査読有り招待有り責任著者
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Heterocycles 104(4) 797-803 2022年 査読有り責任著者
講演・口頭発表等
1-
第64回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会 2020年10月25日